初めてマンションを売却される方から「マンションの売却代金はいつ手に入るのか」という質問をよく受けます。
売却代金で何かしようと考えている人にとっては、支払われるタイミングはとても重要です。
そこで、こちらの記事では
- 売却代金が入金されるタイミング
- 売却代金の受け取り方
- 入金に関する注意点
などについて詳しく回答していきます。
難しくはありませんが勘違いしていると、想定外の苦労をする危険があるので正しく理解しておきましょう。
1. 売却代金は2回に分けて受け取る
マンション売却では、基本的に2回にわけて代金を受け取るタイミングがあります。
1回目は「売買契約の締結時」に「手付金」を受け取ります。
2回目は「決済・引き渡し時」に「残代金」を受け取ります。
この「手付金」と「残代金」を受け取るタイミングを、マンション売却の流れと共に把握しましょう。
1-1. マンション売却の基本的な流れ
マンション売却は基本的に以下のように進んでいきます。
⑥の売買契約時に支払われるお金を「手付金」と言います。
手付金の金額は売買価格の5~10%、またはそれに近い切りの良い金額(100万円や200万円)になるケースが多いです。
⑦の決済・引渡し時に支払われるお金を「残代金」と言います。
ここでは売買価格から手付金を引いた、残りのお金全てを支払うことになります。
売買契約と決済・引渡しの間に「中間金」を支払っている場合は、手付金と中間金を引いて残った額が残代金となります。
ただし、新築戸建てでは中間金を払うのが一般的ですが、中古マンションの売買ではほぼないと思っていいでしょう。
まとめると、売主であるあなたがお金を受け取るのは「売買契約時に手付金」と「決済・引渡し時に残代金」の2回を受け取ることになります。
1-2. お金の受け取り方は基本的に振り込み
「手付金」と「残代金」の受け取り方は、基本的には振り込みとなるケースが多くなります。
ただし、手付金に関しては残代金に比べ額が少なくなるので、現金で渡されるケースもあります。
近年の事例としては少ないですが、現金や預金小切手で渡される可能性もあるということは頭の片隅に入れておきましょう。
2. 手付金の金額には要注意
手付金は売買代金の5~10%のケースが多いと上記しましたが、近年では10万円~といった少額の手付金を買主から要求されるケースも増えています。
「最終的にもらえるお金が同じなら問題ない」と考える売主さんもいますが、手付金の金額を安くしすぎることはおすすめできません。
理由をお伝えする前に、3つの手付金を知っておく必要があります。
2-1. 3種類の手付金
手付金は「違約手付」「証約手付」「解除手付」の3種類があります。
2-1-1. 証約手付とは
証約手付とは「売買契約が成立したという証として買主から売主に預けるお金」という意味があります。
2-1-2. 違約手付とは
違約手付とは、「売主と買主のどちらかが契約で定めた義務を果たさなかった場合の違約金」としての働きをします。
買主違約の場合は手付金を没収、売主違約の場合は受け取った手付金プラス同額の違約金を合わせて支払うことになります。
2-1-3. 解除手付とは
解除手付とは、売買契約の締結後に「やはり契約をなかったことにしたい」という状況になった際の解除金」としての働きをします。
契約時に定めた期限内であれば、手付金を放棄することでその他の損害賠償などをなしに契約を解除することができます。
買主が契約を解除する場合は、支払った手付金を放棄することで可能となります。
反対に売主が契約を解除する場合は、受け取った手付金の倍額を相手に支払うことで契約解除ができます。
2-2. 手付金の金額が安いと契約解除のハードルが低くなる
手付金が安いということは、手付解約をしやすくなってしまうということになります。
例えば300万円の手付金を支払っている場合と、1万円の手付金を支払っている場合を比較すればわかりやすいでしょう。
売買契約締結後に買主がもっと良いマンションを見つけた場合、300万円の手付金を手放すということは簡単にはできません。
しかし、1万円の手付金であれば放棄するハードルは低くなります。
マンション売却では、ひとりの購入希望者と契約にいたるまでに、平均で3ヶ月の時間がかかります。
そんな状況で手付解除をされてしまえば、また1から購入希望者を見つけなくてはいけません。
そのため、気軽には解除ができないような金額に設定することはとても重要です。
万が一手付金を0円にしてほしいうような要求が買主からあった場合は、心苦しいかもしれませんが
- 手付金を払えないほどお金がない(=そもそもローンの審査通過も怪しい)可能性
- 他に本命にマンションがあってその予備として押さえられている可能性
があると疑うようにしましょう。
2-3. 受け取った手付金は使わない
手付金を受け取っても、お金はそのまま残しておくようにしましょう。
その理由は「住宅ローン特約」によって、買主に対して無条件で手付金を返金しなくてはいけない可能性があるからです。
「住宅ローン特約」とは、買主が住宅ローンの審査に落ちてしまった場合に無条件で契約を解除できるという特約です。
