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ペナルティーを激減させて未入居の新築マンションを契約解除する方法

契約解除せずに売る方法

新築分譲マンションは、完成前にモデルルームを見て購入することも多く、建物が完成し入居するまでに早くて1年、長ければ数年待たなければならないことも珍しくありません。

それだけ期間が長いと、
家庭環境の変化(結婚・離婚・出産)や、居住エリアの変化(転勤・介護・相続)
が起こり、未入居のまま新築マンションを手放さなければならないケースも出てきます。

実際このような状況に陥り、
「事情があって購入した新築マンションに住めそうもない・・・どうしたら?」
と、大きな不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

結論から言うと、未入居のまま新築マンションを手放すには、
・決済・引き渡し前なら契約解除
・決済・引き渡し後なら売却
のどちらかを選択するのが基本です。

契約解除を選択すれば、支払い済みの手付金を放棄しなければなりませんし、状況次第でさらに大きな金銭的ペナルティーである違約金の支払いとなってしまいます。

しかし、違約金を請求されても交渉次第では手付金の放棄だけで済ませられることも少なくありませんし、違法に違約金を支払わせようとする悪意のある不動産業者もいます。
無駄なお金を払わされないための交渉術や、防衛策も本文でご紹介するのでご安心ください。

また、契約解除ではなく敢えて引き渡しを受け、すぐに新築未入居マンションとして売却するという方法も検討してください。
もしかしたらペナルティーを払うより損失が少ないかも知れませんし、場合によっては利益が出るかも知れないからです。

そこで、この記事では、
・違約金の支払いによる契約解除になってしまうケース
・違約金を要求されても手付金だけで済ます方法
・契約解除をするべきか?引き渡し後に売却するべきか?の判断基準
を中心に解説していきます。

1. 新築マンションを決済・引き渡し前に手放すなら契約解除しかない

新築マンションを手放すと言っても、
決済・引き渡し前であれば、手付金は支払っているけど、残代金は支払っていない状態なので、マンションの所有権は買主であるあなたに移転していません。
したがって、第三者に売ったり、貸したりすることはできないのです。

つまり、決済引き渡し前のタイミングで新築マンションを手放すには、販売会社(販売代理会社やデベロッパー)と売買契約を解除するしか方法はありません。

もちろん、契約解除できるタイミングであっても敢えてせず、引き渡しを受けてすぐに売りに出すこともできます。その判断基準は後述するのでご安心ください。

販売元との契約を解除する方法は「手付金放棄による解除」と「違約金支払いによる解除」の2通りがあります。
それぞれの方法を見ていきましょう。

2. 手付金放棄による契約解除

2-1. 手付金と手付金放棄による解除とは?

手付金とは売買契約時に支払う、契約成立の証拠金としての役割もある売買代金の一部です。

買主は、その支払い済みの手付金を放棄することで、売買契約を解除(キャンセル)することができます。
これを手付金放棄による解除(手付解除)と呼びます。

2-2. 売買契約時に支払う手付金の目安

すでに支払い済みでご存知かも知れませんが、
新築マンションの手付金相場の目安は売買代金の5%~10%です。

例えば5000万円のマンションであれば、約250万円~500万円の手付金を支払うことになります。

近年ではキリ良く、〇〇〇万円といったケースもあります。

2-3. 新築マンションの手付解除に期限を設けることができない

新築マンションの売買契約を手付解除するに当たって、覚えておいて欲しいのが「手付解除期日」です。
手付解除期日とは読んで字のごとく、手付解除できる期限で、売買契約日から2週間前後に設定して契約書に盛り込むのが一般的です。

この期間を過ぎて契約解除を行う場合は違約金(売買代金の20%)というさらに大きなペナルティーが発生することになります。

ただし、手付解除期日の設定は売主・買主ともに個人であれば有効ですが、売主が宅建業者 ・買主が個人の場合は無効となります。
一般消費者保護の観点から宅建業法39条、第2項、第3項でそのように規定されているのです。

ほとんどの新築マンションは、売主がデベロッパー、もしくは委託を受けた販売会社といった宅建業者ですから、手付解除期日の設定は無効となります。

(※中古マンションは売主も買主も個人で、宅建業者は仲介という立場ですから手付解除期日の設定は有効です。)

仮に、あなたの購入した新築マンションに、手付解除期日が設定されており、かつ期日が過ぎていても、
売主が宅建業者であれば無効となり、手付解除は可能ですし、違約金も発生しません。

従って、新築マンションは決済・引き渡し前(所有権移転前)ではれば基本的に手付金を放棄すれば契約解除は可能なのです。

まれに、新築マンションにも関わらず、契約書に手付解除期日を盛り込んでいる場合があります。

売主業者も無効だと分っていますが、買主が手付解除を申し入れてきたときに、「手付解除期日を過ぎているから違約金が必要ですよ?」とプレッシャーを掛け、契約解除を思い止まらせるためです。

