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マンション売却をキャンセルしたい時の違約金と対処法を状況別に解説

マンション売却の違約金

「万が一、マンション売却を途中で止めたくなったらキャンセルできるの?」
「キャンセルすると違約金を請求されたりするの?」
「キャンセルしても不動産会社から仲介手数料を請求されるの?」

売却活動をはじめたものの、途中で事情が変わり、中止せざるを得ないこともあります。

そこで今回は、マンション売却を途中でキャンセルしたくなったときの「ペナルティーの有無」や「違約金の金額」についてお伝えします。

ただし、マンション売却は、「売主」「不動産会社」「買主」の3つがあってはじめて成り立ちます。
つまり一概に売却を途中で止めるといっても、「1.買主との取引をキャンセル」「2.不動産会社との取引をキャンセル」の2パターンが存在します。

もちろん、この記事では2パターンとも解説するのでご安心ください。

違約金などを水増しするような悪質な不動産業者も存在します。
この記事で、しっかりと学んでキャンセルに対する防衛策も身に着けてくださいね。

1. 買主との取引をキャンセル

まずは「売主×買主」のキャンセルにフォーカスします。
売主と買主の「取引の進捗状況」によってペナルティーの「有無」や「金額」も変わって来るため、次の3つのシチュエーションに分けて解説します。

1.買い手からの購入申し込み~売買契約締結前に買主との取引をキャンセル
2.売買契約締結後~手付解除期日前買に主との取引をキャンセル
3.手付解除期日後~決済・引き渡し前に買主との取引をキャンセル

あなたの売却活動の進捗具合と照らしわせて確認してください。

また、上記した3つとは少し性質の違う、買主の「どうしようもない事情」でのキャンセルも下記の2パターン存在します。

1.ローン特約によるキャンセル
2.買い替え特約によるキャンセル

このような特約による買主からのキャンセルにはどのように対処すべきかも確認してください。

1-1. 買い手からの購入申し込み~売買契約締結前に購入希望者との取引をキャンセル

何組かの内覧後、購入申込みをしてくれたお客さんはいるけど、まだ売買契約はしていないという段階。
具体的には購入希望者と「価格」などの条件交渉をしているタイミングとなります。

このタイミングで「売主」と「買主」は正式に不動産売買契約を結んでいるわけではありません。
なので、互いに違約金などのペナルティーは一切なく、売主は購入申込みを断ることもできますし、買主は申込みを撤回することができます。

(※結果的に売却自体も止めるのであれば「不動産会社」との媒介契約も解除するこになります。
不動産会社との媒介契約の解除は上記「不動産会社と媒介契約締結後~買い手からの購入申込み前にキャンセル」をご確認ください。)

ここで、法律に詳しい方だと、買主の購入申込みは、正式な不動産売買契約ではなくても、民法上の「口約束」となり、契約成立となるのではないか?と心配される方もおられるでしょう。

しかし、不動産業者が介在した取引では、民法より宅建業法が優先されます。
そして、その宅建業法では、重要事項の説明を宅建士から受け、売買契約書への署名・捺印がなければ契約は成立しないと定められています。

このように、売買契約の成立前であれば、売主、買主の双方ペナルティーにの心配はありません。

ただし、逆に言えば、買い手は他に良いマンションを見つければノーリスクでいつでもキャンセルできることにもなります。
したがって、売主は買い手からの購入申込みには早く返事をして、購入の意思を固めさせることが大切です。

1-2. 売買契約締結後~手付解除期日前買に買主との売買契約をキャンセル

売買契約は終わっているけど、手付解除期日がまだ来ていないという段階。
具体的には、買主の住宅ローンの本審査を待っているといった状況でしょう。

※金融機関は売買契約後でなければ、住宅ローンの正式な本審査はしてくれないところがほとんど。
審査期間は売買契約前に買主が仮審査を通過していれば1か月程度、売買契約後に事前審査をするような場合は2ヶ月くらい掛かることもあります。

結論から言うと、売買契約後~手付解除期日前というタイミングで不動産売買契約をキャンセルすると下記のようなペナルティーが発生します。

今回は、分りやすくするために「1.手付金」「2.買主都合のキャンセル(手付放棄)」3.「売主都合のキャンセル(手付倍返し)」「4.手付解除期日」の順番に説明していきます。

1-2-1. 手付金とは?