この特約は、買主が住宅ローンを組むという場合には、ほぼ確実についている特約です。
もし買主が住宅ローンの審査に落ちてしまった場合は、受け取った手付金を全額返さなくてはいけません。
売主からすると不公平に感じるかもしれませんが、買主からすると想定外の状況です。
通ると思っていた審査が通らず希望の物件が買えずにショックなうえ、少なくない手付金まで没収されてしまうのはあまりにも買主に負担が大きすぎます。
そのため、買主保護を目的に「住宅ローン特約」が契約に盛り込まれるのは通例となっています。
ただし買主に不備があって住宅ローンの審査に落ちた場合は、特約は適用されないため返還の必要はありません。
※補足:本来の手付金は売却代金とは関係ない余談ですが、手付金は売却代金ではありません。
そのため、本来であれば「決済・引渡し」の際に全額返金しなくてはいけません。
しかし、手付金を一度返金するのは完全に無駄作業となるため、実際の取引では売却代金の一部として扱います。
通常のマンション売却ではあまり気にする必要のない情報ですが、一応頭の片隅に入れておきましょう。
3. 不動産業者に仲介手数料を支払うのは2回
マンションを売却する場合、成功報酬として不動産業者に仲介手数料を支払います。
仲介手数料の支払いタイミングでよくあるのが、「売買契約締結」時と「決済・引渡し」時、それぞれ半分ずつお金を支払うというケースです。
一般的な仲介手数料の総額は、売却価格が400万円以上となる場合は【売買金額×3%+6万円+税金】の金額を支払います。
例えば、3000万円でマンションが売れた場合は、3000万円×3%+6万円=96万円。
これに税金10%を含めると105万6000円を支払います。
そして、その半分の52万8000円を売買契約時に支払うことになります。
支払った仲介手数料は、「住宅ローン特約」や「手付解除」で契約が白紙になった場合は基本的に返ってきません。
そう聞くと、決済・引渡しが完了してから支払いたいと思うでしょう。
しかし、本来であれば売主は、売買契約締結時に仲介手数料を全額支払う義務があります。
法的にはもし白紙に戻った場合も、残りの半分の金額を不動産業者は請求することができます。
なぜなら、契約が白紙に戻るのは買主の都合であり、不動産業者は契約内容を完遂したからです。
しかし、ほとんどの不動産業者は残りの半分を請求してこないことがほとんどです。
また媒介契約書に「住宅ローン特約による契約の解消が発生した場合は仲介手数料は発生しない」という旨が記載されている場合は、仲介手数料を返してもらうことができます。
そのため、媒介契約の締結時には仲介手数料についてしっかりと把握しておくようにしましょう。
3-1. 売買契約時の仲介手数料は手持ちのお金で支払うことになる
売買契約締結時に支払う仲介手数料は、手持ちのお金から出す必要があります。
最初に受け取った手付金は返金する可能性があるので残しておくべきであり、残代金が支払われるのは決済・引渡しの時となります。
そのため、売買契約が締結された時点で支払う仲介手数料は、貯金などの手持ちのお金で払わなくてはいけません。
預貯金を切り崩すという方は一時的に手持ちのお金が減ること、十分な預貯金がない方はお金を作らなくてはいけないということを理解しておきましょう。
なお、この時に支払う金額や支払い方法などは不動産業者によって異なります。
そのため、媒介契約を結ぶ前にしっかりと「どのタイミングでいくらの仲介手数料を支払うのか」を確認しておきましょう。
4. 税金も考慮しておく
最後はお金に関することで、頭の片隅に入れておくべきことをお伝えします。
マンションを売却した場合は、確定申告が必要となります。
もし、売却で利益が発生していた場合は「譲渡所得税」という税金がかかります。
どのくらいの税金を払わなくてはいけないのかの計算は、以下の式を使って算出することができます。
譲渡額-取得費-譲渡費用=課税譲渡所得
そして「課税譲渡所得」に対して税率をかけて計算を行います。
ただし、マイホームとして使用していたマンションの場合で、条件を満たせば「3000万円の特別控除」というものが使用できます。
条件
「3000万円の特別控除」とは、もし利益が発生していたとしても3000万円の利益までであれば控除することができます。
マイホームの売却では、利益が発生していても特約を使用することで、譲渡所得税を支払わなくてよくなるケースが大多数を占めます。
3000万円特別控除について詳しく知りたい方は、以下の記事にて詳しく解説していますのでご参照ください。
5. まとめ
入金されるタイミングや方法、細かい注意点などについて理解が深まりましたでしょうか。
仲介手数料や税金に関しては、売却が決まらない限り確定はしませんが、仮計算であれば査定額を使う事である程度の指標は計算できます。
仮計算を行う場合は複数からの査定結果を平均することで、それなりに現実的な数値を算出することができるでしょう。
これから売却をする方で、まだマンション査定を受けていないという人がいたら、できるだけ早めに査定を受けておきましょう。
そして、早い段階でおおまかな資金計画を立て、不安なく安心してマンション売却を進めていきましょう。