住宅ローン控除は大きな節税効果が期待できます。
そのため、住宅ローンを組む多くの人が利用することになるでしょう。
しかし、住宅ローン控除の扱い方について、よくわからないという人も少なくありません。
そこでこちらの記事では
「いま受けている住宅ローン控除はどうなるか」
「住宅ローン控除を受けてても売却時の特別控除は使えるのか」
「売却に合わせて新居を購入すると住宅ローン控除が受けられないというのは本当か」
などについてできるだけわかりやすく解説していきます。
最後まで読むことで無駄なく節税をできるようになります。
1. 住宅ローン控除とは
住宅ローン控除の正式名称を「住宅借入金等特別控除」と言います。
この住宅借入金等特別控除とは、毎年12月31日時点における住宅ローンの残りの1%の額を、10年間(※1)にわたり毎年40万円まで、合計だと最大400万円(※2)の所得税が還付されるという制度です。
一般的には「すまい給付金」や「住宅ローン減税」と呼ばれており、購入時に住宅ローンを組む際に適用することのできる制度です。
住宅ローン控除額については「年末残高×0.01(1%)」を計算することで求めることが可能です。
(※1)令和元年10月~令和2年12月の場合は13年間。
(※2)認定住宅の場合は毎年50万円まで、合計だと最大500万円。
2. 住宅ローン控除を利用するための条件
現在、住宅ローン控除を受けている、または受けていたという場合、これから解説する条件を満たしていたという事です。
そのため、自分には関係ないと思われる方もいるかもしれません。
しかし、住み替えなどで住宅を購入する予定がある方の場合は、再度利用する可能性が高い制度ですので把握しておきましょう。
条件は基本的に取得する物件が「新築」か「中古」かによって条件が異なります。
2-1. 新築の物件を購入する場合
新築マンションを購入する場合は、主に以下の5つを満たしている必要があります。
- 新築または取得から6カ月以内に住み始め、控除を受ける年の12月31日時点に住んでいる。
- 控除を受ける年の合計所得が3000万円以下である。
- 床面積が50平米以上であり、面積に半分以上が自分の居住用である。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上である。
- 住み始めた年と前後2年の合計5年の間に、住宅売却に伴う特例を使っていない。
2-2. 中古の物件を購入する場合
中古マンションを購入する場合は、主に以下の5つを満たしている必要があります。
- マンションが築後25年以内(木造住宅の場合は20年)、または耐震基準に適合している。このどちらかを満たしていること。
- 取得から6か月以内に住み始め、控除を受ける年の12月31日時点でまだ住んでいる。
- 控除を受ける年の合計所得が3000万円以下である。
- 床面積が50平米以上であり、面積に半分以上が自分の居住用である。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上である。
- 住み始めた年と前後2年の合計5年の間に、住宅売却に伴う特例を使っていない。
以上は国税庁ホームページの記載をかみ砕いて説明したものです。
詳しく知りたい場合は、以下のリンクをご参照ください。
国税庁ホームページ「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
国税庁ホームページ「No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
3. 「住宅ローン控除」とマンション売却時に使える特例の関係
マンションを売却した場合、「譲渡益(利益)が出るか」または「譲渡損(損失)が出るか」のどちらかになるケースがほとんどです。
もし利益が出るようであれば譲渡所得税を納める必要が出てきます。
そんな時、マイホームの売買を促進するために用意された特例を使うことで納める税金を減らしたり、すでに支払った税金を還付してもらえます。
ここで注意が必要なことは、特例を使って節税を行うと「住宅ローン控除」が使えなくなってしまうケースがあるということです。
そこで、まずは売却時に使える特例を解説したうえで、どのような場合に「住宅ローン控除」が使えないのかを解説していきます。
3-1. 売却時に使える特例一覧
まずは、マンションを売却した際に使える特例について解説します。
3-1-1. 3000万円の特別控除の特例(利益が出た場合)
