離婚時のマンション売却方法と手順マニュアル!将来のリスクを回避するために

3組に1組が離婚する時代。
現代において離婚は珍しいことではなくなりました。

日本の離婚は9割が協議離婚、つまり裁判所を通さず夫婦間での話し合いで済ませます。

しかし、話し合いをなるべく早く済ませたいと考える夫婦が多く、離婚後の「住宅ローン」や「自宅マンションの所有者名義」について、細かく協議していないことも少なくありません。
「とりあえず、夫が住宅ローンを払い続け、妻子は自宅マンションに住み続ける」とザックリした内容だけ決めて離婚してしまう夫婦がたくさんいます。

しかし、離婚するなら自宅マンションは売却するべきです。
どちらかが住み続けるという選択は、リスクやトラブルの先送りにしかならないからです。

この記事では「住宅ローンの組み方」ごとに、離婚後も「夫が住み続けた場合」「妻子が住み続けた場合」それぞれのリスクを解説します。

(※便宜上、妻(妻子)のリスクをメインで解説します。立場が逆であれば夫と妻を入れ替えてご理解ください。)

私が現場の営業マンだったときも、離婚してから数年後にトラブルに陥り相談に来られるお客様はたくさんいました。
この記事を読んで、離婚後の新生活をすっきりとした気持ちでスタートさせてください。

1. 財産分与の基本

離婚時のマンション売却を解説するうえで3つの基本を押さえる必要があります。

まずは、財産分与の基本的なルールを確認しましょう。

財産分与とは?
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産について、離婚をきっかけに分け合うことです。

1-1. 財産分与の割合

「専業主婦はお金を稼いでいない、だから財産を築いたのは夫。」
このような古い考えがまかり通っている時代もありました。
そのため、かつては離婚しても妻への財産分与は2~3割とされていたようです。

しかし、現在は「夫婦の財産は均等に分ける」というのが財産分与の基本的な考え方になりました。

例えば、結婚後に購入したマンションの住宅ローンを夫が支払っていようが、財産分与は均等(2分の1ずつ)です。
婚姻期間中に築いた財産ですから、マンション価値の50%を貰い受ける権利があります。

夫の方が高年収であろうが、妻が専業主婦であろうが、この財産分与の基本原則は変わりません。

参考
・平成19年4月17日広島高裁判決、昭和55年7月7日
https://ameblo.jp/mc-pr0/entry-11108141031.html(弁護士:三平聡史さん)
・広島高裁決定、平成9年1月22日横浜地裁判決など
http://www.rikon-soudan.bz/hanrei/h-bunyo.html(行政書士:小竹広光さん)

1-2. 債務も財産分与の対象

債務とは、簡単にいえば借金を返す義務です。
(ちなみに、お金を借りている人を「債務者」、お金を貸している金融機関のことを「債権者」と呼びます。)

そして、債務も財産分与の対象となるケースがあります。

もちろん、夫婦の一方がギャンブルなどで負った個人的な債務は財産分与の対象ではありません。
あくまで、夫婦の生活を支えるために負った債務が財産分与の対象です。

ただ、少し内容が複雑なので具体例で解説します。

負債より財産の方が多い場合(財産>債務)

  • 貯金 1,000万円
    借金 400万円

  • 貯金 0円
    借金 0円

  • 財産分与
  • 夫 300万円(1000万円-400万円)×1/2
    妻 300万円(1000万円-400万円)×2分の1=300万円

借金400万円が夫婦生活のための債務であれば、財産分与の対象です。
そのため1,000万円の財産から400万円の債務を引いた600万円が財産分与の対象金額となります。

実務上は、夫が妻にその半額である300万円を支払うことになります。
すると夫は貯金残高700万円と借金400万円となり、妻に渡したのと同額の300万円が手元に残るので財産は均等に分けられたことになります。

これが財産分与の基本的な清算方法です。

このように資産が現金であれば、キッチリ半分に分けることができますが、マンションなどの不動産は物理的に分けられません。
そこで、一般的には、マンションを売った売却代金で住宅ローンを完済し、残ったお金を分けることになります。

