不動産税理士執筆!マンション売却時の取得費と減価償却費の計算方法

マンション売却時の「取得費」や「減価償却費」の計算はめちゃくちゃ複雑ですよね。
実際、現役の不動産屋でマンション売却時の税金を正確に分っている営業マンは1割もいないでしょう。

そこで、今回は自宅マンション売却時の減価償却費の計算を圧倒的に分りやすく解説します。

ネット上には不動産売却時の税金に関する知識が溢れていますが、正しい情報を発信している記事はほとんどありません。

「他のウェブサイトを読んでも良く分らなかった・・・。」
「本を読んでも分らなかった・・・。」
そんな方でも100%理解できるような記事にしてみました。

今回は不動産の税金に関するプロ集団「代官山税理士法人」の南吉彦代表税理士様に編集の全面バックアップを頂きました。

代官山税理士法人 公式HP
http://blp-tax.com/

あなたがネット上で税金を検索する最後のページにしてみせます。

1. マンション売却の減価償却

マンション売却時の減価償却は一般の納税者にとってはかなり難解なため、基本的な考え方から解説します。
「とりあえず計算方法だけ教えて欲しい!」という方はこの章を飛ばしてください。

1-1. 減価償却の考え方

事業のために購入した、建物・機械・車といった資産の取得価額(購入価格+取得に掛かる費用)を、使用可能な年数に分割し、毎年経費として計上していく会計上の手続きを「減価償却」と呼びます。

このような資産(減価償却資産)は使用していくにつれて古くなるので少しずつ価値は減少し、いつかは使用できなくなります。

使用できなくなるまでは、少しずつ価値が減少するのですから、資産の取得価額を購入時に一括して経費にするのではなく、
毎年、価値の減少した部分が、事業のために使った費用として、経費に計上されるべきだと考えられているのです。

実際、減価償却資産は使用できなくなるまで、事業に貢献しているのですから、
使用可能な年数にわたって取得価額を少しずつ分割して経費として計上する方が現実に見合っています。

また、使ってなくなった価値の減少部分を「減価償却費」と呼びます。

1-2. 不動産のうち減価償却の対象は建物だけ

減価償却を行う対象は時が経つにつれて価値が減っていく資産です。
例えば、不動産の中でも建物部分は使用とともに古くなり価値が減少するので減価償却の対象です。

一方で、同じ不動産でも土地部分は使っても古くなることがないので減価償却を行うことはありません。

1-3. 使用可能な年数は減価償却資産ごとに一律に定められている

減価償却資産の使用可能な年数(耐用年数)は実際の使用状況にもよるため、本来であれば事業者が適正に算出するのが本来あるべき形でしょう。

しかし、税法では、減価償却資産の種類ごと、かつ、その構造や用途ごとに使用可能な年数を「法定耐用年数」として、一律に定めています。
というのも、事業者に耐用年数を算出させると、公平な課税ではなくなるからです。

例えば、ある事業者が10年使える1000万円の機械を購入したとします。
10年にわたって毎年100万円ずつ経費として計上すれば適切ですよね。

しかし、その事業者が今年と来年に大きな利益を見込んでいる場合、
耐用年数を2年と短く算出し、今年と来年に500万円ずつ経費として計上する、といった不正操作も可能になってしまいます。

このようなことから、税法では公正な課税のため、法定耐用年数は減価償却資産の種類ごと、かつ、その構造や用途ごとに一律に定めているのです。

ちなみに法定耐用年数は、実際の物理的な寿命と大きく乖離しないように設定されてはいますが、あくまで税金計算のために便宜上に定められた概念です。
現実の使用状況とギャップがあることも少なくありません。

1-4. 自宅用のマンションは減価償却の対象

経費といったワードから察している方もいらっしゃるかも知れませんが、減価償却は事業や業務などで使われる減価償却資産が対象です。

しかし、個人の自宅用マンションの建物部分も減価償却の対象となります。

「事業のためじゃなくて、自分が住むために買ったマンションなのに?」と思われますよね?