居住用財産(マイホームとして使ってるマンションや戸建て)を売却して利益が出た場合、譲渡所得から最大3000万円を控除できるという特例です。
簡単に解説すると、マンションを売却して3000万円の利益までなら、税金を0円にすることができるというものです。
例えば、所有期間が4年で譲渡所得が2000万円発生したという場合、納める税金はおよそ800万円となります。
しかし、3000万円特別控除を利用することで納税額は0円にすることができます。
一般的に取引される居住用財産で利益が発生した場合は、この特別控除を使うことで多くが非課税とすることができるでしょう。
国税庁ホームぺージ「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
3-1-2. 10年超所有軽減税率の特例(利益が出た場合)
売却したマンションの所有期間が10年を超えている場合、譲渡所得税の税率が低くなるという特例です。
税率は所有期間によって変わり、5年未満の場合はおよそ40%で、5年以上ではおよそ20%となります。
そしてこの特例を適用した場合では、およそ15%まで掛け率が低くなります。
ざっくりとした計算ですが、例えば譲渡所得が2000万円発生したような場合だと、5年未満の場合は約800万円、5年以上の場合は約400万円、10年の特例を使うと約300万円という税額になります。
利益が発生する場合はこの特例を使うことで、かなりの節税が期待できます。
国税庁ホームページ「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
3-1-3. 特定居住用財産の買換え特例(利益が出た場合)
10年以上所有している居住用財産の売却によって利益が発生した場合で、なおかつ買換えで新居を購入した場合に譲渡所得税の支払いを繰り延べすることができる特例です。
簡単に言えば、利益が発生した場合にかかる譲渡所得税の支払いを先延ばしにすることができるというものです。
例えば2000万円の譲渡所得が発生した場合、その2000万円に対する課税を、将来新居の売却時に行います。
新居の売却で1000万円の譲渡所得が発生した場合は、譲渡所得を「前回2000万円+今回1000万円=3000万円」として税額の計算を行います。
このように、次にマイホームを売却する際に合計して譲渡所得を計算するので、決して非課税になるわけではありません。
国税庁ホームページ「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
3-1-4. 居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(損失が出た場合)
※こちらは現状、令和元年12月31日までに売却した場合が対象であり、現在は2年間の制度延長を国会審議中の制度です。
こちらは、所有期間が5年を超えたマンションを売却し譲渡損失が発生し、なおかつ2年以内に新居を購入した場合に、損失分を他の所得から控除できるという特例です。
例えば給与所得者の場合、源泉徴収によって所得税が引かれた額が給与として入金されています。
この、すでに引かれている所得税を確定申告で取り戻せるようになります。
ざっくりとした計算ですが、例えばマンションを売却して2000万円の譲渡損失が発生したとします。
その年の所得が700万円で、所得税で60万円支払っていたと仮定すると、「700万円-2000万円=-1300」と計算を行い、源泉徴収で引かれていた所得税60万円が全額還付されます。
また余った1300万円に関しては3年間繰り越して控除することができます。
翌年、800万円の所得があった場合は「800万円-1300万円=-500万円」となり、さらに翌年に500万円を繰り越すことができるものです。
国税庁ホームページ「No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
また、買換えではなく売却のみの場合の特例もあります。
大まかには上記特例と同じですが、提供条件などで差異があるので詳細は国税庁ホームページを確認してみてください。
国税庁ホームページ「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
4. 住宅ローン控除との併用ができない特例は3つ
前章で解説した特例のうち、住宅ローン控除との併用が認められていない特例は、「3000万円特別控除」と「10年超所有軽減税率の特例」、「特定居住用財産の買換え特例」の3つです。