手付金とは、売買契約時に「買主」から「売主」に支払われる「契約も正式に完了したので、決済・引き渡しに向けて約束は守ります」という証拠金のようなお金です。

売主・買主ともに個人であれば手付金に限度額はなく、売買価格の10~20%が通例でした。
しかし、最近は手付金も減少傾向で100万円などキリの良い数字になっています。

(※ちなみに売主が不動産業者の場合は売買価格の20%までと定められています。)

「契約も正式に完了したし、決済・引き渡しに向けて約束は守ります」と手付金で意思表示下をしたにも関わらずキャンセルするのですから、
このタイミングでのキャンセルにペナルティーがあるのは当然でしょう。

具体的なペナルティーとして、証拠金として支払った「手付金」の金額を相手方に支払う事になりますが、
少し複雑なので「1.買主が売買契約をキャンセルする場合」「2.売主が売買契約をキャンセルする場合」に分けて説明します。

1-2-2. 買主が売買契約をキャンセルした場合は手付放棄

買主の都合で売買契約をキャンセルする場合、
買主は、売買契約時に支払った手付金を全額放棄することで契約をキャンセルすることが可能です。

これを、手付放棄と呼びます。

仮に、売買契約時に手付金として100万円支払っていたなら、その100万円を放棄することで売買契約を解除できるということです。

1-2-3. 売主が売買契約をキャンセルした場合は手付倍返し

売主の都合で売買契約をキャンセルする場合、
売主は、買主から受け取った手付金の2倍の金額を買主に支払うことで契約が解除できます。

これを、手付倍返しと呼びます。

仮に、手付金100万円を受け取っていたなら、200万円を買主に支払うことになります。
100万円は手付金として買主から受け取っていたものですから、実質的なペナルティー負担は100万円です。
手付金の2倍をペナルティーとして支払うという意味ではないので注意。

1-2-4. 手付解除期日とは?

上記で説明した「売主の手付放棄」「買主の手付倍返し」を総称てして『手付解除』と呼びます。

その手付解除が可能な期限は民法上「相手が契約の履行に着手するまで」となっていますが、この「履行の着手」がカナリやっかい・・・。

過去の最高裁判所の判例では、

”「履行の着手」とは「客観的に外部から認識できるような形で、契約の履行行為の一部をなしたこと、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたこと」”

とされています。
参考:http://www.re-words.net/japan/description.php?n=1719(不動産ジャパン)

よく分らないですよね・・・。

分りやすく具体例を出すと、
・売主側がマンションを引き渡す
・所有権の移転登記
・所有権の移転登記をした
といった場合は最終的な履行をしているので履行の着手に該当します。

また、買主側が残代金の支払いをした場合も最終的な履行なので履行の着手に該当します。

しかし、ローンの申し込みは履行の着手に該当しないのに、新居用の家具の購入は履行の着手に該当する、といったように裁判官の心証で判断がかなり別れています。

このように「契約の履行に着手」では基準が不明確ですし、いつまでも手付解除を許すと、
決済・引き渡しの直前に「やっぱり止めます」と言われるても手付だけでキャンセルされてしまいます。

これでは、100万円、200万円の手付解除では済まないレベルで損害が発生してしまいますよね?

そのようなトラブルを避けるために、あらかじめ手付解除できる期限を売買契約書で決めてしまいます。

これが「手付解除期日」です。

手付解除期日は、契約日から約2週間に設定されるのが一般的です。

しかし、期間については、契約日から決済・引き渡しまでの期間にもよるので、売主と買主の間で相談し決めることができます。
さすがに、数日などあまりに短い場合は、その取り決め自体が認められない場合もあるので注意が必要です。

