いま住んでいるマンションを売却する流れの中で、売れるかどうかの分岐点となるのが「内覧」。
その後の売買交渉をスムーズに進めるためにも、購入希望者には、少しでも部屋が綺麗という印象を与え、
「購入意思の決定」や「購入金額の増額」のキッカケにしたいものです。
そこで、今回は内覧前の準備として、掃除のポイントを紹介していきます。
1. 内覧前の掃除は内覧客の目線に立つことが大事
もしあなたが「中古マンションを購入する」立場だとしたら、その中古マンションに求めるものは何でしょうか?例えば、同じような価格の中古マンションが2つあったとしたら「よりキレイで」「より広くて」「より快適な」物件を選ぶことでしょう。
「自分のマンションを売却したい」と考えているなら、このような逆の視点(=買い手の視点)を持っておくことが大切です。特に、売却予定のマンションの内覧に来てもらう際は、この視点をしっかりと頭に入れて掃除をしていきましょう。
「仲介に入った不動産会社が指摘してくれるから大丈夫」と思っている方は要注意。担当者のタイプも人それぞれ。細かいところに気がつく人、そうでない人、色々です。
実際のところ、細かい掃除のポイントまできっちりアドバイスをしてくれるような不動産業者はまずいません。だからといって、そのことを後で担当者のせいにすることもできませんので、きっちりと「自分がやらなければ」という意識を持っておきましょう。
そこで、ここからは内覧で失敗しないために「購入者が気にするポイント」から見た掃除・整理整頓のコツを紹介していきます。
2. 部屋を掃除する前に外をチェック
早速、内覧客が最初に見る「玄関の掃除から!」と行きたいところですが、内覧する人が最初に見るところは室内ではなく玄関の外側です。
まずは共用部廊下からチェックしましょう。外廊下の場合、気をつけたいのは排水用の側溝です。ここが落ち葉などで詰まっていたりすると、印象が最悪。
内廊下なら、側溝の心配はありませんが、雨風にさらされないスペースのためか、荷物などが置かれていることが多く、雑多な印象を与えることも。必ず方付けるようにしましょう。
また、毎日生活していると気づきにくいのですが、玄関ドアの外側は意外と汚れているもの。あらかじめ水拭きをしておくとホコリが落ちて清潔感がでます。
玄関の外側が手入れされてキレイに見えると「きちんと住まいの掃除やメンテナンスをしている家主なんだな」とマンション購入者のイメージもアップします。
3. 室内の掃除は広く見せることを意識
さて、ドアが終わったら玄関をチェックしましょう。玄関は靴などの履物が置かれていない状態だとスッキリと広く見えます。内覧当日は、最低限の靴などを除いて、シューズボックス(下駄箱)などに収納しておくようにしましょう。
このように玄関も、これからお話しする部屋も同様ですが、買主目線で見れば「広いこと」が重要ポイント。「〇〇㎡だと狭いかなと思ったけど意外と広く感じる」と印象付ければ勝ちです。そのため、売主側としては「いかに広く見せるか」にこだわっていくことが得策となるのです。
室内を広く見せるコツは「床にモノを置かないこと」。
できるだけ床面を見せることで部屋はスッキリとした印象になります。特にリビングまわりはゴチャゴチャしがちなので、内覧日だけでも収納しておいてください。
「角に家具を置かない」ことも重要です。
部屋の角は収まりが良い場所なので家具などを置きがちですが、これをやると部屋が狭く見えます。家具などの移動は大変ですが、間取りと労力の許す範囲で、できるだけ角を見せる努力をしていきましょう。
4. 自分では気付かないニオイ
広さとは別に、気を付けておきたいのが「ニオイ」。
自分では気づかない家の匂いは意外とあるもの。布に染みついていることが多く、代表的なものとしてはカーテンやファブリック系の家具が挙げられます。