わかりやすく言えば、「マンションを売却して利益が出た場合に特例を使うと、住宅ローン控除の併用が一定期間できなくなる」ということです。
マンション売却に伴って上記の特例を適用すると、その年と前後2年、合計で5年間は住宅ローン控除を併用することができません。
それを知らずに、業者から3000万円特別控除を勧められて利用し、いざ新居を購入してから住宅ローン控除が使えないという事を知るというケースがあります。
住宅ローン控除の方が効果が大きい年って利用したくても、3000万円特別控除を適用していると3000万円の方が優先的に適用されるためやり直しはききません。
つまり、買換えで特例を利用する場合は、特例と住宅ローン控除のどちらがお得かを計算したうえで決めることが重要です。
5. 買い替えをする場合は特例と住宅ローン控除のどっちがお得か
自分はどの制度を利用したほうがいいのかを知るためには、事前に仮計算でおおよその方向性を確認することが重要です。
というのも、どっちがお得かについては、どれだけ利益が発生したのかで異なってくるためです。
こちらの章では、計算のモデルケースを紹介し、誰でも事前の仮計算ができるように解説していきます。
5-1. 最初にマンション売却して譲渡益が出るかを計算する
まずは、マンション売却に伴って譲渡益が出るかを、以下の計算式を使って算出する必要があります。
譲渡所得=売却金額-(取得費+譲渡費用)
言葉に変えると以下のようになります。
どれくらいの利益が出たか=マンションが売れた値段-(マンション購入にかかった費用+売却するのにかかった費用)
これらの値段はどの数字を使えばいいのかを具体的に解説していきます。
5-1-1. 売却金額とは
売却金額とは、そのままマンションが売れた値段になります。
ただ、マンションを売却する前にこれを知ることはできません。
そこで、不動産業者などに査定を受けて、その金額を仮計算にあてるという方法をとります。
ここで注意が必要なことは、不動産業者の販売能力はピンキリで、1社だけではその価格がどれほど正しいのかわからないのが実態です。
明らかに高すぎるケースや、安すぎるケースでも比較対象がなければ気付きにくいものです。
そのため、必ず複数社から査定を受けて、その平均査定額を仮計算に使いましょう。
例えば、不動産一括査定サービスのマンションナビであれば、ネットから1回の査定依頼で複数社から査定結果が受け取れます。
査定を受けるのは完全に無料ですし、まずは簡易査定(基本的にはメールや郵送で査定結果が届く)からなので、試しに使ってみてはいかがでしょうか。
5-1-2. 取得費とは
取得費とは、売却するマンションを取得する際にかかった費用のことを言います。
マンションの代金はもちろん、不動産業者に支払った仲介手数料や税金(不動産取得税や登録免許税、印紙税など)、ローンで支払った利子などの費用が全てを合わせたものが取得費となります。
取得費が多くなるほど、譲渡所得は少なくなります。
できる限り計上できるように、何が取得費になるのか、購入時にどれくらいお金がかかったのか、購入時の資料を引っ張り出してチェックするようにしましょう。
取得費についてもっと詳しく知りたい場合はコチラ↓
取得費となる費用一覧!マンション売却時の税金を少しでも減らすために
5-1-3. 譲渡費用とは
譲渡費用とは、マンションを売却する際にかかった費用のことを言います。
不動産業者に支払った仲介手数料や収入印紙代などが当てはまります。
譲渡費用とみなされる費用はいくつかありますが、ここでは主な譲渡費用となる仲介手数料をつかって仮計算を行います。
譲渡にかかった費用が多いほど、譲渡所得は少なくなります。
できる限り計上できるように、何が譲渡費用になるのかをしっかりと把握しておきましょう。
譲渡費用についてもっと詳しく知りたい場合はコチラ(内部リンク)
譲渡費用となる費用の一覧!マンション売却で利益が出そうな売主必見
5-2. 実際に譲渡所得を計算してみる
ここからは実際に計算を行います。
とはいっても、数字を当てはめるだけですので、決して難しくはありません。
では、仮にマンションの取得に3000万円がかかっており、売却で4000万円が入ってきたとします。
譲渡費用に関しては、計算を簡単にするために大部分となる仲介手数料のみを使い、売却価格の3%(4000万円×0.03=120万円)120万円として計算を行います。
計算式は上で紹介した
譲渡所得=売却金額-(取得費+譲渡費用)
こちらに数字をあてはめてみます。
譲渡所得=4000万円-(3000万円+120万円)