例えば、住宅ローン残債3,000万円のマンションが5,000万円で売却できれば、残りの2,000万円を「夫1,000万円」「妻1,000万円」といったように分けます。

財産より債務の方が多い場合(財産<債務)

  • 貯金 400万円
    借金 1,000万円

  • 貯金 0円
    借金 0円

  • 財産分与
  • 夫 -600万円
    妻 0円円

1,000万円が夫婦生活のための債務であれば、財産分与の対象です。

財産分与の基本からから考えると、「貯金400万円-借金1,000万円=-600万円」となり、妻も借金300万円を負う必要ありそうですよね。

しかし、妻は借金まで引き継ぐ必要はありません。
マイナスの財産分与はしないからです。
妻は財産分与を受け取れないかわりに、借金も負う必要がないのです。

こちらもマンションに例えて解説してみます。
住宅ローン残債4000万円のマンションが3000万円でしか売却できなくても、残りのローン1000万円の半分である500万円を妻が負う必要はないということです。

1-3. 財産分与の時効

財産分与は、市区町村に離婚届を受理されてから2年以内に行う必要があります。
別居を何年していようが関係なく、あくまで離婚成立時から2年です。

2. 「住宅ローン名義」と「所有者名義」の基本

離婚時のマンション売却を解説するうえで、「住宅ローン名義」と「所有者名義」は明確に区別する必要があります。

住宅ローン名義は、住宅ローン契約者本人(ローン申込人)で、住宅ローンを支払っている人です。

次に、所有者名義について。
マンションを購入した時に、法務局の登記簿に「誰が所有者なのか?」を登記したと思います。
所有者名義とは、この登記簿の「権利部(甲区)所有権に関する事項」という箇所に記載されている人です。

住宅ローンを設定している場合には、所有名義人と住宅ローン名義人は一致するケースが多いです。
例えば、夫一人で住宅ローンを組んでマンションを購入していれば、夫の単独名義になります。
一方、1つのマンション購入のために、夫婦で2本の住宅ローン組んでいれば、夫婦の共有名義になります。

共有名義の場合、持分(所有権の割合)は購入資金の負担割合で決められるのが一般的です。
例えば、5,000万円のマンションを、夫が3,500万円のローン、妻が1,500万円のローンを組んで購入していれば、持分は7:3となります。

※一般的としたのは「不動産購入資金の負担割合と、持ち分割合を必ず同じにしなければいけない」といった決まりがあるわけではないから。
夫がマンション購入資金を全額負担し、妻の単独名義とすることも可能なのです。(しかし、この場合は妻に贈与税が発生しますが・・・。)

3. 住宅ローンの基本

最後は、住宅ローンの基本的な考え方です。

3-1. 住宅ローン返済中に所有者名義の変更は難しい

ローン返済中に所有者名義の変更を行うことは簡単ではありません。
住宅ローンを借りた銀行などと結んだ金銭消費貸借契約書に「ローン返済中の所有者名義変更には、事前に金融機関の承諾が必要」との記載が必ずあるはずだからです。

そして、金融機関はローン返済中の離婚による所有者名義の変更をまず認めません。
所有者名義だけ変更すると、住宅ローン支払名義となっている人は「自分の家でもないのに何で毎月ローンを返済しなきゃいけないんだ?」という考えに陥りやすく、遅延や滞納のリスクが高くなるからです。

所有者名義だけ変更した場合の具体例
住宅ローン名義も所有者名義も夫のマンションがあったとします。
離婚により所有者名義を妻に変え、住宅ローン名義は元夫のままで、返済も元夫が続けることに。
最初は元夫も約束通り返済をしてくれていましたが、元夫に新しい家庭が出来ると返済が遅れ気味に、最終的には支払いが止まる。