ちなみに、売主が不動産業者の場合は、買主(消費者)保護の観点から手付解除日の設定はできないことになっています。

1-3. 手付解除期日後~決済・引き渡し前に買主との売買契約をキャンセルした場合は違約金

手付解除期日を過ぎたこのタイミングで売買契約をキャンセルすると「違約金」が発生します。

このタイミングでの売買契約のキャンセルは相手方に大きな損害を与えるので、損害賠償請求に発展してもおかしくありません。
さらに事態が悪化すれば最終的には裁判沙汰です。

ただ、いくら損害を与えられたからと言って、実際に裁判をすれば「お金」も「労力」も大変です。

そこで、損害賠償や裁判まで発展しないように、
「この時期にキャンセルがあったら、〇〇〇万円の違約金を支払うことで解決としましょう」
と、売買契約書で事前に定めておくのが一般的です。

違約金の相場は売買金額の20%とされており、売主・買主ともにこの金額を支払えば売買契約のキャンセルが可能です。
5000万円の中古マンションであれば1000万円の違約金になりますから、かなり大きいペナルティーになります。

売却活動がスムーズに進むのが一番ですが、予想外のトラブルが発生しないとは言い切れません。
売買契約時に違約金金額が妥当かしっかりとチェックしておきましょう。

ちなみに、買主が売主に違約金を支払うことで契約解除となった場合、売主は手付金を返還しなければなりません。

違約金と手付金を両方受け取ることはできません。

1-4. 買主の「ローン特約」による売買契約のキャンセルはペナルティーなし

ここまで、売主都合や買主都合によるキャンセルの「パターン」と、その「ペナルティー」について解説してきました。

しかし、これらとは性質の違う「どうしようもないキャンセル」も2つ存在します。

その1つ目が、買主のローンが通らなかった、という場合です。

不動産のような大きな買い物は、現金ではなく、住宅ローンを利用して購入される人がほとんど。
したがって、金融機関の住宅ローン審査に落ちれば、買主がどんなにあなたのマンションを欲しがっても買えないものは買えません。

住宅ローンの審査結果は金融機関の判断であって買主が悪いわけではありません。
そのため、不動産売買では、買主のローンが通らなかった場合に備えて「住宅ローン特約」を売買契約書に盛り込むのが一般的です。

住宅ローン特約とは、買主が住宅ローン審査に通らなかった時、買主はペナルティーなしで売買契約自体をなかったこと(白紙)にできるものです。

※住宅ローン特約は「解除条件付契約」の代表格です。

解除条件付契約とは、条件の発生によって、効力を消滅させるというもの。
条件の発生(住宅ローン審査に落ちた)によって、効力を消滅(売買契約を白紙に戻す)
このように理解すれば分りやすいですね。

ポイントは一旦は効力が発生したものを消滅させるといところ。
だから白紙解除となるのです。

このように、ローン特約は売買契約自体を白紙撤回できるので、買主は一切ペナルティーがありません。

ペナルティーなしで、白紙にできるわけですから、売主は「違約金」を買主に請求できませんし、買主から受け取っていた「手付金」も全額返還しなければいけません。

この通り、買主には相当有利な特約ですが、売主にはかなり不利です。

確かに、買主が悪いわけではありませんが、
売主にしてみれば、売買契約も終わって、決済引き渡しの準備もしているのに、手付金も取れずに、売却活動は最初から・・・。

このようなことにならないためにも、売主は住宅ローン特約によるキャンセルを防ぐためにも、買主が現れたら、売買契約前に住宅ローンの事前審査を受けて貰うようにしましょう。

1-5. 買主の「買い替え特約」による売買契約のキャンセルはペナルティーなし

「どうしようもないキャンセル」の2つ目が「買い替え特約によるキャンセル」です。

この買い替え特約とは、買主が今の家を売却するのと同時に、あなたのマンションを購入する場合に使うことができる特約です。
今の家の売却代金を使わないと住み替えができない、といった買主だと「買い替え特約」を売買契約書に盛り込むことを要求してくる可能性が高くなります。

※買い替え特約は「停止条件付契約」の代表格です。

停止条件付契約とは、条件の発生によって、効力を発生させるというもの。
条件の発生(今の家が売れた)によって、効力を発生(売買契約が成立)
と考えてください。

ポイントは、条件の発生があるまでは、売買契約の効力は発生していないところ。
つまり条件が発生しなければ最初からなかったことになります。
存在しないものは解除できないので白紙解除ではなく「最初からなかった」という扱いになります。

