不動産会社のホームページや、ポストに入っているチラシでマンション売却キャンペーンの文字を目にすることも多いはず。
「どうせならキャンペーン中の不動産会社でお得に売却したい!」
あなたも、そんな風に考えているかも知れません。
しかし、キャンペーン内容を細かく読んでみると、「期間限定」と書かれていたりします。
期間限定だと「すぐに不動産会社に来てもらおう!」と焦ってしまうかも知れませんが、、、それでは不動産会社の思うツボです!
結論から言うと、キャンペーンの有無で不動産業者を選んではいけません。
なぜなら、キャンペーンに釣られて業者を選んでしまえば、マンション売却はリスクの高いものになってしまうからです。
そこで今回は、マンション売却でよくあるキャンペーンを、リスク順に元営業マンの私が解説していきます。
キャンペーンをエサに不動産会社が裏で考えいることを学んでリスクを回避し、安全にマンションを売却してください。
1. よくあるキャンペーンの種類と危険度
各不動産会社が期間限定で実施しているマンション売却キャンペーン。
言うまでもありませんが、このキャンペーンをエサに売主を獲得するのが業者の狙いです。
上手い話には裏があるもの。
キャンペーンにはそれぞれリスクがあります。
キャンペーンを危険度順に一つ一つ確認していきましょう。
1-1. 商品券プレゼントキャンペーン
- 危険度 ★☆☆
- キャンペーン適用条件 訪問査定の完了
「訪問査定で商品券3000円分プレゼント」といったチラシがポストに入っているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか?
商品券は「クオカード」や「ギフトカード」だったりもします。
この商品券プレゼントキャンペーンの危険性は、不動産会社や営業マンのフィルタリングが十分にできないことにあります。
まず、マンション売却の過程を簡単に書くと「査定(1.机上査定→2.訪問査定)」「3.媒介契約」「4.売買契約」「5.決済・引き渡し」という順になります。
- 机上査定
ネットなどで売主が入力した物件情報(立地、広さ、築年数・・・etc)などから、だいたいの査定価格を算出する方法。
査定結果も「電話」「郵送」「メール」などで報告して貰えるの気が楽。(簡易査定とも呼ばれる) - 訪問査定
実際に不動産会社の営業マンが物件に訪問して、細かい部分も確認したうえで正確な査定価格を算出する方法。
30分~1時間程度は時間が取られるので少し面倒。
机上査定から始めるか、訪問査定から始めるかは売主の自由です。
しかし、できれば机上査定から始めた方が失敗がありません。
まず、売主は机上査定で「査定額やその根拠」「売却戦略」「メールや電話での対応」などを確認すれば、業者や担当者を、ある程度フィルタリングしたうえで、実際に訪問査定を依頼するかどうかを判断できるからです。
逆に、机上査定を飛ばして最初から訪問査定となれば、ほとんどコミュニケーションを取っていない営業マンが訪問して来ることになります。
それでは、どんな営業マンがやってくるか分りません。
誠実な営業マンなら良いですが、強引な営業マンなら最悪・・・。
海千山千の不動産営業マンです。
会ってみて苦手なタイプの営業マンだったとしても、強気に媒介契約を押し切られてしまう可能性は十分にあります。
机上査定である程度コミュニケーションを取っておくことで、少なくとも明らかにハズレな不動産会社や営業マンを排除できるのです。
そして、商品券キャンペーンの問題点は、適用条件を「訪問査定の完了」にしている不動産会社がほとんどだということです。
2017年10月に各社が実際に実施しているキャンペーン。
- A社(関東全域に支店のある中堅不動産会社)・・・訪問査定(クオカード3000円)→媒介契約(商品券10000円)→売買契約(商品券50000円)
- B社(鉄道系大手不動産会社)・・・訪問査定(クオカード3000円)→媒介契約(クオカード10000円)
- C社(銀行系超大手不動産会社)・・・媒介契約で20000円
大手から中堅どころまで、パっと思いつく不動産会社を20社くらい調べましたが、商品券プレゼントキャンペーン内容はどこもこんな感じです。
このように、「商品券」は訪問査定が完了しなければ受け取ることができないのです。
もし、売主がキャンペーンに釣られて、机上査定で営業マンとコミュニケーションを取らず、焦って訪問査定をすぐに依頼してしまえば不動産会社の狙い通り。
強引だけが取り柄の営業マンが来て、断り切れずに媒介契約を結ばされてしまうことだってあります。
「机上査定が大事なのも分かるけど、商品券は欲しいし、、、
とりあえず来てもらってダメ業者ならハッキリ断ろう!
私は押しもに強いし、問題ない!」
このように、自分は大丈夫と思っている人ほど騙されやすいのです。
心理用語で脆弱性の無知と言いますが、その典型と言えます。
これからマンションが売れるまで付き合っていく担当営業マンです。
なるべく誠実で信用できる人を選びたいですよね?