このようなリスクを避けるため、金融機関は簡単に所有者名義の変更を認めません。

もちろん、妻にも夫並みの安定収入や職歴があると金融機関から認められ、住宅ローン自体を妻に名義変更したり、妻名義で別のローンに借り換え出来たりするなら、ローン設定と同時に所有権移転登記を行い、所有者名義の問題は解決できます。
しかし、妻が専業主婦やパート、正社員でも収入が低い場合は、妻への住宅ローン名義の変更は難しいでしょう。

3-2. 債務者が居住していることが住宅ローンの契約条件

通常、債務者(住宅ローン支払名義人)が、その自宅に住んでいることが住宅ローンの契約条件になります。

例えば、離婚を機に、債務者である夫が自宅から出て行き、妻子が住み続けるという状態は形式的には契約違反です。

ただし、実際には夫が住宅ローンを支払い続けている状態であれば銀行も問題にしないでしょう。
しかし、返済が滞りはじめれば契約違反として住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。

4. 離婚後もどちらかがマンションに住み続けた場合のリスク

前置きが長くなってしまいましたが、、、
冒頭で話した通り、離婚をするならマンションは売却するべきです。

どちらかがマンションに住み続ける選択はリスクが多く、後でトラブルに発展する可能性が高いためです。

住宅ローンの組み方ごとに、住み続けるリスクを解説してきます。

4-1. 住宅ローン名義が夫で、妻は連帯保証人

夫が一人で住宅ローンを支払っており、マンションの所有者も夫の単独。
ただし、妻が連帯保証人となっているケースです。

連帯保証人とは?
連帯保証とは、主たる債務者の債務を連帯して負担することです。
連帯保証人は主たる債務者と同等の責任を負うことになり、負債を全額支払わなければなりませんし、請求を受けたときに「先に主債務者に請求してほしい」などと抗弁することもできません。

4-1-1. 離婚後は夫がマンションに住み続ける

離婚後に、住宅ローンの支払名義人である元夫が住み続けるのですから、「3-2. 債務者が居住していることが住宅ローンの契約条件」のような契約違反を金融機関から指摘されることありません。

ただし、離婚していようが金融機関からすれば元妻が連帯保証人であることには変わりありません。
離婚後に元夫が住宅ローンを滞納すれば、連帯保証人である元妻に返済請求がきます。
元妻からすれば「なぜ住んでもいないマンションの住宅ローンを払わなきゃいけないの?」と思うでしょうし、そもそも代わりに支払う余裕などないかも知れません。

夫が一定期間(6ヶ月くらい)ローンを滞納し続けると、金融機関が夫に「期限の利益の喪失通知」を送付します。
期限の利益の喪失通知とは、金融機関から「あなたは毎月〇〇万円と決められたローン金額を分割返済する権利を失ったので、残債を一括で返済してください」というお知らせです。

毎月のローン返済すら滞っていたわけですから、元夫が一括返済など出来るわけがありません。
このときに連帯保証人である妻にも残ローンの一括請求書が届きます。
元妻も一括返済出来なければ、夫が住んでいるマンションは競売となります。

元夫が住んでいるマンションが競売になっても、元妻には何のリスクもないように感じるかも知れません。
しかし、競売を行っても残債務が残ってしまった場合、夫と妻の返済義務は両方とも継続するので、競売後の残債務に関しても一括返済を求められることになります。

ここにきて、元夫が一括返済する資金を突然準備出来るわけがありません。
競売後に元夫が自己破産に追い込まれる可能性は十分にあります。

競売後に元夫が自己破産してしまえば、連帯保証人である元妻が残債務を支払うしかありません。
元妻も残債務を払えなければ自己破産になってしまいます・・・。

連帯保証人である元妻は、離婚して、住んでもいないマンションのために自己破産にまで追い込まれる可能性がある・・・恐ろしいですよね。

当然、妻は離婚時に連帯保証人から外れたいと考えるでしょう。

しかし、離婚を理由に妻が連帯保証人から外れることは簡単ではありません。
連帯保証人を外れるには、金融機関の許可が必要ですが、簡単には認めてくれないからです。

連帯保証人になる契約は、住宅ローンを借りる上での金融機関との契約であって、夫婦間の離婚とはなんら関係ありません。
金融機関からすれば、元夫が滞納などした時に責任を負ってくれる連帯保証人を外すことに何のメリットもないのです。