買い替え特約がついた売買契約の場合、買主は今住んでいる家が指定した「期間内」に、指定した「価格以上」で売れなければ、新居の購入を最初からなかったことにできます。

買い替え特約は、売買契約自体を最初からなかったことにできるので、買主は一切ペナルティーがありません。
そのため売主は「違約金」を請求できませんし、「手付金」も全額返還しなければいけません。

このように買い替え特約は、買主側にしかメリットなく、売主のリスクが高い内容です。

ですから、売主は、買い替え特約を無理に付けてあげる必要はありません。
買主が買い換え特約を強く求めるならお断りするのも一つの手です。

売買契約書に盛り込む特約ですから、買主側もかなり早い段階で交渉してくるはずです。
売買契約前であれば売主側もそこまで労力を使っていないはずですから、早めに見切りをつけて新しい買い手を探しましょう。

2. 不動産会社との取引をキャンセル

次に「売主×不動産会社」のキャンセルにフォーカスし、下記の順で解説していきます。

「1.不動産会社との媒介契約解除による違約金」
「2.売買契約がキャンセルになった場合の仲介手数料返還の有無」

違約金などを水増しするような悪質な不動産業者も存在します。
この記事で、しっかりと学んでキャンセルに対する防衛策も身に着けてください。

2-1. 不動産会社との媒介契約の途中解除は可能

売主は、色々な業者から話を聞く中で、一番信頼できそうな不動産会社に売却依頼(媒介契約)をしたはずです。

しかし、
・売り出してみたものの業者に営業力がなかった・・・。
・そもそも売却を延期した・・・。
といった理由で、不動産会社との「媒介契約」をキャンセルすることもあるでしょう。

まず結論からいうと、売主と不動産会社との媒介契約はいつでも解除できます。

媒介契約解除の方法は、電話でも口頭でも構いませんが、トラブルを防ぐためにもできれば書面で残すことをオススメします。

2-2. 媒介契約の途中解除は違約金が課されることも

ただし、売主が媒介契約をキャンセルする場合、不動産会社に対して違約金を支払わなければならないケースがあります。
それが、媒介契約の有効期間内に媒介契約をキャンセルする場合です。

媒介契約には3種類あり、宅建業法でそれぞれ有効期間が決められています。
この有効期間は媒介契約書でお互いに約束したことですから守って当然ですし、
売主から媒介契約をキャンセルされると、不動産会社はこれまでの営業努力が全て無駄になってしまいます。

そのため国土交通省規定の標準媒介契約約款でも「売主が媒介契約を途中解除した場合、不動産会社は違約金を請求できる」と定められています。

まずは、3つの媒介契約それぞれの有効期間を確認しましょう。

  1. 一般媒介契約の有効期間
    一般媒介契約の有効期間は法律上の制約がありません。
    よく「一般媒介契約の有効期間は無制限」と書いてある記事を見かけますが、これは完全に間違いです。
    無制限ではなく、法律上の制約がないだけですから、売主と不動産会社の当事者間で契約期間自体は決めなくてはいけません。
    ちなみに、国土交通省が「一般媒介契約も契約期間の目安は3ヶ月」と指導しているので、実際の不動産取引の現場でも3ヶ月となっていることがほとんとです。
  2. 専任媒介契約の有効期間
    専任媒介契約の有効期間は3ヶ月です。
  3. 専属専任媒介契約のケースの有効期間
    専任媒介契約の有効期間は3ヶ月です。
    (※以下、2つを合わせて「専任媒介契約」という)

このように「専任媒介契約」なら3ヶ月、一般媒介契約であれば当事者間で定めた有効期間、
それぞれ満了せずに解除する場合、不動産会社から違約金を請求される可能性があります。