特に、ペットを飼っている方やタバコを吸っている方は要注意。本人は慣れていて気づきにくいものですが、苦手な人には強烈に悪印象を与えてしまいます。
こういったところは、事前に無難な香りの布用消臭剤(スプレー)などを使用しておきましょう。一気にかけすぎると今度は消臭剤のニオイがキツくなってしまいますので、時間をおいて何回かに分けてスプレーしましょう。
5. 水回りは特に入念な掃除を
特に女性の方が内覧時に重視するのが、キッチンやお風呂、洗面所、トイレといった「水周り」。
この部分が汚れていると、人によってはそれだけで嫌悪感が生まれ一発で購入候補から外れてしまいます。中古マンション購入希望者が最も気にしているポイントと言っても、過言ではありません。
逆に、水まわりに清潔感があると、物件全体に感じの良さを与えることができます。実は、この”水まわりの清潔感”が売れるマンションの共通点。気合を入れて掃除していきましょう。
まずは、水アカや水カビ、キッチンの油汚れ等を、専用洗剤で落としていきます。
洗面所やお風呂の蛇口などで落ちにくい汚れは「メラミンフォーム(スポンジ状の研磨剤)」を使っていくと効果的に汚れを落とせます。ただし、浴槽やトイレなどには使わないように注意が必要。汚れ防止のコーティングまで削ってしまう可能性があります。
メラミンフォームなどのアイテムを買いに行くのが面倒だという人は、家庭にある「重曹」を使いましょう。古典的ですが、ステンレスの部分や浴槽などの汚れを落とし、綺麗にするのに重宝します。
排水溝まわりは最重要ポイント。ニオイがないか、ヌメリがないか、チェックが必要です。ここでも重曹が活躍してくれます。大さじ3~4杯ほどかけたら、さらに酢をクルっとひとまわし。5分ほどで洗い流せば、かなり清潔になっているはずです。
重曹が研磨、消臭効果を、酢が抗菌効果を発揮して、ヌメリやニオイを落としながら、その後の菌の繁殖も抑えてくれますよ。
6. ベランダは荷物ゼロに
さて、次は窓、ベランダ・バルコニーです。
窓が汚れていると室内に光が入りにくく、部屋全体に暗い印象を与えてしまいます。そんな窓掃除の際に便利なのは「ウォッシャーとスクイジー」。プロの業者も使用している、洗浄水を付けるブラシとゴムワイパーで、これがあると作業効率がグッと上がります。
わざわざ買うのがもったいないという方は、「新聞紙」を使ってみましょう。クシャっと丸めた新聞紙を濡らして窓ガラスをふくと、汚れを落とすと同時にツヤも出してくれます。インク油の成分は窓ガラスと非常に相性が良いのです。
窓をキレイにしたら、ベランダ・バルコニーへ。これは言うまでもありませんが、洗濯物は絶対に取り込んでおいてくださいね。なるべく所有者の生活感を出さないのも、内覧時に物件の株を上げるポイントです。生活感がでていると、内覧中の人がその部屋に住むイメージを膨らませづらくなってしまいます。
そういった意味では、ベランダやバルコニーの床に荷物が置いてあるのもNG。すべて移動して、床面を水とデッキブラシで磨きます。こうすることで、内覧者が真っさらな気持ちで「このスペースをどう活用しようかな」と考えさせることができます。
最後に、内覧者に向けて外用のスリッパを用意しておくと完璧。所有者の細かい心配りは、部屋全体の印象をアップさせます。
大物が片付いたら、改めて室内全体に掃除機をかけておきましょう。
7. 具体的な掃除方法とアイテムを清掃箇所別に解説
それでは、具体的な「掃除方法」と「使用アイテム」を、掃除する場所ごとに解説していきます。
7-1. 玄関周辺
7-1-1. 共用部分
玄関というと内側の三和土(たたき:靴を脱ぐところ)をイメージしますが、忘れがちなのが玄関前です。
共用廊下部分の排水溝は汚れていませんか?
外廊下であれば落ち葉などが溜まっていたりしませんか?