もちろん、妻が連帯保証人から外れることが100%無理という意味ではありません。

  • 代わりに連帯保証人になってくれる人を探す
  • 別の不動産などを担保にする

このような代替案を金融機関に提示すことで、稀に連帯保証人から外れることが許可されるケースもあります。

また、夫が単独で別の住宅ローンに借り換えれば、自動的に妻は連帯保証人を外れます。
ただ、借り換えを行うにも、夫は単独で組む、もしくは親族に連帯保証人を依頼する必要があり一筋縄ではいきません。

以上のようなことからすると、基本的に住宅ローンを完済するまで、妻には連帯保証人であるリスクが付きまとうのです。

それであれば離婚時に自宅マンションを売り、売却代金で住宅ローンを完済。
さらに、売却代金が余れば財産分与をする選択が有利であり、実際にもその方法を選ばれる夫婦が多くなっています。

4-1-2. 離婚後は妻(妻子)がマンションに住み続ける

離婚原因が夫の浮気などであれば、慰謝料や養育費、財産分与の代わりに、今後も夫が住宅ローンを支払い続け、妻子は変わらずマンションに住む。
こんなケースも十分に考えられます。

こちらも、離婚後に元夫が住宅ローンを滞納すれば、連帯保証人である妻は金融機関から返済を求められることになります。
その後、住宅ローンの支払が出来なければ、マンションは競売となりますし、それでも残債務が残れば元夫、元妻ともに自己破産に追い込まれる可能性がある点も変わりません。

特に、元夫が新しい家庭を持つと金銭的に余裕がなくなり、住んでいないマンションの住宅ローン返済が滞ることは少なくありません。

私が現役営業マンの時、このような説明をすると「夫は離婚したからと、そんな不義理をする人ではない!」と反論する方もいらっしゃいました。
しかし、不義理でなくても元夫が止むを得ない事情で住宅ローンを滞納する可能性もあります。
例えば、病気や事故で働けなくなることや失業もあるでしょうし、経営している会社が倒産、といった事態も考えられるのです。

4-1-1. 離婚後は夫がマンションに住み続ける」と違うのは競売の結果、マンションが落札されれば、最終的に住んでいる「妻子」が強制退去させられてしまう点です。
仮に離婚時に連帯保証人から外れることが出来ていても、強制退去になります。

また住宅ローンの支払名義人ではない妻子が住み続けるのであれば、「3-2. 債務者が居住していることが住宅ローンの契約条件」で解説した住宅ローンの契約違反です。
ローン滞納と居住条件についての契約違反が合わされば、住宅ローン名義である夫や連帯保証人である妻は金融機関から住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。

4-1-1. 離婚後は夫がマンションに住み続ける」よりもリスクが高くなるのですから、住宅ローンの支払名義人(元夫)のマンションに連帯保証人(元妻)が住み続けるという選択肢はないでしょう。
やはり離婚時にマンションを売却して、連帯保証人から外れておくのが賢い選択です。

4-1-3. ペアローンも連帯保証と同じリスクがある

ペアローンは、夫婦で2本の住宅ローンをそれぞれ組む方法です。

例えば、5,000万円のマンションについて、夫が3,500万円のローンを、妻が1,500万円のローンをそれぞれ組んで購入するのがペアローンです。

妻からすれば、離婚しても1500万円の部分にしか返済義務がないと思われるかも知れません。
しかし、ペアローンを組む場合、通常は夫婦がお互いの債務の連帯保証人になっています。