事業の場合、価値の減少分は事業に使ったとして経費に計上しますが、
個人の場合、価値の減少分は自分で使った(家事消費)と税法上は解釈されるからです。

2. 減価償却費を計算するうえでの前提

「自宅用のマンションも減価償却の対象なのは分った。でも、経費に計上するあてもないし、何の意味があるの?」
このような疑問を持たれる方もいらっしゃるかも知れません。

この疑問を解決するためには、「確定申告」と「取得費」を説明する必要があります。

2-1. 前提①マンションを売却したら確定申告が必要なため

マンションを売却して利益が発生すれば税金(所得税・住民税・復興特別税)を支払う必要があります。
逆に、損失が発生すれば税金の支払いは不要ですし、一定の条件を満たすことで税金の還付(払い戻し)を受けることもできます。

マンションを売却して発生する所得を譲渡所得と呼び、以下の計算式で求めることができます。

また、求められた答えがプラスであれば利益(譲渡益)が発生、マイナスであれば損失(譲渡損)が発生するということです。

・譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

収入金額=マンション売却代金
取得費=マンション購入代金と、購入に掛かった経費の合計から減価償却費を差し引いた金額
譲渡費用=マンション売却に掛かった経費

上記計算で、求められた数字を確定申告することで税金が確定します。

今回は、あくまで「取得費」「減価償却費」の計算方法に特化した記事です。
実際の税額は譲渡所得に税率を掛けて求めますが詳しくはコチラでご確認ください。

所得税・住民税・復興特別税が課税されるのは譲渡益が発生した場合のみですが、譲渡損が出た場合も一定の条件を満たせば還付を受けられる可能性もあります。

どちらにせよ、マンションを売却したら確定申告が必要ということです。

2-2. 前提②取得費を計算するには減価償却費の計算が必要なため

上記した通り、取得費のマンション購入金額は、単純な購入時点の金額ではありません。

取得費は以下のような計算式で表すことができます。

・取得費=①建物購入代金+②土地購入代金+③購入時諸経費-④減価償却費

①建物購入代金・・・マンション購入金額のうち建物部分の購入金額です。
②土地購入代金・・・マンション購入金額のうち土地部分の購入金額です。
③購入時諸経費 ・・・購入時に支払った「仲介手数料」や「登記費用」などです。

問題は④の減価償却費です。

すでに先にお伝えした通り、個人の自宅用マンションの建物部分は減価償却の対象です。
よって、取得費を求めるためには建物部分の減価償却費を差し引く必要があります。

自分で使った建物部分の価値減少分を差し引かなければ、売却時点での正確な価値とはいえないということです。

国税庁や税務署の言いたいことを要約すれば、
「建物の価値は年々減少しますよね?土地部分2000万円、建物部分3150万円の計5150万円で購入したマンションの建物部分3150万円に関しては価値の減少分を差し引いて現在の価値で計算してください!」
といった感じになります。

マンションを売却すれば確定申告が必要。
確定申告をするためには取得費の計算が必要。
取得費の計算するためには、減価償却費の計算が必要、ということです。

3. 減価償却費の計算方法

前置きが長くなってしまいましたが、本題の減価償却費の計算方法を解説していきます。

3-1. マンションの減価償却費は定額法で計算

減価償却費の計算方法は2種類ありますが、自宅マンションの減価償却費は定額法(旧定額法)で求めます。

  • 定額法・・・建物部分から毎年同じ減価償却費を差し引いていく
  • 定率法・・・購入直後の減価償却費が大きく築年数が経過するごとに減価償却費は少なくなる

3-2. 減価償却費の計算式

マンションの建物購入代金から差し引く減価償却費は以下のように求めます。

・減価償却費=建物購入代金×0.9 ×償却率×経過年数

減価償却するのは建物購入代金のみ、という点に注意してください。

また経過年数は、端数が6カ月以上の場合は1年とカウントし、6カ月未満は切り捨てます。
例えば、所有期間が19年7カ月とします。端数が6カ月以上のため、経過年数を20年と計算します。

