マンション売却のベストタイミングは大規模修繕の前か後か?

大規模修繕が迫ってきたタイミングで、マンションの売却を考えているならこんな疑問を思い浮かべるかもしれません。
「大規模修繕の前と後、どっちに売るのが良いんだろう?」

結論から言うとマンション売却のベストなタイミングは、大規模修繕工事の前になります。

ただし、大規模修繕の前ならいつでも良いといわけではありません。
これを知らないと相当な不利な状況での売却活動を強いられてしまいます。

少しでも有利にマンションを売却するためにも、最後まで読み進めてください。

1. 大規模修繕後に売却価格が上昇するという嘘

まず、前提として「大規模修繕で綺麗になれば高く売れるだろう!」と考えている売主さんが多くいらっしゃいます。
しかし、一般的に大規模修繕をしたからといって売却価格が上昇することはありません。

マンションの資産価値は立地が全て-こんな宣伝文句を聞いた事はありませんか?

マンション資産価値の決定要因と割合
・広域立地(都市部か?郊外か?等) 6割
・狭域立地(最寄駅から何分か?等) 3割
・その他 1割
参考:三菱地所レジデンス
http://www.mecsumai.com/sumai/knowledge/seminar/016/

つまり、マンションの資産価値の9割は立地で決まるため、大規模修繕後に売却価格が高くなることは基本的にないということです。
「大規模修繕で綺麗になった」と言っても、残りの「その他 1割」を構成する何十・何百の要因のうちのたった一つだからです。

また、当然ですが大規模修繕の対象は共用部分のみ。
大事な居住空間である室内は、大規模修繕を行ったところで綺麗になるわけではありません。

このようなことから、大規模修繕を行ったからといってマンションが高く売れるわけではないのです。

2. 大規模修繕工事とは?

大規模修繕とはマンションの劣化を防ぐ、あるいは遅らせるために行われる大規模な工事です。
あなたが毎月払っている修繕積立金は、この大規模修繕のために管理組合の積立金として蓄えられています。

マンションの構造や設備によっても異なりますが、新築時から12年前後のタイミングで1回目の大規模修繕、24年で2回目の大規模修繕を行うのが良いとされています。

参考:マンション大規模修繕工事に関する実態調査について 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001234290.pdf

2-1. 管理費と修繕積立金は違う

管理費と修繕積立金は似ているようで、使用用途が全く違います。

  • 管理費・・・掃除や定期点検などの日常的なマンション管理に使うお金。家計て言う所の生活費。
  • 修繕積立金・・・大規模な工事のために管理組合でプールしておくお金。家計で言う所の貯金。

国土交通省(旧・建設省)のマンション標準管理規約でも、それぞれ使用用途は厳密に分けられています。

参考:マンション標準管理規約(単棟型) 第2節 費用の負担 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/000161664.pdf

2-2. 修繕積立金は売却後に返金されることはない

すでに支払った管理費や修繕積立金は、マンション売却後にあなたに返金されることはありません。
あくまで管理組合にプールされているお金ですから、あなたが支払った修繕積立金は新しい買主に引き継がれます。

2-3. 修繕積立金の滞納も新しい買主に引き継がれる

修繕積立金が新しい買主に継承されるという事は、あなたが滞納した債務も継承されてしまうということです。
滞納がある場合、マンションを売却する前までに支払って清算しておきましょう。

支払いが困難であれば隠さず買主に打ち明け、売買代金から値引きするのが一般的です。

3. 修繕積立金で大規模修繕が賄えないマンションが続出

いざ大規模修繕のタイミングになってみると、貯まっている修繕積立金だけで工事費を賄えないことに気付いた・・・こんなマンションが山ほどあります。
「ウチのマンションは大丈夫!」と思われるかも知れませんが、実際に多くのマンションで修繕積立金が不足しているのです。