つまり、ペアローンのマンションに住み続ける際のリスクは、連帯保証人になっているマンションに住み続ける際のリスクとイコールです。

4-2. 住宅ローン名義が夫で、妻は連帯保証人ではない

夫が一人で住宅ローンを支払っており、マンションの所有者名義も夫の単独。
妻は連帯保証人になっていないというケース。

4-2-1. 離婚後は夫がマンションに住み続ける

離婚後に、住宅ローン名義が夫になっているマンションで、夫自身が住み続けるのであれば妻に何らリスクはありません。

この場合、「1-1. 財産分与の割合」で解説した通り、離婚時にマンションを売却し、売却代金から住宅ローン残債を差し引いた金額の半分を、妻は財産分与で貰い受ける権利があります。

もし、夫が住み続ける場合、「マンションの査定額から残ローンを引いた金額の半額」を夫から現金で払ってもらうことができます。
財産分与金額は「マンションの査定額」によって大きく変わってしまうので「もしマンションを売却していればいくらになるのか?」を査定して把握すべきです。

協議離婚であれば、夫婦がお互い納得できる金額であればいくらでマンションを評価しようが構いません。
究極的には不動産鑑定士に依頼すれば正しい評価額を出してくれますが費用が最低でも10万円程度掛かってしまいます。

無料で査定をして貰いたいなら不動産会社に査定を依頼しましょう。
どの不動産会社も査定は無料ですし、査定したからと不動産会社と契約しなければいけないわけではありません。
複数の不動産会社に査定を出して貰えば夫婦の納得感も増すはずですから、一括査定サイトの利用が便利でしょう。
なお財産分与を受ける側は「査定額が高額な方が有利」です(その方が多額を分与してもらえます)。

4-2-2. 離婚後は妻がマンションに住み続ける

離婚後に、夫が住宅ローン支払名義人になっているマンションで、妻が住み続ける場合、妻に金銭的なリスクはありません。

とはいえ、夫が住宅ローンの滞納を続ければ、最終的にマンションは競売となり、妻は強制退去させられてしまいます。
何年か後に競売になって突然マンションを失うリスクを考えれば、離婚時にお金に換えて綺麗に清算しておく方が賢明な判断といえるでしょう。

4-3. 住宅ローンが夫と妻の連帯債務

夫も、妻も借入金額全額に対して同等の債務を負っているのが連帯債務型の住宅ローンです。
例えば、5,000万円の借入をしたら、例えば、5,000万円の借入をしたら、夫も妻も同じ5,000万円の負債を負います。
どちらがどれだけ債権者に返済してもかまいません。

連帯債務型の住宅ローンを利用できるのは「フラット35」が有名です。

連帯債務の場合にも支払いをする際にはどちらか一方の口座からローンを引き落としていきます。
もちろん借入額は5,000万円ですので、2人合わせて一億円の返済をするわけではなく、返済額が5,000万円となった時点で完済となり、債務が消滅します。

4-3-1. 離婚後は夫がマンションに住み続ける

離婚によって連帯債務の関係が解消されることはありません。
たとえばこれまでローン返済してきた夫が、離婚後に夫が住宅ローンの返済を滞納すれば、連帯債務者である妻は即座に金融機関から返済を求められることになります。

連帯債務型の住宅ローンが組まれているということは、夫婦の収入を合算して、多めに住宅ローンを組んでいるケースも少なくありません。
離婚後に世帯年収が下がるため、夫が滞納する可能性は高くなります。

その後も、一定期間滞納が続けば「期限の利益の喪失通知」が金融機関から届き、妻も一括返済を求められます。
簡単に一括返済など出来ませんから、マンションは競売、夫も妻自身も自己破産という最悪のシナリオも十分に考えられるのです。

このようなリスクを解消するには、、住宅ローンを完済るしかありません。
そのためには、離婚時にマンションを売って、売却代金で住宅ローンを完済するのがもっとも簡単で確実です。
売却代金が余れば財産分与として貰い受けることも出来ます。