逆に言えば、媒介契約の有効期間の3ヶ月経過してから解除する場合、違約金を請求されることはありません。

2-3. 媒介契約を途中解除しても実際に違約金を請求されることは稀

違約金として請求されるのは、契約中にかかった必要経費です。
具体的には『広告費』で、「チラシ代」「ポスティング代」「ネット掲載費用」などになります。

ただし、実際の不動産取引の現場では、媒介契約を途中解除しても違約金を請求されることはほとんどありません。

理由は、違約金を催促したり、売主と揉めたりという手間を考えると割に合わないからです。
実費は多くて10~20万円ですから、違約金で揉めてる時間で他のお客さんに注力した方が効率的なのは明らかです。

2-4. 媒介契約を途中解除して違約金を請求されたら明細を請求

とはいえ、絶対に違約金を請求されないとも限りません。
万が一、違約金を請求されたら、必ず明細書を提示して貰いましょう。

・マンションの売却活動に対して本当に必要な経費であったのか?
・不当に高い違約金を提示されていないか?(目安20万円以上)

しっかり確認して違約金に納得がいかなければ、各都道府県にある不動産業者を監督する部署(都市整備局、土木部など)に相談しましょう。
(東京都であれば都市整備局:http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/300soudan.htm

2-5. 業者を変えたくて媒介契約を解除するなら有効期間終了後が安心

「今の不動産会社に不満があるので、新規の業者に乗り換えたい」
しかし、乗り換えると言っても「専任媒介契約」は、複数の不動産会社と同時に媒介契約を結ぶことが禁じられています。

そのため、今の不動産会社と専任媒介契約を結んでいて有効期間内なら、途中解除しない限り、新規の業者と媒介契約を結ぶことができません。

しかし、媒介契約の途中解除でネックになるが違約金の可能性です。
今の不動産会社に不満があるということは、あんまり頑張ってくれていないのかも知れませんね・・・。
仕事もしないくせいに、最後の最後でちゃっかり違約金まで請求されたらたまったものではありませんよね?

なので、マンション売却を急いでいないなら、今の不動産会社との媒介契約有効期間が終了してから、新規の業者に乗り換えることをお勧めします。
これなら違約金を心配することもありません。

もちろん、すごく売却を急いでいて、違約金のリスクを負ったとしても、早く営業力のある不動産会社に乗り換えたいというなら話は別です。

しかし、マンションの売却を急いでいないのに、違約金を請求されてまで無理に媒介契約を途中解除するメリットはありません。
今の不動産会社との媒介契約終了を待ち、契約終了後に違約金を心配することなく新しい不動産会社に売却依頼すれば良いのです。

ただし、一般媒介契約の場合、そもそも売主は複数の業者と媒介契約を結ぶことが許されているので契約有効期間満了を待つ必要なく、他の業者に売却依頼しても問題ありません。
わざわざ解除する意味がないので、そちらは放置して、新しい不動産業者を積極的に探せば良いのです。

そうは言っても、媒介契約満了日まで何もせずに待っていれば良いわけではありません。

満了と同時にすぐに新しい不動産会社で売却活動を始められるように、不動産一括査定サイトでめぼしい業者をピックアップし話を聞いておきましょう。

ただし、今の不動産会社との媒介契約が終了するまでは、新規の業者と媒介契約を結ばないように注意が必要です。
先にお伝えした通り「専任媒介契約」を結んでいる場合、重ねて他の業者と媒介契約を結ぶことは宅建業法で禁じられているからです。

新しい不動産会社に迷惑を掛けるだけでなく、売主は損害賠償を請求される可能性もあります。
あくまで複数の業者から色々な話を聞いて、目ぼしを付けておく程度にしておいてください。

媒介契約を途中解除ではなく、有効期間満了で終える場合は、
契約期間満了が近づくと、不動産会社から更新の連絡が入るので「更新しない」と担当者に伝えるだけです。

2-6. 業者に契約違反がある場合は逆に違約金を請求できる

「不動産会社から媒介契約の途中解除を理由に違約金を請求された・・・。」
「請求された実費も10万円だし、常識の範囲内・・・。」
「もう支払いに応じるしかない・・・。」

それでもまだ諦めるのは早いかも知れません。

なぜなら、それまでの契約期間中、不動産会社側に契約義務違反があった可能性もあるからです。
あなたが業者側の不備を上手く指摘できれば、違約金を取り下げさせるだけでなく、逆に損害賠償を請求することもできます。

