マンションを売却するには、抵当権を抹消する必要があります。
しかし、マンションを売却したことがない人からすれば、どのようなタイミングで、どのような手順で抵当権を抹消すればいいのかわからないものです。
そこで、こちらでは抵当権を抹消するタイミングや手順、注意点について解説していきます。
抹消の方法は住宅ローンを返済中なのか、それとも完済したのかによって異なります。
ぜひ参考にして、スムーズなマンション売却を行っていきましょう。
1. 売却するなら抵当権を抹消しなくてはいけない理由
マンションを売却するにあたって、抵当権は必ず抹消する必要があります。
その理由は、抵当権付きのマンションを購入するような特異な人はいないため、売りに出したところで売却できないからです。
なぜ、抵当権付きのマンションが売れないのかを、具体的な例をあげて説明します。
例えば、AさんがZ銀行から住宅ローンの融資を受けマンションPを購入。
数年後、AさんはマンションPを売りに出し、Bさんと売買契約を結びます。
この時、購入時にAさんが設定した抵当権を抹消せず、BさんにマンションPの所有権を移転したとします。
その後、AさんがマンションPの残っているローンを滞納してしまったとします。
すると、Z銀行はローンの滞納を受け裁判所に申し立てをし、裁判所権限によってBさんの所有権となっているマンションPが差し押さえられてしまいます。
つまり、抵当権を抹消しないとAさんの滞納によって、BさんはマンションPの所有権を失ってしまうのです。
このような理由から、抵当権付きの物件を購入しようという人はほぼいません。
そのため、普通にマンションを売却したいという場合は、抵当権を抹消することが大前提となります。
2. 抵当権を抹消するタイミング
基本的には「売却に出す前に抹消する」か「決済時に抹消する」という2つのタイミングで抵当権の抹消を行います。
住宅ローンの返済状況によって選べる選択は変わってくるので、具体的に見ていきましょう。
2-1. 売却に出す前に抵当権を抹消する
売却前に抵当権抹消を行いたい場合は、「すでに住宅ローンを完済している」または、「住宅ローンを完済できるだけの現金を用意できる」という状態である必要があります。
理由は、抵当権抹消をするには住宅ローンを完済したうえで、金融機関から許可をもらわなくてはいけないからです。
簡単に言えば、ローンを完済しないと「貸してるお金を全部返してくれないと、マンションを担保から外してあげないよ」と金融機関から抵当権抹消の手助けをしてもらえません。
ローンを完済することができれば、金融機関から抵当権抹消に必要な書類を受け取ることができます。
その書類を使うことで「事前に自分で抹消する」または「事前に司法書士に依頼して抹消する」ことができます。
2-2. マンションの売買と同時に抵当権を抹消する
ローンを返済中の人で事前に完済するお金を用意できない場合は、マンションの売買と同時に抵当権抹消を行います。
返済中の多くの人が使う方法で、マンションの売却金を受け取り、そのお金でローンの残債を処理し、それと同時に抵当権を抹消するのです。
この決済と同時に抵当権抹消を行うことを「同時抹消」と言います。
「同時抹消」をする場合は、基本的に司法書士に依頼して抹消してもらうことになります。
理由は、取引をスムーズに進めるためです。
同時抹消で取引する場合は、融資、決済、返済、抵当権抹消登記、所有権移転登記など様々な作業が発生し、同日中に完了させなくてはいけないことが多くあります。
そんな中、抵当権抹消を個人でやらせるにはリスクが高く、問題が起きれば取引は成立せずに延期、最悪は契約解消となって関係者に多大な損害を与えてしまいます。
そのため、確実に抵当権を抹消するために「専門家である司法書士を使ってください」ということになるのです。
3. 抵当権を抹消する方法
抵当権抹消に関して誤解されがちなことなのですが、「住宅ローンを完済すれば抵当権は自然になくなる」と思っている人は少なくありません。