国土交通省の「マンション総合調査」によれば、大規模修繕の工事費用が足りないマンションは4割もあるそうです。

参考 マンション管理の現状等について 国土交通省資料
http://www.mlit.go.jp/common/000026725.pdf

日経新聞の調査によると、修繕積立金に不安を抱えるマンションは75%もあるとのこと。

どちらにせよ、かなりの数のマンションが大規模修繕の工事費用が不足しているのです。

4. 修繕積立金が不足する理由

では、なぜ修繕積立金が不足するのでしょうか?
理由は以下の4つになります。

4-1. 長期修繕計画がないor短い

長期修繕計画とはマンションの劣化を防ぎ、機能性を維持するため、管理組合が作成する長期の修繕計画です。
国土交通省のガイドラインでは30年以上の期間で定めるよう推奨されています。

この長期修繕計画をもとに、月々支払う修繕積立金が設定されるためマンション管理には必須です。

しかし、国土交通省の調査によれば、この長期修繕計画を作成しているマンションは全体の89%。
1割のマンションは長期修繕計画がないのです。

参考:マンションの維持管理に関する調査レポート 公益財団法人マンション管理センター
http://www.mankan.or.jp/09_research/pdf/02.pdf

長期修繕計画もなく、いい加減に決められた修繕積立金では不足して当然です。

また、30年以下の期間が短すぎる長期修繕計画も修繕積立金不足を招きます。
多額の費用が必要になるエレベーターや給排水管の交換、機械式駐車場の建て替えといった修繕は2回目以降の大規模修繕で行われるからです。

長期修繕計画が短すぎれば、上記のような修繕項目が抜けており、月々の修繕積立金が安く設定されいる可能性が高いといえます。

国土交通省の調査によれば、31年以上の長期修繕計画のあるマンションは20%弱しかありません。

参考:マンション総合調査 (5)長期修繕計画 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001081486.pdf

修繕項目が抜けまくった長期修繕計画をもとに決められた修繕積立金では不足も当然と言えます。

4-2. 新築マンションの修繕積立金が安すぎる

修繕積立金の徴収方式には2種類あります。

  • 均等積立方式
    30年など長期間で必要になる修繕工事費用総額をその期間月数で割り、毎月均等に積み立てていく方式。
    国土交通省は均等積立方式を推奨している。
  • 段階増額積立方式
    新築分譲時の修繕積立金を一番安く設定し、そこから一定期間ごと(3年や5年など細かく)に徐々に増額していく方式。
    新築マンションの多くは段階増額積立方式を取り入れている。

現状、ほとんどのマンションが段階増額積立方式をとっている理由は、新築当初だけでも月々のランニングコストを安く見せかけておけば、分譲業者が売りやすいからです。

国土交通省推奨の均等積立方式で30年間に必要な修繕工事総額を積み立てる場合、月々の修繕積立金の目安は平米当たり200円です。
70㎡のマンションなら14000円程度の修繕積立金になります。

参考:マンションの修繕積立金に関するガイドライン 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf

一方で、実際の新築分譲マンションの修繕積立金は平米当たり90円前後に設定されているのが現状です。

参考:マンションランニング・コスト最新動向 株式会社東京カンテイ
https://www.kantei.ne.jp/report/67cost-shuto.pdf

いくら、段階式で少しづつ値上げするといっても、90円/㎡の修繕積立金は安過ぎます。
これだけ新築時の修繕積立金が安ければ、大規模修繕に必要な工事費用が足らなくなって当然です。

段階増額積立方式で少しづつ修繕積立金の値上げは行われるかも知れませんが、突然2倍にするようなことはまず行われません。
仮に、修繕積立金の大幅な値上げを提案しても反対住民が多ければ実行できないからです。

後々困るのは住民ですが、目の前で問題が起きているわけではないので多くのマンションでは先送りされてしまいます。
結局は大規模修繕が目の前に迫ってきてから、修繕積立金の不足に気付くのです。