4-3-2. 離婚後は妻子がマンションに住み続ける

連帯債務を組んだ場合でマンションに妻子が住み続けるとします。
離婚後に夫が住宅ローン返済を滞納すれば、連帯債務者である妻に支払い義務が認められます。

滞納が続けば、マンションは競売となり、最終的に自己破産となるリスクがある点も同じです。

またこの場合、返済が滞りなく進んで、完済できたとしても問題が発生します。
数年後、数十年後にいざ物件を手放そうと思っても、簡単に売却できないのです。

連帯債務型のローンで購入した不動産は、夫婦の共有名義になっているため、共有者全員の同意がなければ売却できないからです。

※共有名義のマンションについてはコチラで詳しく解説しています。
共有名義のマンションで悩んでいるなら自分の持分だけ売却することも可能 ? マンション売却カレッジ

例えば、離婚後に持分を2分の1持っている元妻が新しい男性と結婚することになったとします。
元夫の思い出の多い今のマンションを売ろうと考えたなら、元夫に連絡を取り同意を得る必要があるということです。

元夫と連絡を取り合うのもストレスになるかも知れませんし、同意してくれるとも限りません。
それだけならまだしも、マンション売却に必要な書類やサインは元夫の分も必要なので、音信不通だったり、遠方であったりするとかなりの手間です。

売却金をどのように分けるのかで意見が合わず、トラブルになる可能性もあります。

後々のトラブルを防ぐためにも、まだ連絡が取りやすく合意もしやすい離婚時にマンションを売ってすっきりしておくことが賢明でしょう。

5. 離婚時のマンション売却手順

離婚時にマンションを売らないと多くのリスクを将来に先延ばしにすることがお分かり頂けたと思います。
お互いの再スタートのためにも、マンションは離婚時に売ってすっきりしておきましょう。

離婚時のマンションの売却をどのように進めて行くのか?具体的な手順を解説します。

(※あくまで、住宅ローンが残っていることを想定しています。)

5-1. 正確な住宅ローン残高を確認する

住宅ローン残高は「ネットバンク」や「残高証明書」、「返済予定表」などで確認できます。
とはいえ、借入金融機関に直接電話で問い合わせるのが一番早いでしょう。

電話番号は、「(金融機関名)+お問い合わせ」などとネットで検索すればすぐに見つかります。
電話で問合せを入れて契約者情報を伝え、最新の残高証明書を送ってもらうと良いでしょう。

5-2. マンションがいくらで売れるか確認する

不動産会社にいくらで売れるか査定して貰いましょう。

営業マンは査定金額に幅を持たせて教えてくれるはずですが、大切なのは現実的に売れる価格(適正価格)です。
理由は後程解説します。

また、査定は必ず複数社に依頼しましょう。
査定を依頼したからと言って実際に契約しなければいけないわけではないのですし、無料ですから最低でも3社以上に査定を依頼してください。
不動産会社によって査定金額にバラツキがあるので比較検討する必要がありますし、各社の査定依頼への対応をみて、後で売却を依頼する不動産会社の選定に役立てましょう。

5-3. 「住宅ローン残高」と「適正価格」を比較する

金融機関で確認した直近の「住宅ローン残高」と、不動産会社に出して貰った「適正価格(査定価額)」を比較してみましょう。

5-3-1. 住宅ローン残高<適正価格(アンダーローン)

住宅ローンは残っているものの、ローン残高の方が適正価格より低ければ通常の売却が可能です。

もちろん、住宅ローンが残っているマンションは、金融機関の抵当権が設定されたままです。
抵当権付のマンションを購入する買手などいないので、住宅ローンを完済して抵当権を外してからでないと売却できません。

しかし、そんな余裕のある人は一部。
実際には、住宅ローン残債のあるマンションは以下のような手順で売却します。

1.ローン残債あるまま売却活動
2.買主を見つける
3.決済日に「買主から売却代金受け取り→売却代金でローン一括返済→抵当権抹消→所有権移転」を同時に行う

マンション売却代金が住宅ローン残高を上回る場合のみ、この手法が使えます。

5-3-2. 住宅ローン残高>適正価格(オーバーローン)