しかし、実際は抵当権は勝手に消えることはなく、法務局で抵当権抹消登記の手続きをする必要があります。
では、抵当権を抹消するにはどのようなやり方があるのかというと、タイミングも考慮した場合以下の3つの方法があります。
- 売却前に自分で抵当権抹消する
- 売却前に司法書士に抵当権抹消をしてもらう
- 売買の決済と同時に司法書士に抵当権を抹消してもらう
基本的には司法書士に抵当権を抹消してもらう方法をおすすめしますが、自分でも抹消することができます。
3-1. 売却前に自分で抵当権抹消する場合
まず、自分で抵当権を抹消する場合は、主に「すでに住宅ローンが完済している」または、「売却前に手持ちの現金などで住宅ローンを完済する」という方が対象となります。
現在ローンを返済中で、マンションの売却金でローンを返済するという方は次の「司法書士に抵当権抹消をしてもらう」へ進んでください。
それでは、自分で抵当権抹消をする場合の基本的な流れをまずは見ていきます。
- 住宅ローンを完済する
- 金融機関から書類を受け取る
- 登記申請書をダウンロードする
- 法務局へ抹消申請する
- 抵当権抹消の完了
といった流れで行うことになります。
3-1-1. 住宅ローンを完済する
まずは住宅ローンを完済します。
基本的に住宅ローンを完済しない限りは、住宅ローンを組んでいる金融機関から抵当権抹消のための書類がもらえません。
そのため、抵当権の抹消には住宅ローンの完済が不可欠となります。
3-1-2. 金融機関から抵当権抹消書類を受け取る
住宅ローンを完済することで、金融機関から4種類の書類が送られてきます。
- 登記原因証明情報または、抵当権解除証書、弁済証書という名前の書類
- 登記識別情報または登記済証、抵当権設定契約証書などという名前の書類
- 金融機関の委任状
- 代表者事項証明書(金融機関の登記簿)
この中で抵当権抹消に必要となるは、基本的に①~③の書類です。
④の代表者事項証明書は書類一式の入っていないケースもあります。
万が一、住宅ローンの完済後も書類が送られて来ていないという場合は、金融機関に問い合わせましょう。
3-1-3. 登記申請書をダウンロードする
登記申請書をダウンロードし記入しましょう。以下からダウンロードが可能です。
この「16)抵当権抹消登記申請書」を使います。
記載例もあるので参考に記入していきましょう。
3-1-4. 登記所で申請する
管轄の登記所(法務局登記部門)で抵当権抹消の申請を行います。
金融機関から受け取った書類一式と、ダウンロードして記入した抵当権抹消登記申請書、そして印鑑(認印で問題ありません)、筆記用具を持って登記所へ行きます。
注意が必要なのは自宅の最寄りではなく、マンションのある地域の管轄である登記所へ行く必要があるということです。
事前にどこが管轄なのかを調べておくようにしましょう。
申請書を提出し、内容に問題があった場合は登記所職員の方の指示に従い訂正をします。
最後に登録免許税(不動産1件につき1000円)の収入印紙を窓口で購入し、貼り付けて提出します。
3-1-5. 抵当権抹消の完了
申請が受理されると、引換証を受け取って終了です。
後日、書類の不備があった場合は連絡があり、問題がなければ登記完了の連絡がきます。
そしたら引換証を持って登記所へ向かい、登記完了証を受け取って抵当権抹消が完了します。
この時、登記完了証を銀行へ送る必要があるので忘れないようにしましょう。
3-1-6. 不安がある場合は登記所の登記相談を使う
やり方がよくわからない、記入が間違っていないか不安という場合は、登記所の登記相談を活用してみましょう。
ただし、登記所の開いている時間は平日の8:30~17:15ですので、平日に時間を作る必要があります。
また、時間完全予約制で前日までに予約が必要で、相談時間にも制限もあります。
時間を無駄にしないように、わかる範囲で記入を進めておくことをおすすめします。
3-2. 売却前に司法書士に抵当権抹消をしてもらう
売却に出す前に司法書士に抵当権を抹消してもらう場合は、以下のような流れになります。