不動産会社側の契約義務としては、
・レインズと呼ばれる全国の不動産会社が互いに物件情報を共有するためのデータベースにに登録する義務
・売却活動状況を、専任媒介なら7日おき、専属専任媒介なら5日おきに売主に報告する義務
があります。

こちらのページで詳しく解説しています。

この義務を果たしていない場合は、業者側の契約違反となるので、あなたは違約金を支払う必要はありません。
むしろ業者側に契約違反を追求し、損害賠償を請求することもできます。

ただ、本当に不動産会社に損害賠償を請求することはオススメしません。

本当に請求して、不動産業者側が全く引かなければ裁判沙汰にもなりかねません。

違約金の請求を取り下げてくれたら、そこで手打ちにしましょう。

問題はこれらの義務違反をどう見破り不動産業者に伝えるかです。

・レインズに登録すると「登録証明書」が発行されますが、これを受け取っていない。
・売却活動の状況をほとんど受けていない。
このように分りやすく義務違反をしていれば簡単に見破れますし、そのまま伝えるだけです。

しかし、悪知恵の働く不動産会社なら「登録証明書を発行し忘れたがちゃんと登録はしていた。」くらいの言い逃れは平気でするはず。

これを防ぐためにも、媒介契約解除後に業者変更を考えているなら乗り換える予定の新規の業者に相談するのがベストでしょう。

ただし、先にも説明しましたが、業者変更はあくまで今の不動産会社との媒介契約が完全に終了してからにしてください。

専任媒介契約を結んでいるにも関わらず、あなたがこっそり他の業者に売却を依頼していたなどの違反があれば、逆に違約金だけでなく損害賠償まで請求される可能性もあるからです。

あくまで「今の不動産会社との媒介契約切れたら御社に依頼したいので相談に乗ってください。」というところまでにしておきましょう。

このように、マンションがなかなか売れないから業者を変えたいと思っているのに、違約金や損害賠償請求などのトラブルに発展してしまうと、費用も時間も無駄にかかってしまいます。

まだ不動産業者を選ぶ前なら徹底的に業者選びをして、信頼できる1社に売却成功まで導いて貰いましょう。

もし業者変更を考えているなら、次こそは失敗しないように慎重に業者選びをしてください。

2-7. 売買契約がキャンセルになったら仲介手数料は必要か?

ここまで、売主が不動産会社との取引をキャンセルした場合の「ペナルティー」について解説してきました。

しかし、「売主×不動産会社」の取引をキャンセルした時にもう一つ取扱いに悩むのが「仲介手数料」です。

仲介手数料は売買契約が成立した際の「成功報酬」として不動産会社に支払うものです。

ですから、売買契約成立前であれば、売主は仲介手数料を不動産会社に支払う必要はありません。

しかし、売買契約が一旦は成立したものの、その後キャンセルになることもあります。
この場合、仲介手数料の支払いは、キャンセルの「タイミング」や「理由」によって異なります。

1つ1つ確認していきましょう。

2-8. 売買契約後~手付解除期日前の売買契約キャンセル(手付解除)は仲介手数料の支払いが必要

売買契約後~手付解除期日前のタイミングに売買契約のキャンセルがあった場合、仲介手数料を不動産会社に支払う義務があります。

このタイミングのキャンセルは、売主か買主の手付解除(「1.買主による手付放棄」または「2.売主による手付金倍返し」)ですが、
手付解除した側はもちろんのこと、もう一方の相手方も仲介手数料を不動産会社に支払うことになります。

例えば、「1.買主による手付放棄」による売買契約のキャンセルだったとしても、売主も仲介手数料を不動産会社に支払わなければならないということです。

この場合、確かに売主は何も悪くありませんから、仲介手数料を支払わなければいけないのは不服だと思います。

しかし、宅建業法で「不動産会社は売買契約成立時に仲介手数料を請求できる」と決まっていますし、不動産会社側に何か落ち度があったわけではありません。

不動産会社に仲介手数料を請求されたら支払うしかないのです。

とは言っても、不動産会社も鬼ではありません。

手付解除で、仲介手数料を全額請求してくることは珍しく、減額に応じてくれることがほとんどです。
半額を請求してくる業者が大半なはずです。

実際、多くの不動産会社が、仲介手数料は「売買契約時に半額」「決済・引き渡し時に半額」をそれぞれ支払うとしています。
これは、「法律的には売買契約時に仲介手数料全額請求できるけど、決済・引き渡しが終わるまでは完全に取引が成立したとは言い難いよね」と、多くの不動産会社が考えている証拠です。