内覧は部屋に入る前から始まっています。
エントランスから自分で掃除することはできませんが、玄関前くらいは綺麗にしましょう。
7-1-2. ドア
- ドア掃除で用意するもの
バケツ
雑巾
台所用中性洗剤(食器用洗剤)
歯磨き粉
ドア本体は、バケツに小さじ1杯の台所用中性洗剤を入れて、雑巾を強めに絞って拭きましょう。
また、ドアの取っ手も意外と汚れているものです。
取っ手の垢は歯磨き粉を使えば一瞬で綺麗になりますが、メッキが弱くて剥げ易いものもあるので見えない部分で試してからにしてください。
7-1-3. 三和土(たたき)
- 三和土掃除で用意するもの
バケツ
雑巾
掃除機
エタノール(除菌用アルコールスプレー)
水を撒いて一気に汚れを取ってしまいたいところですが、マンションだと汚れた水を共用部分に流すわけにもいきませんよね。
なので、ホウキを使ってまずはホコリを掃き出してもいいのですが、逆に舞い上がったりするのが気になるようであれば掃除機を使ってしまいましょう。
表面の汚れは水とエタノールで濡らした雑巾で驚くほど綺麗になります。
(エタノールというと分りにくいですが、いわゆる除菌用アルコールスプレーです。)
7-1-4. 下駄箱
こちらもエタノールでの掃除で問題ありません。
掃除後は十分に乾燥するまで風通しをよくすることに注意してください。
7-2. リビング・ベッドルーム
まずは、とにかく広く見せることを意識しましょう。
新居で使わない家具は思い切って捨てて、クローゼットに入るものは収納しましょう。
部屋が綺麗に片付いたらフローリングの掃除です。
- フローリング掃除で用意するもの
バケツ
雑巾
掃除機
フローリングワイパー
フローリング用ドライシート
台所用中性洗剤※1
フローリング用ワックス※2
(※1、2をカットでフローリング用洗剤でも可能)
- フローリング掃除の手順
①はじめから掃除機を使うと表面のホコリが舞い上がってしまうので、まずはフローリングワイパー(クイックルワイパー)でサッと掃除しましょう。ウェットタイプではなく、ドライタイプを利用してください。
②フローリングワイパーで取り切れなかったフローリングの溝部分のホコリやチリを掃除機で吸い取ります。
③床に付着した皮脂汚れや黒ずみを水拭きで落としましょう。
④落ちにくい汚れはこちらでも台所用中性洗剤(食器用洗剤)を利用すると綺麗になります。こちらもバケツに小さじ1杯程度で十分です。
⑤市販のフローリング用ワックスで磨き上げます。お米のとぎ汁で代用できるのは有名な話なので、研ぎ汁を霧吹きに入れて使うのもアリです。
ここまでが基本的なフローリングの掃除方法です。
ちなみに、4と5は、フローリング用洗剤で同時に行うことができます。
というのも、フローリング用洗剤には洗浄効果とワックス効果の2つを併せ持っている商品も多くあるからです。
7-3. 窓ガラス、サッシ(レール部分)、網戸
せっかく室内を綺麗にしても、窓ガラスが汚れているとかなり印象は悪くなります。
しかし、窓ガラスは普通に濡らした雑巾で何度拭いても落ちない・・・というイメージがあるのではないでしょうか?
ということで、窓周辺の掃除方法にフォーカスして解説します。
7-3-1. 窓ガラスの掃除
- 窓ガラス掃除で用意するもの
ハケ
窓ふきワイパー(スクイジー)
バケツ
雑巾
台所用中性洗剤(食器用洗剤)
マイクロファイバー
- 窓ガラス掃除の手順
①表面の汚れをハケで取り除く
②バケツに台所用中性洗剤3プッシュ程度入れる
③雑巾を軽く絞りガラス全体を水拭きする
④窓ふきワイパーで水分を取り除く
⑤最後にマイクロファイバーで水分を拭き取る
ここまでやれば完璧です。
ちなみに新聞紙で拭くと良いなんてよく聞きますが、あまり意味がないうえに傷つきやすいので注意が必要です。
7-3-2. サッシ(窓枠)のレール掃除
- サッシの掃除で用意するもの
掃除機
バケツ
薄いタオル
割り箸
台所用中性洗剤(食器用洗剤)
- サッシ掃除の手順
①掃除機で大きなホコリや砂を吸い上げる
②レール部分のひどい汚れには台所用洗剤をかけてやわらかくする
③バケツにも台所用洗剤を少し垂らして、捨てる前の薄いタオルをよく絞る
④タオルをレールにはめ込んで割り箸を使ってスライドさせる
7-3-3. 網戸の掃除
- 網戸掃除で用意するもの
新聞紙
ガムテープ
掃除機
スポンジ
台所用中性洗剤(食器用洗剤)
- 網戸掃除の手順
①網戸の片側全体に、ガムテープを使い新聞紙を隙間のないように貼り付ける
②新聞紙とは逆面を掃除機で吸い取る(新聞紙を貼ると反対側の空気を吸い込まないので吸引力が上がる)
③だいたいの汚れを掃除機で吸い取ったら、スポンジに台所用中性洗剤を付けて拭く(この時2つのスポンジを室内、室外から挟んで優しく拭く)
④洗剤を濡れ雑巾で拭きとる
⑤しっかりと水拭きをしたら、しっかりと乾拭きもする(水分が残ったままだとスグに汚れてしまうため)
7-4. バルコニー、ベランダの掃除
マンションのベランダやバルコニーの掃除に関しては2つ注意事項があります。
1つめは、下の階、左右の階に洗濯物が干されていないか確認してから掃除をすることです。
自分が洗濯物をしている時に上の階からホコリが降ってきたら最悪ですよね?