もしも、あなたが新築のマンションを手付解除しようとした時に、売主業者の担当営業マンが手付解除期日を持ち出して来たら「宅建業法39条、第2項、第3項により手付解除期日は無効ですよね?」と指摘してください。
まともな営業マンなら、一瞬で黙り込んでしまうはすです。

それでも売主業者が引かなければ都道府県の相談窓口に連絡しましょう。
慌てて手付解除に応じるはずです。

3. 違約金支払いによる契約解除

新築マンションであれば手付解除期日は無効なので、
決済・引き渡し前(所有権移転前)ではれば基本的に手付金を放棄すれば契約解除は可能だと書きました。

しかし、不動産会社の立場になってみると、
決済・引き渡し前でさえあれば、どんな状態でも手付解除を認めるのはあまりにもリスクが高過ぎます。

買主のためにどんなに労力や費用を掛けても、決済・引き渡し日の直前だろうが手付解除されてしまう可能性もあるからです。

ただし、宅建業法上は、新築マンションの契約書に手付解除期日を設定すること自体が無効なので、
不動産会社は民法の条文を契約書に盛り込みある程度のリスクを回避しています。

実際に契約書に盛り込む条文がコチラになります。

・民法第557条第1項
相手方(新築マンションの場合は売主業者)が契約の履行に着手するまで手付放棄による契約解除が可能

・履行とは?
新築マンションの決済・引き渡し

・履行の着手とは?
誰がどう見ても新築マンションを買主に引き渡す行為の一部、または引き渡すために必要不可欠な行為を行うこと。

つまり、新築マンションの決済・引き渡し前であっても、
売主業者が、買主に引き渡す行為の一部、または引き渡すために必要不可欠な行為を行っていれば手付解除はできない、ということになります。

以下は「引き渡す行為の一部」「引き渡すために必要不可欠な行為」の代表例です。
・オプション工事
・間取り変更
・仕様変更

このような特定の買主に引き渡すために、売主業者が費用と労力を使っている場合、履行の着手にあたるとして手付放棄による契約解除を認めないケースは十分にあります。

実際、宅建業者の売主と個人の買主で「履行の着手」を巡って裁判までしているケースもありますが、オプション工事など特定の買主のために費用も労力も掛けたことが明らかだと、手付解除を認めないとする判決が出ています。

もちろん、不動産業者も無駄に揉めたくないので、履行に着手していても手付解除を認めてくれることもあります。
特に汎用性のある間取り変更やオプションであれば、あっさりと手付解除に応じでくれるケースも少ないので簡単に諦めずに交渉しましょう。

具体的には、担当者が「手付解除は無効だ」と言っても、
「特別変った変更はしていないので、手付解除でも問題ないのではないでしょうか?」
と粘ってみましょう。

しかし、売主業者が手付解除を認めてくれなかったら違約金支払いによる契約解除しか方法はありません。

3-1. 違約金と違約金支払いによる解除?

違約解除とは、売買契約時にあらかじめ売主と買主の間で取り決められた違約金を支払うことで、売買契約を解除することができるというものです。
これを違約金支払いによる解除(違約解除)と呼びます。

3-2. 違約解除によって支払う違約金の目安

違約金の負担額については、一般的には売買代金の20%とされています。

5000万円のマンションを購入した場合、一般的な違約金の相場は、20%として計算すると1000万円となります。

手付解除は、すでに支払っている前金を手放すだけなので新たに費用を捻出する必要がありませんが、違約解除は、契約を解除するために費用を新たに捻出しなければいけないという大きなデメリットがあります。

4. 手付解除か?新築未入居マンションとして売却か?を判断するための手順

手付放棄にしろ、違約金を支払うにしろ、契約解除には大きなペナルティーによる金銭的な損失があります。

しかし、契約解除をせずに、敢えて新築マンションの引き渡しを受け、その後未入居のまま売り出すことで、
・金銭的な損失を減らす
・損失どころか利益を出す
ということが可能なケースもあります。

引渡を受けてすぐ(築1年以内)で、あなたが1日たりとも住んでいない(未入居)状態であれば、中古ではなく新築未入居マンションとして売り出すことができます。
つまり、新築マンションと同じ扱いができるわけですから、価格が維持できている、もしくは値上がりも考えられるというわけです。

