トラブル&注意 基礎知識

事前に知っておきたいマンション売却のトラブルまとめ。対策、解決方法も紹介

マンション売却のトラブル

マンション売却では、様々なトラブルやクレームに巻き込まれる可能性があります。

公益財団法人不動産流通推進センターによると、平成29年度の不動産取り引きにおける公共窓口に寄せられた苦情・紛争件数は1748件にのぼるというデータが出ています。

これは、毎日4~5件のトラブルが発生しているということです。

さらに言えば、これは国土交通省や住宅相談所に寄せられた相談のみの数なので、個人間あるいは、仲介業者を挟んで解決されたトラブルを含めば、かなりの件数になることが予想されます。

つまり、売主にとってはトラブルは決して他人事ではありません。
実際にトラブルに巻き込まれた場合、修繕費の負担や損害賠償、契約の解除、場合によっては裁判費用など、さまざまな不利益をこうむることとなってしまいます。

しかし、事前に注意しておけばトラブルに発展せずに済んだり、事前に知っておけば話がややこしくならなずに済むような事も多くあります。

こちらでは、これからマンション売却をする人に向け、事前に把握しておくことでトラブルやクレームを回避する、または、できるだけ損害を最小限におさえるためにできることを紹介していきます。

ぜひ最後まで読んで、トラブルのない売買に役立ててください。

1. 手付金に関するトラブル

マンション売却でよくあるトラブルの一つが「手付金」に関するものです。

「手付金」とは、売主が買主から売買契約時に受け取るお金のことで、売買契約における担保のようなものです。
手付金の支払いは義務ではありませんが、不動産取り引きでは支払う事が慣例となっています。

支払われる金額は、取り引きする不動産価格の20%を上限に、5~10%ほどが手付金の相場です。

本来、この「手付金」には以下のような意味合いがあります。

  1. 証約手付(売買契約が成立しましたよ、という証明)
  2. 違約手付(買主または売主のどちらかに違約があった際に違約金として使う)
  3. 解約手付(買主または売主のどちらかが相手方の同意を得ずに契約を解消する際に使う)

よく勘違いされがちなのですが、この手付金は売買代金の一部ではありません。
手付金はマンションンの売買が問題なく完了したら、売主から買主に対して返還するお金です。

実際の取り引きでは、いちいち手付金を売主に返してから、売買代金を受け取るとお金のやりとりが面倒になります。
そのため、引き渡し時には売買代金から手付金を引いた差額を受け取り、手付金を売買代金に含めて満額の支払い完了とします。

しかし、このお金のやり取りは、一度手付金を返還するのが非効率だからに過ぎません。

そのため、形としては売買代金の一部のような扱いになっていますが、手付金は「売買代金の一部」ではなく「担保のようなお金」という位置づけとなります。
これは、実際にトラブルになった場合に法的解釈として重要となる場合があります。

とりあえず、手付金は「売買代金の一部」ではないという事を必ずおぼえておくようにしましょう。

続いて、具体的な手付金が絡む具体的なトラブルをご紹介していきます。

1-1. 買主に契約解除されてしまう

マンション売買では売買契約が成立したあと、引き渡しまでに2カ月程度の期間が空く取り引きが多くなっています。
理由は、ほとんどの買主は住宅ローンを組むため、その審査待ちを考慮する必要があるからです。

そして、この売買契約から引き渡しまでの間に、買主によって契約が解除されてしまうことがあります。何か重大な理由もあれば、もっと良い物件を見つけたからという理由の時もあります。

売買契約が成立しているのに契約解除されることなんてあるのだろうか、と疑問に思うかもしれません。しかし、残念ながらあります。

これは民法によって定められている「手付解除」という、買主の正当な権利なのです。

買主は「手付金」を放棄することで、売主の同意を得ずに契約を破棄することができます。
例えば、100万円を手付金として渡していた場合、その100万円を放棄する事で契約を解除できます。

また、買主が一方的に契約を破棄できるのと同様に、売主も自分の都合によって「売らない」と契約を破棄できます。

それを「手付倍返し」といい、買主から受け取った手付金の倍額を買主に対して支払うことで契約解除ができます。
例えば、100万円を手付金として受け取っていた場合、売主に対して200万円を支払うことで契約を解除できます。

もし買主から「手付解除」を言い渡された場合、売主は手付金を得る事ができます。しかし、新たに買主を探さなくてはいけません。
売却を急いでいる売主であれば、その
そのため、マンションを売却する場合は、売買契約を結んだからと言って安心してはいけません。あくまでも、引き渡しと代金支払いが行われて、そこで売買完了です。