ちなみに、買主による手付放棄であれば、売主は買主からの手付金を受け取ることになるので、その中から仲介手数料を支払うことも可能です。
手付金がよくある100万円だった場合、売買価格が約2880万円までなら仲介手数料の支払いをカバーできる計算になります。

仲介手数料計算

売買価格 × 0.03 +6万円
2880万円 × 0.03 + 6万円 = 86.4万円 + 6万円 = 92.4万円
92.4万円 × 1.08(消費税) = 約99.7円

また、手付解除になった後、売主が売却活動を続けるかどうか?で減額に応じてくれるかが変わることもあります。

売却活動を続けてくれるなら、次の買主が現れた時に仲介手数料は満額請求できます。
そうなれば、売主との関係を壊したくありませんから大幅に減額してくることもあります。

1回目はキャンセルになってしまったから7割引きで、3割しか貰わなかったとしても、
2回目に売却が成功すれば、そこでは満額請求できます。

これなら、不動産業者は実質1.3倍の仲介手数料を貰えることになり、
1回目に満額請求して、売主が他の業者に逃げてしまうよりはるかに儲かるのです。

どちらにせよ、不動産会社に売却依頼をする際は、キャンセル時の仲介手数料の扱いをシッカリ確認しておきましょう。

2-9. 手付解除期日後の売買契約キャンセル(違約金による解除)は仲介手数料の支払いが必要

手付解除期日を過ぎた後に、売買契約のキャンセルがあった場合も、仲介手数料を不動産会社に支払う義務があります。

おおまかな内容は手付解除と同じなので箇条書きにします。

・キャンセルした側だけでなく、もう一方の相手方も仲介手数料支払う義務がある
・買主からのキャンセルであれば、受け取った違約金の中から仲介手数料を払うことが可能
・違約金は売買代金の20%が相場なので、違約金の支払いで困ることはないはず

2-10. ローン特約による媒介契約のキャンセルは仲介手数料の支払いが不要

「ローン特約(解除条件付契約)」による売買契約の解除があった場合は、契約自体が白紙になります。

不動産会社に落ち度はありませんが、白紙撤回となるので、不動産会社から仲介手数料は全額返金されます。
また、手付金も買主に返還されます。

2-11. 買い替え特約による媒介契約のキャンセルは仲介手数料の支払いが不要

「買い替え特約(停止条件付契約)」による売買契約の解除があった場合も、契約自体が初めからなかったことになります。

こちらも不動産会社に落ち度はありませんが、初めからなかったことになるので仲介手数料は発生しません。
買主の手付金も発生しません。

※そもそも停止条件付契約の場合、条件が発生しなければ売買契約の効力が発生していないので、契約時に仲介手数料を請求すること自体が違法です。
不動産業者でもこの辺りまで正確に把握している人は少ないので、仮に請求されたら違法であると主張してください。

3. まとめ

マンション売却における状況別のキャンセル方法について解説しました。

キャンセルというのはコントロールできない部分が多いのは確かです。
しかし、不動産会社選びで優秀な業者を見つけておくことができれば、もしキャンセルすることになってもトラブルを回避できる可能性が上がります。

信頼できる不動産会社を見つけていれば、業者変更による違約金は不要ですし、
仕事のできる担当者なら契約がスムーズに進むので、買主からキャンセルされる確率は低くなります。

結局、マンション売却は不動産会社選びが全てなのです。

もし、売却を依頼する不動産会社をまだ決めていないのであれば、そこだけでいいので全力で取り組むようにしましょう。
また、業者変更を考えているなら次の業者選びは失敗しないようにしてください。

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