3-3. 償却率

償却率は、用途と構造によって決まります。
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の居住用住宅、事業用住宅の耐用年数と償却率は以下のようになります。

構造 居住用住宅
法定耐用年数 償却率
木造・合成樹脂造のもの 33年 0.033
木骨モルタル造のもの 30年 0.034
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造のもの
70年 0.015

自宅用のマンションであれば、基本的に法定耐用年数70年で償却率は0.015になるはずです。

参考:総務省行政管理局運営法令データベースより「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340M50000040015&openerCode=1

3-4. 減価償却費の計算例

それでは実際に減価償却費の計算を具体例(※A)を使って求めてみましょう。

(例)
マンション購入金額5000万円(土地2000万円:建物3000万円)
経過年数20年

減価償却費
=建物購入代金×0.9 ×償却率×経過年数
=3000万円×0.9×0.015×20年=810 万円

4. 減価償却費を元に取得費を計算する

減価償却費を求めたら、次に取得費を計算します。

すでに述べたとおり、取得費は以下の算式で求めます。

・取得費=①建物購入代金+②土地購入代金+③購入時諸経費-④減価償却費

計算例(A)をそのまま当てはめると下記のようになります。

  1. ①建物購入代金 3000万円
  2. ②土地購入代金 2000万円
  3. ③購入時諸経費 150万円
  4. 取得費には、以下の購入時の諸経費を含めることができます。

    1.マンション購入時に不動産会社に支払った仲介手数料
    2.マンション売買契約書に貼る印紙代
    3.登記費用(登録免許税、司法書士への報酬)
    4.不動産取得税
    5.固定資産税の精算金

    ここでは、取得費に含めることができるマンションの購入時諸経費をおおまかに150万円とします。
    (※購入したのが新築マンションであれば仲介手数料は掛かっていないはずです。)

  5. ④減価償却費 810万円

よって以下のようになります。

取得費
=①建物購入代金+②土地購入代金+③購入時諸経費-④減価償却費
=3000万円+2000万円+150万円-810万円
=4340万円

5. 取得費を元に譲渡所得を計算する

譲渡所得と、そこに対する住民税・所得税・復興特別税に関しては、別ページで詳しく解説していますが、
せっかく取得費を求めたので、譲渡所得も計算してみましょう。

・譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

計算例(A)のマンションが4000万円で売却できた場合、譲渡価格はそのまま4000万円となります。

5-1. ①収入金額と譲渡費用を確認する

譲渡費用は、マンション売却に掛かった経費とお伝えしました。
譲渡費用に含めることができるのは以下のものになります。

  • マンション売却時に不動産会社に支払った仲介手数料
  • マンション売買契約書に貼る印紙代
  • 登記費用(登録免許税、司法書士への報酬)

2.3.に関しては、1~2万円程度なので、ここでは仲介手数料が130万円掛かったとして計算します。

5-2. 譲渡所得を求める

・譲渡所得
=収入金額-(取得費+譲渡費用)
=4000万円-(4340万円+130万円)
=-470万円

譲渡所得がマイナス(譲渡損が発生)なので住民税・所得税・復興特別税は課税されません。

6. 建物購入代金の調べ方

建物取得費の計算で、建物購入代金から減価償却費を差し引く以上、マンション購入代金のうち建物購入代金がいくらかの把握が必要です。
ここでは、建物購入代金の調べ方について解説します。

6-1. ①売買契約書に「土地価格」と「建物価格」の記載が別々にある

まずは、マンション購入時の不動産売買契約書を確認してみましょう。
取得費の証明は売買契約書の金額が原則になっているからです。

はじめから土地価格と建物価格が別々に記載されていれば、何も迷うことなく建物価格から減価償却費を差し引いて取得費を計算してください。

6-2. ②売買契約書に消費税の記載がある

売買契約書に土地価格と建物価格の内訳が書かれていない場合、消費税の記載がないかチェックしましょう。
消費税が課税されるのは建物だけであり、土地は非課税だからです。