- 住宅ローン完済して金融機関から抹消書類を受け取る
- 司法書士を探して抵当権抹消の依頼
- 抹消書類と報酬を司法書士に渡す
- 司法書士が代理で手続きを行う
- 抵当権抹消が完了したら登記完了証を受け取る
特に面倒な準備や手続きなどはありません。
「依頼する、抹消書類を渡す、報酬を支払う、完了書類を受け取る」、というのが主な作業ですので、自分で抹消するような面倒な準備や作業はほとんどありません。
費用は合計で15000円前後というケースがほとんどですので、時間がないという方や、面倒な作業はしたくないという方は司法書士に依頼することをおすすめします。
3-3. 売買の決済と同時に司法書士に抵当権を抹消してもらう
司法書士に同時抹消を依頼する場合の流れは以下のようになります。
- 売却することを事前に金融機関に連絡
- 売買契約が成立し決済日が決まったら金融機関へ連絡
- 司法書士に抵当権抹消の依頼をする
- マンションの売却金でローンを完済する
- 金融機関から抵当権抹消書類を受け取る
- 司法書士に書類を渡す
- 代理手続きで抵当権を抹消
それぞれの行程の詳細や注意点について解説していきます。
3-3-1. 売却することを事前に金融機関に連絡
売却することを決めたらまずは住宅ローンを借りている金融機関に連絡をして許可を得る必要があります。
抵当権を抹消するには金融機関からの許可が必要で、事前に金融機関が売却を許可してくれるかを確認しなくてはいけないからです。
許可されないケースとして、マンションの売却金で住宅ローンの残債が完済できない場合があります。
そのため、まずはマンションの査定を受けて、そのお金でローンの完済が可能かチェックをしておきましょう。
「マンションナビ」という無料サービスを使えば、マンション売却が得意な複数の業者から査定結果が届くため、おおよその平均査定額や、最高査定額がかんたんにわかります。
3-3-2. 売買契約が成立し決済日が決まったら金融機関へ連絡
買い手が見つかり売買契約を結び、決済・引渡しの日が決まったらすぐに金融機関に連絡をしましょう。
抵当権抹消書類を準備するまでに通常2週間程度、金融機関によっては1カ月ほどの時間がかかります。
そのため、決済日の直前に連絡をしても書類が間に合いません。
3-3-3. 司法書士に抵当権抹消の依頼をする
基本的に中古マンションの売買では、買主側が用意した司法書士に抵当権抹消を依頼することになります。
ただし、金融機関の登録司法書士や、不動産仲介業者の斡旋した司法書士に依頼するケースもあります。
状況や業者によって異なるため、不動産仲介業者に「どの司法書士を使うのか」「費用はどれくらいになるのか」「事前に提出が必要な書類があるのか」などを確認しておくようにしましょう。
3-3-4. マンションの売却金でローンを完済する
マンションの売却金を受け取ったら、そのお金でローンを完済します。
状況によって異なりますが、基本的には取引口座に売却金を入金し、そこから自動引き落としで返済が完了します。
3-3-5. 金融機関から抵当権抹消書類を受け取る
金融機関が入金を確認したら、抵当権抹消書類を渡してくれます。
ただし、決済の場に抵当権抹消書類は持ってこないという金融機関も多く、また、金融機関の担当者が立ち会っていない場合もあります。
その場合は、金融機関へ受け取りに行くか、司法書士の方に代理で受け取ってもらう等の方法がとられます。
3-3-6. 司法書士に書類を渡す
受け取った抵当権抹消書類はすみやかに司法書士に渡します。
3-3-7. 代理手続きで抵当権を抹消
司法書士は資料を受け取り次第、登記所へと足を運び抵当権抹消の手続きを行います。
なお、買主依頼の司法書士の場合は抵当権抹消だけではなく、所有権移転登記も同時に行います。
所有権移転登記に関しては一般的に買主側の費用負担となるので、あまり気にする必要はありません。
そして、登記が完了すれば無事に取引完了です。
登記完了の書類を受け取れるのは決済日から数日してからとなります。