住宅ローンが残っていて、ローン残高がマンションの適正価格より高ければ任意売却となります。

もちろん、貯金などに余裕があり、一括で住宅ローンを完済し抵当権を外せば通常の売却が可能です。
しかし、不足分に充当する現金がなければ任意売却となります。
任意売却については後述で詳しく説明します。

5-4. 売却方法を選択する

ご自身に適している売却方法を選択します。

「住宅ローン完済済み」か「アンダーローン」だった方は、『仲介』もしくは『買取』を選択可能です。
「オーバーローン」でも売却を行うなら『任意売却』しかありません。

5-4-1. 仲介

仲介とは、売主が不動産会社に売却を依頼し、不動産会社を通じて買主を見つける手法です。
売主は売却代金を買主から受け取ることになります。

いくらで売り出すのも売主の自由ですから高額売却を狙うなら仲介を選ぶことになります。
もちろん、ある程度の相場はありますが、優秀な不動産会社に売却を依頼すれば相場よりも高く売ることも可能です。

ただし、買手がすぐに見つかる保証はありません。
売り出した翌日に買手が見つかることもあれば、何か月も経ったのに内覧客すら来ないこともあります。

売却期間が長引けば離婚後も元夫・元妻と連絡を取り合うことになるため、離婚で激しく対立している夫婦の場合、うまく行かない可能性があります。
円満離婚でストレスなく協力できるなら、仲介で高額売却を狙ってみると良いでしょう。

5-4-2. 買取

買取とは、不動産会社に直接マンションを買い取ってもらう手法です。
売主は売却代金を不動産会社から受け取ることになります。

不動産会社は売主から買い取ったマンションにリフォームなどを施し、付加価値を付けて再販することで利益を得ます。
例えば、例えば、不動産会社があなたから4,000万円でマンションを買い取り、リフォームに500万円かけ、5,000万円で売却。
残り500万円が不動産会社の利益となります。

不動産会社は、リフォーム代金や、人件費、そしてなるべく大きな利益を出すために少しでも安く買い叩こうと考えます。
そのため、買取金額は相場の6~7割となってしまうケースがほとんどです。

ただし、買取は不動産会社と金額面での折り合いさえ付けば、すぐにでも売却代金を受け取れるメリットがあります。

「これ以上、離婚で揉めるのは疲れた・・・安くなっても、早く売って楽になりたい。」という人は検討してみましょう。

5-4-3. 任意売却

「いくつか不動産会社の査定を受けたもののローン残債が売却代金を上回りそうだ・・・不足分を補う貯金もない・・・」という場合は任意売却を利用します。
任意売却は、金融機関の許可を得たうえで、売却して住宅ローンが残ってしまっても抵当権を外すことが出来る売却方法です。

任意売却を行えば、金融機関の抵当権は外れますが、残債務が消えるわけではありません。
(※担保(抵当権)のついていない無担保債権となります。)
とはいえ、残債務は、債務者の経済状況に応じて無理のない返済計画にしてもらえるケースが多いです。

任意売却最大のデメリットは、信用情報機関に事故情報が載ってしまうこと(いわゆるブラックリスト)です。
ブラックリストになると、クレジットやローンを一定期間(5~10年くらい)利用できなくなります。
それでも、マンションを売り払ってすっきり離婚したいという方だけ検討してください。

「さすがにブラックリスクに載ってしまうことは受け入れられない・・・」
という方は、
・住み続けることのデメリットを受け入れながら住宅ローン残高が減るのを待つ
・賃貸として貸し出す
といった選択肢も考えてみましょう。

※マンションを売らずに貸し出すならコチラの記事も参考にしてください。
マンションの売却か賃貸か論争に終止符!どっちが得かとことん比較 – マンション売却カレッジ

5-5. 不動産会社を選び売却する

マンションを売却しようとすると、査定依頼を通して複数の不動産会社とコンタクトを取ることになります。

連絡を取り合う中で、疑問や気になることがあれば、営業マンにガンガン質問してください。
「離婚を機に売却を検討しているが、どの売却方法を選択するべきか?」
「査定金額はどのくらいか?その根拠は?」
など、何でも聞いてみましょう。