建物価格は消費税から税率で割り戻して逆算することができます。

例)
マンション購入代金5000万円、消費税150万円とば売買契約書に記載。
消費税率が5%のときに購入したマンションなら、建物価格は次の算式で計算可能です。

※消費税は平成元年(1989年)から3%でスタート、平成9年(1997年)から5%、平成26年(2014年)から8%となっているので、購入当時の契約書を確認しましょう。

建物価格×0.05=150万円
150万円÷0.05=建物価格
150万円÷0.05=3000万円

3000万円+150万円=3150万円がマンション購入代金のうちの建物価格ということになります。
(※自宅の場合、消費税も取得価額に含まれるため。)

6-3. ③上記両方の記載がない場合

法律で決まっているわけではありませんが、売買契約書に建物価格や消費税の記載がなくても、推測する方法があります。

それぞれの方法を見ていきましょう。

6-3-1. ①標準建築単価から建物価格を調べる

標準建築単価は国土交通省が毎年1㎡当たりの工事費の平均を算出したもの。
マンションの構造・建築年に該当する単価を調べ、マンションの専有面積(床面積)に乗じることで建物価格を算出できます。

算式は次の通りです。

・建物価格=標準建築単価×床面積

例えば、平成4年に専有面積80㎡の鉄骨鉄筋コンクリート造りのマンションを建築した場合、1㎡あたり33万3700円です。
建物価格は以下のようになります。

建物価格2669.6 万円=標準建築単価33万3700円×80㎡

参照:国税庁-建物の標準的な建築価額表
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/kisairei/joto/pdf/013.pdf

6-3-2. ②固定資産税評価額から建物価格を調べる

固定資産税は土地と建物に対して別々に課税されます。
そのため、マンション購入時の固定資産税評価額の土地評価額と建物評価額の比率を計算し、
マンション購入金額を同じ比率で按分すれば建物価格を求めることができます。

課税標準ではなく評価額を見ることに注意してください。

6-3-3. ③土地の時価から建物価格を調べる

マンションの購入代金から土地の時価を差し引くことで、間接的に建物価格を計算することができます。
土地の時価の計算は不動産鑑定士に依頼しなければならず、コスト面(数十万円)からいって現実的ではありません。

7. マンション購入代金自体が分らない場合は概算取得費

取得費の証明は売買契約書が原則になっていますが、紛失してしまい、マンションの購入金額自体が分らない場合もあります。
このような場合、売却代金の5%を概算取得費として、取得費にすることが認められています。

例えば、売却代金が4000万円の場合、概算取得費は「4000万円×5%=200万円」となります。

「5-2. 譲渡所得を求める」で具体例に上げたマンションだと譲渡所得はマイナスになりました。
譲渡所得=4000万円-130万円-4340万円=-470万円

しかし、概算取得費で譲渡所得を求めると、以下のように譲渡所得が大きくプラスになってしまいます・・・。
譲渡所得=4000万円-130万円-200万円=3670万円

概算取得費を使う場合、減価償却は行いませんが、
これでは、譲渡所得に対して、住民税・所得税・復興特別税が大きく課税されてしまいます。

ただし、売買契約書以外のものでも「マンション購入金額として信憑性がある」と税務署が認めれば、通常の取得費計算が可能です。

例)通帳の出勤履歴や、新築時のパンフレット等

売買契約書を紛失しても、すぐに諦めず証明できるものはないか徹底的に探し、税理士や税務署に確認してみましょう。

8. まとめ

取得費を計算するために必要な減価償却の計算方法を解説しましたが、かなり難しく感じたのではないでしょうか?

実際、マンション売却時の税金はカナリ難しいため、多くの不動産営業マンは詳しく把握していません。

もし、あなたがマンションの売却を任せる不動産会社をまだ決めていないのであれば、査定に来た営業マンにこのように質問してください。
「税金はどの程度になりますか?」
この質問に丁寧に答えられるだけで、営業マンのなかでも平均以上の知識を持っていると言えるでしょう。

このように複雑な税金の計算を逆手に取り、知識の豊富な営業マンを見つけ、有利にマンション売却を進めてください。