こちらを計算すると譲渡所得は880万円なります。
つまり、880万円の利益が発生したということであり、譲渡所得税を支払う必要があります。
逆に、譲渡所得がマイナスとなる場合は、損失が発生したということですので納税する必要がありません。
つまり、「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」活用しつつ、新居を購入した場合は「住宅ローン控除」を使うことができます。
続いて、譲渡所得に対して、実際に支払うことになる税額がいくらくらいになるのかを計算しましょう。
5-3. 譲渡所得税額を計算する
譲渡所得税額は「譲渡所得×税率」で求めることができます。
税率は、マンションを所有している期間によって税率が異なるため、自分のマンションが該当する税率を使って計算しましょう。
所有期間 | 税率 |
---|---|
5年以下 | 39.63%(約40%) |
5年超 | 20.315%(約20%) |
10年超特例を利用 (譲渡所得が6000万円以下) | 14.21%(約15%) |
10年超特例を利用 (譲渡所得が6000万円超) | 20.315%(約20%) |
例えば5年以下で計算を行うと以下のようになります。
880万円×40%(税率)=352万円
譲渡所得税の納税額は352万円ほどになることがわかります。
ここから、住宅ローン控除を利用することで352万円以上の節税が見込める場合は、住宅ローン控除を利用したほうがお得だということがわかります。
住宅ローン控除でどれくらいの還付を受けられるかについては、国土交通省が提供している「すまい給付金シミュレーション」を使うことで、かんたんにあなたの条件における住宅ローン控除の合計金額を計算することができます。
このように、住宅ローン控除と特例を使った場合の恩恵を計算し、どちらがお得なのかを慎重に検討したうえで利用するようにしましょう。
6. 住宅ローン控除と特例のまとめQ&A
最後によくある疑問とその回答をまとめます。
6-1. 住宅ローン控除を受けているマンションを売却した場合、その年の控除はどうなる?
住宅ローン控除を受けているマンションを売却した場合、その売却した日付で住宅ローン控除が受けられるかが決まります。
控除額が決まるのは毎年12月31日時点で、住宅ローンの残債の1%が控除額となります。
そのため、例えば11月28日に売却をした場合、12月31日時点で住宅ローンは完済されているということであり、残債は0円ということになります。
つまり、控除の対象がないということになり、その年度の住宅ローン控除は受けられないということになります。
6-2. 購入から10年未満でマンションを売却する場合、控除されたお金は返さないといけない?
新居を購入して10年未満で売却することになった場合、控除された税金を支払わなくてはいけないの?と不安になる方がいます。
その理由は、住宅ローン控除を受ける条件に「10年以上の借り入れ」というものがあるからです。
そのため、マンション売却などで10年経たないうちにローンを一括返済した場合、住宅ローン控除の適用条件からはずれてしまうと考えたのでしょう。
しかし、その必要はありません。
途中で売却したり、繰り上げ返済を行って完済償還期間が10年以下となっても、それまで還付されたものまで無効にはなりません。
6-3. 住宅ローン控除を使っているマンション売却した場合3000万円の特別控除は使える?
まず、ここまで説明したように3000万円特別控除を使うと、住宅ローン控除の併用ができない期間の間に新居を購入すると、どちらかの制度しか利用できません。
それに対し、現在住宅ローン控除を受けているマンションを売却し、売却益が発生した場合3000万円特別控除を使うことはできます。
少しややこしく感じるかもしれませんが、「特別控除を使った年とその前後2年の合計5年間は住宅ローン控除が使えない」わけであり、「住宅ローン控除を使っているマンションを売却しても特別控除は利用できる」と覚えておきましょう。
7. まとめ
住宅ローン控除と売却時の特例の併用について中心的に解説してきました。
どちらの制度もかなりの節税が期待できるため、積極的に利用していくようにしましょう。
ただし、併用ができない可能性もあるため、旧宅や新居の取引でバタついてしまう前に、早い段階で譲渡所得が発生するのかを確認しておくようにしましょう。
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