1. 大規模修繕とは?
マンションの老朽化を防ぎ、機能性の維持するため修繕は欠かすことが出来ません。
その修繕は2つに分けることが出来ます。
- 経常修繕
小規模な破損や劣化で、その都度、少額で対応できる修繕。
経常修繕の費用は基本的に管理費で賄われる。
例)電球の交換、共有部分の壁や床などの軽微な修繕 - 計画修繕
あらかじめ長期修繕計画で定められた年数周期に従って行われる修繕。
計画修繕の費用は修繕積立金で賄われる。
建物部位によって劣化の速度は違うので、それぞれの修繕周期は国土交通省のガイドラインで定められている。
例)外壁塗装 補修 12年、給水管 取替 30年
参考:修繕工事項目(部位)ごとの修繕周期(P80) 長期修繕計画作成ガイドライ 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001172730.pdf
建物部位ごとの修繕周期が訪れる度に工事をすると、毎回一から足場を組んだりと無駄な出費が多くなってしまいます。
そこで効率化のために、いくつかの計画修繕をまとめて行うことが一般的です。
このような、計画修繕のなかでも、いくつもの建物部位を、多額の費用と、長い期間をかけて行う工事を、大規模修繕と呼びます。
実際、大規模修繕は、国土交通省の資料によってこのように定義されています。
大規模修繕とは?
マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、
工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう。参考:大規模修繕とは(P15) マンションの改修・建替え等について 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/000028135.pdf
修繕の範囲と金額が大きく、期間の長い工事を大規模修繕と呼ぶと言うことです。
特定の工事を大規模修繕と呼ぶわけではありません。
2. 大規模修繕工事を行う目的
国土交通省の定義を見て分かる通り、大規模修繕工事には「修繕工事」と「改修工事」の2通りがあります。
2-1. 修繕とは?
修繕とは、老朽化や劣化した部位に対し、補修や取替をを行うことで、機能性を問題ないレベルにまで回復させる工事です。
例)タイルのひび割れ補修
つまり、マイナスを出来る限りゼロに戻す工事が修繕ということです。
大規模修繕のメインはこちらの修繕になります。
2-2. 改良とは?
改良とは、時代や住民のニーズの変化に応じて、機能性をグレードアップすることです。
例)オートロックの設置
つまり、ゼロからさらにプラスにする工事が改良です。
さらに、修繕によって機能性を回復させると同時に、改良によって機能性をアップさせることを「改修」と呼びます。
参考:計画修繕・改修の重要性(P13) マンションの改修・建替え等について 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/000028135.pdf
ただし、マンションを売却する際に、改良や回収を行ったからといって売却価格が上がることはまずないので注意が必要です。
※大規模修繕後に資産価値が上がらない理由はコチラで詳しく書いています。
マンション売却のベストタイミングは大規模修繕の前か後か?
3. 大規模修繕の周期
国土交通省は12年周期を目安に大規模修繕工事の実施を推奨しています。
あくまでガイドラインなので法的な拘束力はありません。
国土交通省の実態調査によると、以下のようになります。
- 1回目 16.3年
- 2回目 29.5年
- 3回目 40.7年
参考:大規模修繕工事回数と築年数(P4) マンション大規模修繕工事に関する実態調査 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001234283.pdf
マンションの売却をにおいては、一般的に大規模修繕の前に売り抜ける方が有利と言われています。
しかし、工事の直前に売り出したのでは手遅れ。
大規模修繕の計画が総会で可決されのはもっと手前だからです。
上記の大規模修繕周期を参考に早めに売却活動をスタートさせましょう。
※大規模修繕の直前でマンションを売りだしても手遅れな理由はコチラで詳しく書いています。
マンション売却のベストタイミングは大規模修繕の前か後か?
4. 大規模修繕の期間
大規模修繕工事は、管理組合の理事会とは別に「修繕委員会」を立ち上げて進めて行くことが一般的です。
この修繕委員会の立ち上げから、実際に大規模修繕工事の着工までに平均で1年~1年半の期間を要します。
※着工=工事の開始
実際の大規模修繕工事の期間は、
50戸以下の小規模マンションであれば2~3ヶ月、50戸~100戸の中規模マンションで3~6ヶ月、100戸以上の大規模マンションで6~8ヶ月となります。
30階、40階あるような超大規模タワーマンションであれば、工事期間だけで2~3年ということも考えられます。
この工事期間中、住民はストレスを感じ続けることになります。
もし、いすれ売る予定のマンションをお持ちであれば、大規模修繕前の売却も検討しましょう。
※他にも大規模修繕前に売却することで得られるメリットはたくさんあります。
詳しくはコチラで解説しています。
マンション売却のベストタイミングは大規模修繕の前か後か?
5. 大規模修繕の予算目安
東京都の「マンション実態調査結果」によれば、大規模修繕工事の総額は、1000万円~3000万円が最も多くなっています。
参考:大規模修繕工事費用総額(P33) マンション実態調査結果 都市整備局住宅政策推進部マンション課
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2013/03/documents/60n34101.pdf
一戸当たりで考えると、大規模修繕工事の目安は100万円前後が一般的です。
実際に、国土交通省の調査でも平均はピッタリ100万円/戸 となっています。
参考:大規模修繕工事回数と戸あたりの工事金額(P6) マンション大規模修繕工事に関する実態調査 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001234283.pdf
毎月支払っている修繕積立金から考えて、大規模修繕工事の費用が不足していそうなら注意してください。
大規模修繕時に臨時で一時金を徴収されたりする可能性があるからです。
マンションの売却も検討しているのであれば、無駄な出費を防ぐためにも大規模修繕前に売り抜けましょう。
※詳しくはコチラで解説しています。
マンション売却のベストタイミングは大規模修繕の前か後か?
6. 大規模修繕の決議
大規模修繕を行うためには、管理組合の総会において普通決議が必要です。
- 普通決議・・・区分所有者の数でも、議決権の割合でも過半数の賛成が必要。
- 特別決議・・・可決のためには、区分所有者の数でも、議決権の割合でも過半数の賛成が必要。
ただし、マンションの共用部分に大幅な形状変化がある場合は特別決議となります。
例えば、エレベーターを新しく設置するような場合です。
この大規模修繕を決定するタイミングで一時金の徴収なども議決されます。
結果的に一時金の徴収が可決されてしまえば、それ以降のマンション売却は非常に困難です。
可決されていれば重要事項説明書で買主に説明しなければならないからです。
※マンション売却のベストタイミングはコチラで詳しく解説しています。
マンション売却のベストタイミングは大規模修繕の前か後か?