あらかじめ契約が白紙に戻る可能性があると理解して売却にのぞみましょう。そして、もし手付解除をされてしまったという場合は、すぐに媒介契約を結んでいる不動産屋と再度相談し、すぐに新たな買主を見つけるために動きましょう。

1-1-1. 対策

買主による契約解除への対策としては、一つは手付金の金額設定を高くするというものです。
手付金を高く設定することで、キャンセルしたときのペナルティが重くなり、安易な気持ちでキャンセルしにくくなります。

例えば売買契約を結んだあと、買主がもっとよさそうな物件を見つけた時、払っている手付金が100万円であれば安易にキャンセルはできません。しかし、5万円であれば「手付金の5万円を破棄してでも新しい物件を選んだ方がいいかも」と思われた時点でキャンセルされてしまいます。

不動産業者へのアンケートでは、不動産価格の5~10%の手付金額にしている業者は75.1%となっています。89.9%の業者が10%以下に設定しています。
例えば相手が「手付金を10万円にしてください」と言われた時、譲歩することも大切ですが、その分キャンセルされるリスクも増えます。そのため、手付金は安くしすぎないというのが大切です。

ただし、手付金が高すぎると買主が万が一のリスクを考えて、契約の申し込みをしなくなってしまう危険もあるので、仲介の不動産業者としっかりと話し合い、適切な手付金を決めていくようにしましょう。。

もう一つの対策は、手付解除期日をできるだけ短くするという方法です。

売買契約を締結する際に、基本的に手付解除期日というものを定めます。これは「売買契約の手付解除ができるのはいついつまで」と決めるためのものです。
一般的に売買契約日から30日と定められることが多くなっています。

期日を過ぎてからは解約することはできません。
もしそれでも解約する場合は場合は、違約金を請求することとなります。
手付金は売買物件の5~10%が相場ですが、違約金は売買物件の20%の値段が相場です。
つまり、手付解除期日を過ぎてから契約を解除しようとすると、そのペナルティは各段に大きくなります。

また、この期日をできるだけ短くすることで、万が一、手付解除期日ギリギリに手付解除を申し出たとしても、売買契約締結後の待ち期間という損害を小さくすることができます。

なお、手付解除期日を明確に定めておかないと、手付金は大きなトラブルとなる危険があります。

基本的に手付解除ができるタイミングは民法によって
「買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。」
と定められています。

つまり「履行の着手」がされていると認められる場合は「手付解除」ができなくなるのです。
この「履行の着手」とは、例えば「所有権を売主から買主に移転した」という場合や「売買代金の一部をすでに支払っている」という場合などが当てはまります。

不動産適正取引推進機構-REITO判例検索システム参照
http://www.retio.or.jp/case_search/search_result.php?id=18

ここで重要なのが「売買代金の一部をすでに支払っている」という部分ですが、上記したように「手付金」は売買代金の一部ではありません。これを売買代金の一部と勘違いしてしまうと、トラブルが拡大してしまうこともあるのでしっかりと覚えておきましょう。

ただ、あらかじめ手付解除期日を定め、期日以降は手付解除ができないとし、期日以降の契約解除の場合は損害賠償請求をできると決めておくことで、「履行の着手」などを争点に裁判沙汰になる、などの無用なトラブルの拡大を防ぐことが可能になります。

1-2. 買主がローンの審査に落ちてしまう

売主または買主の意思によって契約を破棄する場合と、両者とも取り引きの意思があるのにそれが叶わない場合があります。

それが「買主の住宅ローンの審査が通らない」というトラブルです。

買主の購入の意思が固く、住宅ローンの事前審査も通ったから一安心と思っていたら、本審査で通らずにローンが組めなくなるという事があります。

このように住宅ローンの審査が通らなかった場合、通常は売買契約が解除されます。

一見、買主側の都合による解除に思えるので、売主は手付金を受け取ることができる、と考えるかもしれません。

しかし、一般的に住宅ローンを組んで売買契約を結ぶときは「ローン特約」というものを契約にもりこみます。
これは、「もし買主の住宅ローンの審査が通らなかった場合、契約を無条件で解約できる」という特約です。このローン特約によって契約解除が行われた場合、売主は手付金を買主に対して返還する必要があります。

つまり、売主側からすると買主と契約を結び、住宅ローンの審査の間待たされたうえ、契約を解除され、さらに手付金を受け取ることもできないということです。

せっかく結んだ契約が解除されるのは納得はできるものではないですし、特に売り急いでいる場合は不満な気持ちも抱いてしまうでしょう。
しかし、この場合は手付解除と違い、買主側も買いたかったのに断念させられ、とても残念な気持ちになっています。