以上が基本的な流れですが、売主と買主の双方の金融機関、仲介業者、司法書士のやり取り次第で、取引の流れが変わることもあります。
仲介業者とはしっかりと連絡を取り合い、流れや必要な準備について確認するようにしましょう。
4. 司法書士に抹消を依頼する場合の費用
司法書士に抵当権抹消の依頼をした場合、基本的には「登録免許税」と「実費」、そして「司法書士への報酬」を支払うことになります。
基本的には総額で15000円~20000円ほどの費用が発生します。
具体的な内訳を見てみましょう。
4-1. 登録免許税
不動産1件につき、1000円の登録免許税が発生します。
誤解されがちですが、マンションの場合でも敷地権があれば(ほとんどのマンションがある)土地と建物1件ずつに対して登録免許税が発生します。
そのため、基本的にマンションの売却では2000円の費用が発生します。
4-2. 実費
実費とは、事前に物件を確認するために「不動産登記情報」や、登記完了後の内容確認のための「登記簿謄本謄本」を取得するための費用や、書類を法務局や依頼主に対して郵送する場合にかかる郵送代などのことです。
状況によって増減はしますが、全て合わせるとおおよそ2500円~3000円ほどの費用が発生します。
4-3. 司法書士への報酬
司法書士に依頼すると、司法書士に対する報酬を支払う必要があります。
司法書士によって価格は異なりますが、安いところでは10000円を切り、高くても15000円ほどの報酬額となっています。
ただし、必要書類を紛失してしまったという場合や、現住所と登記している住所が異なっている、名前が変わっているなどによって別の作業や取得書類が発生した場合は、別途費用が必要となる場合がありあます。
5. 抵当権の抹消に必要な書類一覧
最後に、抵当権抹消に必要な書類を一覧にまとめます。
- 住民票
- 印鑑証明書(発行から3カ月以内)
- 本人確認書類(運転免許証やパスポート)
- 抵当権抹消登記申請書(法務局ホームページからダウンロード)
そして以下4つの抵当権抹消書類(完済後に金融機関から渡される書類)
- 登記原因証明情報または、抵当権解除証書、弁済証書という名前の書類
- 登記識別情報または登記済証、抵当権設定契約証書などという名前の書類
- 金融機関の委任状
- 代表者事項証明書(金融機関の登記簿)
5-1. 書類をなくしてしまったという場合
もし必要書類を紛失して閉まったという場合は、再発行または別の方法を使う必要が出てきます。
例えば、「登記識別情報(登記済証)」を紛失すると、再発行はしてもらえません。
そのため、代わりに事前に抵当権抹消をする場合は「事前通知」という方法で、同時抹消を行う場合は「本人情報確認の作成」という方法で代わりに抹消しなくてはいけません。
「事前通知」というのは、登記識別情報がない状態で登記申請した場合に、法務局から銀行に対して「この抵当権抹消を許可しているのか」の確認が行われます。
「本人確認情報の作成」は、司法書士に依頼して金融機関の担当者などの本人確認を実施したうえで、本人確認情報の作成を行います。
この本人確認情報を登記識別情報の代わりに用いて、抵当権抹消を行います。
「事前通知」も「本人確認情報の作成」も時間がかかってしまいますし、司法書士を雇えば一般的で5~10万円もの費用がかかってしまいます。
そのため、一度探して見当たらなかったとしても、もう一度探して頑張って見つけるようにしましょう。
6. まとめ
抵当権を抹消するには自分でやる方法と、司法書士に依頼する方法があります。
少しでも節約をしたいという方もいるかとは思いますが、抵当権抹消にかかる費用はそこまで高くなく、かなりの手間が省けるので司法書士に依頼したほうがいいでしょう。
もし、少しでも手元に残るお金を多くしたい場合は、マンションを少しでも高く売れるように手間をかけたほうが効果的でしょう。
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