4-3. 工事費の高騰

近年の工事費相場の高騰によって、当初の修繕計画が狂い、修繕積立金だけでは大規模修繕工事の費用を賄えないマンションが増えています。

実際にみずほ不動産販売の調査によれば、ここ10年でマンションの建築費指数は20%近く上昇しているのです。

参考:建築費が前回のピークを上回る みずほ不動産販売
https://www.mizuho-re.co.jp/article/trend/report-201803.html

4-4. 駐車場の空きが増えた

新築当時はファミリー層が多く車所持率の多かったマンションも、住民の高齢化や子供の独立で駐車場に空きが目立ってくることがあります。
駐車場利用料を修繕積立金に組み込んでいる場合、空き駐車場が多くなると修繕積立金が不足してしまうのです。

5. 修繕積立金が不足すると一時金徴収や借入が必要

大規模修繕のための修繕積立金が足りない時は、以下の方法で大規模修繕を行うことが一般的です。

5-1. 一時金を住民から徴収

大規模修繕工事に足りない費用を、各住民から一時金として徴収する方法です。
100万円程度の支払いになることもあります。

5-2. 金融機関から借入

大規模修繕工事の不足費用を、管理組合が金融機関から借り入れる方法です。
返済のために工事後に修繕積立金は大きく値上げされます。

6. 一時金の徴収や借入が可決される前にマンション売却を

大規模修繕が迫まり、一時金の徴収や金融機関からの借り入れが可決される前にマンションを売却しましょう。
経済的な負担、不利な売却活動を防ぐことが出来るからです。

6-1. 経済的な負担を防げる

一時金の徴収が可決される前にマンションを売却すれば、売主は一時金の負担をする必要はありません。

また、金融機関からの借り入れが可決された場合、大規模修繕後の修繕積立金を大きく値上げすることで返済します。
しかし、こちらも借入と値上げが可決される前にマンションを売却すれば、売主は値上げされた修繕積立金を払わなくて済みます。

もう手放すことになるマンションに無駄なお金をかけても意味がありませんよね。
早め早めに動き出して無駄な出費を防ぎましょう。

6-2. 不利な状況での売却を防げる

一時金の徴収が決まっている、金融機関からの借り入れが決まっているマンションは買手が現れても、購入を見送られる。もしくは大幅な値下げを要求されたりする可能性が高くなってしまいます。

ただでさえ大きな出費をした後に一時金で何十万・何百万の支払いのあるマンションなど敬遠されて当然ですし、高額な修繕積立金は購入後、買主の家計を毎月ダイレクトに圧迫するからです。

不利な状況での売却活動を防ぐためにも、一時金の徴収や金融機関からの借り入れが可決される前に売却を行いましょう。

7. マンション売却のベストタイミングは総会での可決前

「大規模修繕の前にマンションを売却しましょう!」
多くの書籍やウェブサイトでこのように言われていますが、正確には間違っています。

大規模修繕の工事前であっても、管理組合総会で「一時金の徴収」や「修繕積立金の大幅な値上げ」が可決されていれば、重要事項説明書に記載し買手に説明しなければならないからです。

ですから、正確には以下のようになります。
大規模修繕工事が迫ってきて、これ以上修繕積立金不足を放置できなくなり、解決策として「一時金の徴収」や「金融機関からの借り入れ&修繕積立金の大幅な値上げ」が総会で可決される前がマンション売却のベストタイミング。

(※一時金の徴収、修繕積立金の増額は普通決議、つまり過半数の賛成が必要です。)

8. 一時金や修繕積立金の大幅な値上げがあるか確認する方法

問題はあなたのマンションで「一時金の徴収」や「修繕積立金の増額」があるのか、という点です。
どちらにしろ、大規模修繕のための修繕積立金が不足しているかどうかを確認すれば分ります。

(※管理組合が定期的に修繕積立金の現状を集計し住民に対して発信している場合はそちらを参考にすれば問題ありません。)