そのためにも、まずは机上査定でコミュニケーションを取りながら「査定額やその根拠」「売却戦略」「メールや電話での営業マンの対応」を確認し、信用できそうだと感じたら訪問査定に来てもらいましょう。
その結果、選んだ不動産会社が「キャンペーン」を実施していたらラッキーくらいの感覚でいてください。
1-2. ハウスクリーニングキャンペーン
- 危険度 ★★☆
- キャンペーン適用条件 媒介契約締結(専任or専属専任)
多くはありませんが不動産会社のHPを見ると、弊社で媒介契約(専属専任媒介契約・専任媒介契約)を結ぶと無料でハウスクリーニング!といったキャンペーンもあります。
マンション丸々1室をハウスクリーニングすれば10万円前後。
キャンペーン適用条件が“専任の媒介契約の締結”と厳しく設定されているのも不動産会社からすれば当然でしょう。
しかし、専任媒介契約を締結してしまえば基本的に契約期間の3か月は解約できません。
ハウスクリーニングのキャンペーンに釣られて、安易に不動産会社を選んでも簡単には後戻りはてきないのです。
そもそもハウスクリーニングが必要ないマンションもあるでしょうし、普通に使っていれば水周りのクリーニングだけで十分です。
水周りを丸ごと掃除して貰うプランだと3万円程度からあります。
高そうなイメージのあるハウスクリーニングも、少し探せばこの位の金額でやってくれるクリーニング業者はいくらでもあるのです。
そんなハウスクリーニングのキャンペーンに釣られて、大事な不動産会社を選んでしまうなど言語道断!
最悪断ることができる訪問査定系キャンペーンとは危険度が違います。
一度、専任媒介契約を締結すれば簡単には解約できないことを肝に銘じ、業者選びは業者や営業マンとしっかりコミュニケーションを取った上で慎重に行いましょう。
1-3. お客さま紹介キャンペーン
- 危険度 ★★☆
- キャンペーン適用条件 売買契約の締結
こちらも多くは見かけませんが、ご紹介して頂いたお客様のご成約で『5万円分』の商品券プレゼント!といったキャンペーンを実施している不動産会社もあります。
このキャンペーンの問題点は、紹介した知人との人間関係にヒビが入ってしまうかも知れないことでしょう。
あなたは実際に利用して満足した不動産会社に、良かれと思って知人を紹介しているかも知れません。
しかし、紹介した知人が必ずしも満足するとは限りません。
業者や営業マンとの相性もあるからです。
仮にマンションの売却が長引いたり、希望金額で売れなければ、
「とんでもない業者を紹介された」
と、恨みすら買ってしまうかも知れません。
挙句、紹介料を貰っていることが知人の耳に入ってしまえば関係の修復は難しくなるでしょう・・・。
5万円も大きい金額ですが、人間関係を壊してまで手にしたい金額ではないはず。
あなたの満足感が高かった不動産会社であってもキャンペーンを利用して紹介するのはオススメしません。
1-4. 仲介手数料無料キャンペーン
- 危険度 ★★★
- キャンペーン適用条件 売買契約の締結
新興のベンチャー系不動産会社が、売主様は仲介手数料が無料です!といったキャンペーンを実施しています。
このキャンペーンが最も危険です。
そもそも不動産会社のメイン収入は仲介手数料です。
大事な収入源を無料にするわけですから、当然カラクリがあります。
売主の仲介手数料を無料にするカラクリは「①レインズ」「②両手仲介」「③片手仲介」を理解すれば簡単です。
1-4-1. レインズとは
レインズとは、国土交通大臣指定の公益法人「不動産流通機構」が運営する、全国の不動産会社が物件情報を共有するデータベースです。
実際にレインズどのように活用されているか例を見てみましょう。
- 「売主A」から「abcマンション」の売却依頼を受けた「X社」は速やかに物件情報をレインズに登録します。(登録は不動産会社の義務と宅建業法で規定されいます。)
- 「Y社」「Z社」など、「売主A」から売却依頼を直接受けていない全国の他の不動産業者も、レインズにアクセスすれば「abcマンション」の情報が共有できる。
- 「Y社」「Z社」は自社の購入検討者に「abcマンション」を紹介できる。
このようにレインズで物件を共有することで、売却依頼されたA社のみで買い手を探すのではなく、Y社やZ社も買い手を探せるようになっているのです。
極論すれば、あなたのマンションが、レインズに登録されることで、全国の不動産会社に売って貰えるというになります。
現在の不動産売買におてい、集客力を高めるためには、レインズへの登録は必須です。
1-4-2. 両手仲介とは
両手仲介とは、売主から売却依頼を受けた不動産会社が買主も見つけて成約することです。
売主と買主の間に不動産会社は1社しか介在していないので、不動産会社は売主・買主の両方に仲介手数料(売買価格の3%+6万円)を請求できます。
不動産会社は、売主・買主の両方から仲介手数料を貰えるので「両手仲介」と呼びます。
「売主A」から「abcマンション」の売却依頼を受けた『X社』が「買主B」も見つけて来て成約した、ということです。
仮に物件価格が5000万円なら、『X社』は168万4800円を「売主」と「買主」の両方に請求できます。