それでは、契約解除をするべきか?新築未入居マンションとして売却するべきか?の判断するための具体的な手順を解説していきます。

4-1. ①新築未入居マンションを売り出したらいくら位になるのか把握する

まず、新築未入居マンションとして売却することになると、あなたは売主という立場になりますが、もちろん自分自信で売却活動をするわけではありません。
広告を打ち、購入検討者を案内して、最終的な買主と売主(あなた)の契約をとりまとめる仲介業務は不動産仲介会社(仲介業者)に依頼することになります。

新築マンション販売元の不動産会社は、あくまで新築マンションの販売が業務なので仲介業務は行いませんから、あなたは新たに不動産仲介業者を探さなければなりません。

仲介業者探しの第1歩が査定依頼。
新築未入居マンションを売りだしたらいくら位で売却できるか、実際に仲介業者に査定して貰うのです。

査定を依頼したからと必ず正式に仲介を依頼しなければいけないわけではありません。
なるべく多くの仲介業者から査定を貰い、正確な査定金額を把握しましょう。

不動産一括査定サイトなどを使えば簡単にできます。

<具体例>
A社:4950万円
B社:4900万円
C社:4850万円

平均査定金額4900万円

4-2. ②新築購入時の価格との差額を求める

新築購入時の価格と、平均査定金額の差額を求めます。

仮に新築購入時5000万円のマンションなら、
5000万円―4900万円=100万円
となります。

差額100万円

4-3. ③差額と、仲介の諸費用の合計を求める

マンション売却を不動産仲介会社に依頼すると、成約時に仲介手数料(約3%+6万円)や諸費用(数万円)が掛かります。
簡易的に3%+10万円で計算可能です。

4900万円で成約した場合
4900万円×0.03+10万円
仲介の諸費用157万円

差額+仲介の諸費用の合計257万円

4-4. ④手付金と比較する

新築時5000万円のマンションですから、手付金は250万円~500万円といったところでしょう。

差額+仲介の諸費用の合計257万円と、手付金の金額比較してみます。

手付金(5%)が250万円:手付解除を選択(手付金を放棄した方が損失が少ない)
手付金(10%)が500万円:新築未入居マンションとして売却を選択(売却した方が損失が少ない)

手付金が260万位だと数字上は売却の方が損失が少ないですが、不動産仲介会社を選んだりする手間を考えると、手付解除を選択する方が得策でしょう。

このように、実際に新築未入マンションとして売り出したらいくら位になるのかを把握することで、
契約解除と、新築未入居マンションとして売却、のどちらが損失が少ないか、あるいは利益が出るのか判断できます。

もちろん、査定金額ですから100%その金額で売れる保証はありません。
手付金と比較して明らかに大きな差がなければ手付解除、という選択も間違いではありません。

どちらにせよ比較しないことには判断できません。
まずは複数の仲介業者に査定を依頼してみてください。

※新築未入居マンションとして実際に売り出す時の手順はコチラのページで解説しています。

5. 違約解除するくらいなら引き渡し後に新築未入居として売却

オプション工事を依頼していたりすれば、手付解除ができず、やむをえず違約解除するしかないというケースもあります。

しかし、違約解除するくらいなら、いったん引き渡しを受け、新築未入居マンションとして売却する方が損害は少ないでしょう。

すでにお伝えした通り、違約金の相場が20%なのに対して、築一年のマンションの平均値下がり率は10%です。
新築未入居マンションであれば10%も値下がりする可能性は少ないですし、分譲時に人気のあった物件であれば値上がりしている可能性すらあります。

もちろん、新築未入居マンションが実際にいくらで売却できるかは、立地やマンションにもよります。

複数の不動産業者に査定をしてもらい、いくらくらいで売却可能か把握したうえで、
違約解除にするべきか、引き渡し受けてすぐに売り出すか、最終的な判断を行いましょう。

※手付解除や違約解除についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
https://fudousancollege.com/cancel

※引き渡しを受け新築未入居マンションとして売り出す時のコツは、コチラのページでご確認ください。
https://fudousancollege.com/newnonresidents

6. まとめ

新築マンションは基本的に手付金の放棄で契約解除ができます。
しかし、悪意のある不動産会社が違約金を請求してくる可能性もあるので、しっかりと拒否しましょう。

もし本当に違約金を支払わなければならない状況でも交渉次第で手付解除が認められることもあります。

また、契約解除をする前に、仮に新築未入居マンションとして売り出したらいくら位になるのかを査定してみてください。
手付金より、新築未入居として売り出した方が損失が少ない、もしくは損するどころか利益が出る場合もあるからです。
違約金を支払わなければ契約解除できない場合は、高確率で新築未入居として売り出した方が損害が少ないでしょう。

契約解除か売却か、正確に判断するためにも、
新築未入居マンションとして売り出したらいくら位になるか、複数の不動産会社から査定を取るようにしましょう。

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