このように、実際に営業マンと話すことで、
「信頼出来そうだ」
「知識が豊富で任せられそうだ」
「具体的な戦略があって高く売れそうだ」
といったことが、ご自身のなかで見えてくるはずです。

優秀な不動産会社選べば、あとは指示に従って動くだけです。
慎重に選び抜きましょう。

他の記事で詳しい不動産会社選びの方法は解説しています。→

5-6. 離婚の条件を決める

協議離婚は「離婚届」を市区町村に届け出るだけで成立します。
離婚条件としては「親権者」を決めるだけでかまいません。

しかし、離婚後に「言った言わない」のトラブルにならないように、その他の離婚条件についてもきっちりと話し合い、書面に残しておきましょう。

※話し合うべき条件や、離婚協議書のサンプルはこちらの記事で確認してみてください。
離婚弁護士ナビ

5-7. マンションが売れたら離婚協議書に従って財産分与

実際にマンションの売却が完了し、売却代金が振り込まれたら離婚協議で決めた通りに財産分与を行います。

財産分与でまとまった金額が振り込まれると、税金の心配をされる方もいらっしゃいます。
しかし、財産分与は基本的に非課税ですので安心してください。

6. すでに離婚済みで共有名義のマンションで困っている

ここまで、これから離婚される方にフォーカスして話を進めてきました。

しかし、既に離婚していて共有名義のマンションで揉めているという、という方もいらっしゃるかも知れません。

話し合いすら出来ない状態であれば、自身の持分だけ売却することも可能です。

7. マンション売却理由が離婚だと伝えるべきか?

マンションを売却する際、買主に「離婚が理由です」と伝えるべきでしょうか?
「縁起が悪いと思われて買手が嫌がるんじゃないか?」と心配する売主さんがいらっしゃいます。

確かに縁起を気にされる買手も中にはいます。
しかし、しかし、気にしない人の方が圧倒的に多数です。離婚は「死亡事故」などと異なり、買手にとってさほど重大な事情とはとらえられていません。
マンションは気に入った一人に買って貰えればいいのですから、全員から好かれるマンションである必要はないのです。
縁起など気にしない人が多数派ですから、売れにくくなる心配は不要でしょう。

むしろ、縁起を気にする買主さんに理由を隠したまま売ると、
「離婚が原因の売却なんて聞いていない!」と後で揉めるとリスクが高くなります。

あなた自身が内覧者に直接伝える必要はありません。
不動産会社の営業マンに伝えておけば、タイミングを見て上手く伝えてくれます。

なお営業マンには「離婚が理由」とはっきり伝えておきましょう。
もしも営業マンが理由を聞かされていなかったら、買主から尋ねられたときに矛盾した説明をしてしまったり口ごもったりしてしまうかも知れません。

「何か怪しいな・・・隠していることでもあるのか?」と買手が感じれば、他に欠陥(瑕疵)があるのではないかと疑われる可能性もあります。
例えば、建物の故障はもちろん、騒音や近隣トラブル、事件などです。
そのような疑いを持たれたら、本当に売れずに残ってしまうでしょう。

買主に余計な不信感を抱かせないためにも、マンション売却理由は離婚であると営業マンに伝えましょう。

8. まとめ

離婚後もどちらかがマンションに住み続ける選択は、常にリスクと隣り合わせで生活することを意味します。

スッキリと新生活をスタートできるように、売却に向けて動き出しましょう。

離婚だけでも大変なのに、さらにマンションも売ると精神的に負担が大きくなることは確かです。
そんなときでも、優秀な不動産会社と出会えれば、言われたとおりに動くだけ。

「不動産会社選び」という一点のみに集中してください。

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