  1. 長期修繕計画を確認
  2. まず、長期修繕計画には大規模修繕の「工事時期」「工事費用」が記載されているのでチェックします。
    (※修繕積立金の「値上げ時期」「値上げ額」まで書いている場合もありますが、これはあくまで段階増額積立方式における予定でしかないので気にしなくても良いでしょう。)
    マンション管理会社、管理組合の理事長もしくは理事に連絡すれば取得が可能です。

  3. 収支計画表を確認
  4. 次に、これまで住民がおさめた修繕積立金がいくら貯まっているかを確認するために収支計画表を確認します。
    こちらも、マンション管理会社、管理組合に連絡すれば取得可能です。

  5. 長期修繕計画と収支計画表を比較
  6. 収支計画表の「現在蓄積されている修繕積立金」と「今後毎年蓄積されていく修繕積立金」で、長期修繕計画の工事費用を賄えるか判断します。

取り寄せたところで見方が分らないかも・・・と不安に思われる方は思い切って不動産会社に資料を精査して貰うのも有効な手段です。
どちらにしろ売却を考えているのであれば、相談がてら早めにいくつか不動産会社に査定を依頼して優秀な営業マンに目星をつけておきましょう。

また、長期修繕計画がない、もしくは短い(20年や25年未満)マンションは残念ながら論外です。
ただでさえ修繕積立金は新築分譲時に安く設定されがちなことに加え、管理組合は長期の計画を自身で把握できていないため、管理会社の言いなりに場当たり的な修繕をしており、慢性的な資金不足に陥っているからです。

修繕積立金がとんでもなく値上げされたり、最悪払えない住民が反対し修繕自体が行えずスラム化する可能性だってあります。
かなり危険な状況なので、いっこくも早く信頼できる不動産会社を見つけ相談しましょう。

9. 大規模修繕前に売ることで得られるその他のメリット

大規模修繕によって一時金の徴収や、修繕積立金の大幅な値上げがなさそうでも大規模修繕が行われる前に売却するメリットはたくさんあります。
どうせ売るつもりなら大規模修繕前に有利に売却しましょう。

9-1. 成約率が低くなるのを防げる

大規模修繕工事が始まると、内覧者は購入後の生活をイメージできないため成約率が落ちます。
足場やシートで外観は分りませんし、室内は暗いうえに景色も見えないのですから当然です。

9-2. ストレスを避けられる

大規模修繕工事が始まると、住人は色々なストレスを感じます。

・ベランダの片付け
・騒音がもの凄い
・ペンキのニオイ
・洗濯物が干せない
・バルコニーに突然作業員がいる

特にストレスを感じやすい人は普通に引っ越しを考えるレベルです。
大規模修繕前に売却することでこれらの工事によるストレスを避けることが出来ます。

9-3. 競合を避けられる

上記したストレスもあり、大規模修繕工事が始まると、マンション内で競合する部屋はいくつも売り出されることがあります。
同じマンションで似たような部屋があれば、値引き競争が起こって当然。
このような大規模修繕による値引き競争が起きる前にサクッと高値で売り抜けるのが賢い戦略です。

10. まとめ

どちらにしろ近いうちに手放す予定のマンションであれば、大規模修繕の前に売却できるように早めに行動しましょう。

特に、一時金の徴収、もしくは金融機関からの借り入れによって修繕積立金の大幅な値上げがありそうな場合、総会で可決される前がマンション売却のタイムリミットになるので注意してください。

ちなみに、あなたのマンションですでに「一時金の徴収」や「修繕積立金の増額」が決まっている場合でも諦めないでください。
信頼できる不動産会社で、優秀な売却戦略を持った営業マンを見つければ、買手が見つからなかったり、無理な値引き交渉をされずに売り抜けることも可能だからです。

要はこのような戦略をしっかりと組んでくれる営業マンを見つけることが大事なのです。
どちらにしろ、詳細な査定金額を出す時に何社かの営業マンに会うでしょうから、
「すでに可決されてるんですが、買手からマイナス要因と思われないですか?」
と疑問をぶつけてみましょう。