最後にご近所とトラブルになって引っ越し・・・なんてことにならないようにしましょう。
2つめは、大量の水で掃除しないことです。
ベランダであれば大量の水を撒いて一気に掃除してしまいたいという気持ちも分ります。
しかし、意外かも知れませんがマンションのベランダは完全防水ではないことも多く、管理規約を見てみると、水を流すことが禁止されている場合があります。
仮に水漏れを起こしてしまったら謝るだけでは済まなくなります。
それでは、用意するものから見ていきましょう。
- ベランダ掃除で用意するもの
ほうき
ちりとり
新聞紙
バケツ
雑巾
フローリングワイパー
フローリング用ウェットシート
ブラシ
洗剤(汚れがヒドイ場合)
重曹
お酢
マスク
ビニール手袋
ビニール袋
- ベランダ掃除の手順
①「ほうき」「ちりとり」でホコリやチリ、落ち葉などを取り除く
②排水溝に詰まったゴミは新聞紙で直接くるんで捨てる
③「雑巾」を絞ってベランダの床を拭いていく(ベランダが広いとかなり面倒なので、フローリングワイパーにウェットシートを装着するのもアリ)
④汚れがひどい場合は洗剤を使う
・砂土 → 「台所用中性洗剤」をブラシに含ませ擦る
・排ガス(大きな通りにベランダが面している場合) → 「重曹」を倍以上に薄めてブラシで擦る
・鳥の糞 → 糞に直接「お酢」「お湯」を掛けて時間が経ってから拭き取る(※鳥の糞は病原体が含まれているので、乾燥した状態で擦ったりして粉じんを吸い込まないようにしましょう。作業中も、マスクを着け、ビニール袋を着用し直接触れないようにしてください。拭き取った雑巾などはビニール袋に密閉してから捨てましょう。)
⑤ベランダの手すりを「フローリング用ウェットシート」を使って拭く
7-5. エアコンの掃除
- エアコン掃除で用意するもの
掃除機
やわらかい歯ブラシ
台所用中性洗剤
- エアコン掃除の手順
①フィルターを外す前に、フィルター周辺やパネルのホコリを掃除機で吸い取る(最初からフィルターを外すとホコリが降ってくるため)
②フィルターを外す
③掃除機をフィルターの外側からかける(外側にホコリはついているので、内側から吸うと網目に強く入り込んでしまうため)
④シャワーをフィルターの内側かける
⑤しつこい汚れがあれば中性洗剤を薄めて歯ブラシ擦る
8. 見せ方に工夫があるとイメージアップ
いかがでしょうか、年末年始の大掃除以上に大変だったと思います。ただ、「購入希望者にその気になってもらう」ためには、それなりの労力が必要なのです。
購入希望者は、内覧時に「住宅アドバイザー」と呼ばれるプロを連れてくることもあります。こういったプロが相手だと、付け焼刃のちょっとした掃除は意味がありません。どちらにしろ、売れたら引っ越すわけですから、この機会にしっかり掃除しておきましょう。
そんな労力をかけられないという場合や、掃除の時間が無いような場合は、プロにハウスクリーニングを依頼する方法もあります。マンション売却時の内覧専用のプランを用意している業者もありますので、調べてみると良いでしょう。
・地域で一番やすいハウスクリーニングを探してみる
http://www.zba.jp/house-cleaning/
さて、ここからは、せっかくの大掃除を活かせるような見せ方の工夫を紹介します。
まず、内覧の時間帯。部屋を広く、キレイに見せるためには太陽の自然光を取り込むのがベスト。その部屋に一番光が入るタイミングを選び、その時間をあらかじめ不動産会社の担当に連絡しておきます。相手の都合もありますが、可能であればその時間帯に来て貰えるようにしましょう。さらに、部屋の照明はすべて付けておいてください。
季節によっては暑さ・寒さが気になることもありますので、あらかじめエアコンなどで部屋を適温に整えておきましょう。
お子様などがいる場合には、どうしても騒いでしまって見学者が内覧に集中できないようなこともあります。できれば、外出の予定を立てておくなど、お子様が家にいない時間をセッティングするのがベターです。
9. まとめ
内覧に備え、部屋を魅力的に見せる方法は以上ですが、最後にひとつだけ。
内覧者に向けては、ついつい部屋の良いところばかりを伝えてしまいがちですが、「長所だけ」を伝えてしまうと、後で「こんなことは聞いていなかった!」と言われトラブルになることも。
住んでいるうえで気になっていたところがある場合には(例:排水の調子が悪い等)、しっかりとそのことも伝えた上で、その後の交渉に移っていくと気持ちの良い取引になります。
最大限、家の魅力をPRしたうえで、伝えるべきものは伝える。内覧には、そんなふうに考えて臨んでくださいね。