『X社』の売り上げは1回の取引で合計336万9600円にもなります。
1-4-3. 片手仲介とは
片手仲介とは、売主から売却依頼を受けた不動産会社と、買主を見つけて来た別の不動産会社が協力して成約することです。
売主と買主の間に不動産会社は2社介在しているので、売主側の不動産会社は売主へ、買主側の不動産会社は買主へ、それぞれ仲介手数料(売買価格の3%+6万円)を請求できます。
不動産会社は自社が担当した片方からしか仲介手数料を貰えないの「片手仲介」と呼びます。
「売主A」から「abcマンション」の売却依頼を受けた『X社』と、「買主B」を見つけて来た『Y社』が協力して成約した、ということです。
仮に物件価格が5000万円なら、「X社」は168万4800円を「売主A」に、「Y社」は168万4800円を「買主B」にそれぞれ請求できます。
この3つを踏まえたうえで、売主の仲介手数料無料キャンペーンに話を戻します。
まず、売主から売却依頼を受けた不動産会社が、売主の仲介手数料を無料にできるのは両手仲介の場合だけです。
両手仲介であれば、売主からの仲介手数料を無料にしても、買主に仲介手数料を請求できるからです。
一方、片手仲介で、売主側の不動産会社が仲介手数料を無料にすれば、利益は0になってしまいます。
不動産仲介業者の利益は基本的に仲介手数料しかありませんから、片手仲介で仲介手数料を無料にすると商売として成り立たないのです。
そのため、売主の仲介手数料無料を謳っている不動産会社は意地でも「両手仲介」を狙うしかありません。
絶対に両手仲介にするにはどうしたらいいでしょうか?
それはレインズに登録せずに、マンション売り出し情報を自社だけで囲い込むことです。
(業界用語で「囲い込み」と呼ばれている)
レインズに登録しなければ、他社には物件情報は共有されないので、他社が買い手を見つけて来ることはありません。
必ず買い手は自社で見つけることができるのです。
ただし、すでに説明した通り、レインズに登録されなければ集客力は圧倒的に低下するので、売却期間が無駄に長期化します。
長期化していようが、業者は両手仲介をするしかないので、囲い込みを止めることはありません。
さらに、売主が焦ってきた頃を見計らって、業者は売主に「このままでは売れないから値下げしましょう」と催促します。
少ない集客力でも、相場以下まで値下げすれば絶対に売れるからです。
このように仲介手数料無料キャンペーンは、「両手仲介」のために「囲い込み」をすることが前提となっているのです。
物件価格が5000万円なら仲介手数料は168万4800円です。
この金額が無料になるのは一見すると魅力的かもしれません。
しかし、囲い込みをされて「売却期間の長期化」「大幅な値下げ」となればその金額以上の不利益を被ることになります。
例えば、株式会社東京カンテイという不動産鑑定評価を専門にしている会社のデータでは、売却開始からが3ヶ月目で価格の値下げ率が-7%となっています。
(参考:https://www.kantei.ne.jp/report/kantei_eye/305)
この数字は、適正に売却されている多くの物件を含んでいるので、囲い込みをされた物件はそれ以上に悪い数字になります。
楽観的な数字として10%の値下げで済んだとしても、物件価格5000万円なら-500万円です。
最終的にどちらが損をするかは明らかですよね。
安易に仲介手数料無料キャンペーンに釣られて不動産会社を選ぶようなことは絶対にしないでください。
「レインズ」や「両手片手仲介」「囲い込み」についてはコチラでさらに詳しく書いています。
詳しくは「https://fudousancollege.com/reins」をご確認ください。)
ちなみに「キャッシュバックキャンペーン」と銘打っている業者もありますが、内容は全く同じです。
仲介手数料無料は100%キャッシュバック、仲介手数料半額なら50%キャッシュバックとなります。
2. キャンペーンより業者と担当者選び大事
ここまで読んで頂いてお気付きだとは思いますが、キャンペーンに釣られて不動産会社を選んではいけません。
必ず、不動産会社と担当営業マンの本質で選んでください。
一見すると、キャンペーンは得をするように思えますが、必ず「ウラ」や「カラクリ」があるからです。
得をしたくてキャンペーンを選んだのに、結果的に損をしたのでは悔やんでも悔やみきれませんよね。
もちろん、キャンペーンが何もかも悪いというわけではありません。
キャンペーンに釣られて不動産会社を選ぶことが悪いのです。
なので、業者を選ぶときは、必ず不動産一括査定サイト(マンションナビなど)を利用して複数の業者に査定依頼をしましょう。
そのうえで、各社の
- 査定金額とその根拠
- 売却戦略
- 担当者の知識やスキル、人間性
をしっかりと比較・検討し、売却を任せる不動産会社を選んでください。
誠実で仕事のできる不動産会社や担当営業マンを見つけることができれば、相場以上の金額で売ることも不可能ではありません。
キャンペーンとは比較にならないほどのメリットがあるのです。
表面的なキャンペーンに惑わされず、複数の不動産会社や営業マンをしっかりと比較・検討したうえで最終的な業者を選んでください。