そのことを理解し、ローン特約によって契約が解除された場合はすぐに気持ちを切り替えて、早急に不動産屋と打合せて新たな買主を探すことが大切です。

1-2-1. 対策

売主という立場から、買主の住宅ローンが通るか通らないかということについては知りようがありません。
そのため、直接的な解決方法はないと言えます。

気を付けておくべきこととしては、

  • 契約時にローン特約の期日を明確に設定しておく。
  • ローン特約によって手付金の返還が必要になるかもしれないので、手付金は絶対に使わずにそのまま残しておく。
  • 買主が住宅ローンの審査に落ちるという可能性を想定し、万が一審査落ちが発覚した場合はすぐに気持ちを切り替え、早急に不動産屋と打合せをして新しい買主を探す。

ということです。

2. 売却後のトラブル事例

続いてマンション売却後によくあるトラブルについて説明していきます。

マンション売買では引き渡しと決済が終わってからも、安心はできません。
その理由は「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」があるからです。

「契約不適合責任」とは2020年4月1日に施行の改正民法の言葉であり、改正前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものです。

「契約不適合責任」と文言が変わるのと同時に定義も変わっていますが、簡単に説明すると「買主と交わした契約内容に書かれていない欠陥があった場合、売主は責任を負わなくてはいけない」という決まりです。

例えば、給湯器がを正常に使えるとして売却したのに、いざ買主が実際に住んでみたら給湯器が壊れていた、という場合は買主が責任を負わなくてはいけません。

宅地建物取引業法施行状況調査 (平成29年度)の情報によると、売却後のトラブルで大きな割合を示しているのは「重要事項の説明等」が4割近くとなっています。
これは「購入するうえで確認していた情報と異なっている説明がされていた」ということが原因でトラブルとなったという事です。

つまり、この「契約不適合責任」に関係するトラブルが多いと言えます。

では、具体的にどのようなことが「契約不適合」とされ、トラブルへと発展していくのか解説していきます。

2-1. 設備などの欠陥によるトラブル

マンションの引き渡し完了後、特にクレームとなりやすいのは設備関係です。

例えば、引き渡し後に給湯器の故障が発覚した場合や、排水管が壊れており正常に排水されない事が発覚した場合、引き渡し時にエアコンは置いていくと言っていたのに撤去されている、といったものがあげられます。

売主がその欠陥に気付いていない場合や、契約締結後から引き渡しの間に故障してしまったという場合もあてはまります。

こういった欠陥に買主が気付いた場合「契約不適合責任」の期間内であれば、売主は不具合を直す、または買主が直すのにかかった費用を負担する必要があります。

なお、「契約不適合責任」は、民法で引き渡しから10年、欠陥を発見してから1年以内であれば、買主は売主に対して契約不適合責任を追及する事ができるとされています。

もし「契約不適合責任」を果たす事を渋ってしまうと、場合によっては買主が売主に対して不信感をいだき、強硬な姿勢となり大きなトラブルへ発展する危険もあります。

そこで「契約不適合責任」というリスクを極力回避するために売主ができる事を、次で説明していきます。

2-1-1. 対策

まずは、知っている欠陥があれば、全て正直に伝えるという事が重要です。

小さな欠陥から、昔に修繕してすっかり忘れてしまっているような欠陥など、細かいところまで思い出して伝えるようにしましょう。

契約時には「付帯設備表」と「告知書」という書類を作成します。これは、備え付けの設備や物件自体の欠陥や不具合について記載する書類です。

この書類に記載された内容に買主が納得したうえで、マンションの売買契約は成立します。

例えば、引き渡し後に買主から「クーラーが付いていると思ったら撤去されていた。クーラーの設置代金を負担してください」と言われても、付帯設備表に「エアコンは撤去する」という旨を明記し、説明してあった場合、売主は「契約不適合責任」を負う必要はなくなります。

つまり、事前に欠陥を伝えておくことができれば、「契約不適合責任」を負わずに済むのです。

また、「契約不適合責任の免責」を契約内容に盛り込む事も重要です。

上記したように、民法では10年間の責任を負うという旨の記載がありますが、これは任意規定です。任意規定というのは、「契約の当事者間の同意があれば、当事者間で決めたルールを優先する」というものです。

10年間も売ったマンションの責任を取らなくてはいけないというのは、売主からするとあまりに期間が長すぎます。

そこで、「契約不適合責任の免責」を契約に盛り込むことで、買主が責任を負う期間を「引き渡しから3ヵ月」や「6ヵ月」に短くする事が出来ます。「全部免責」という、引き渡し後は一切の責任を負わない、とする事も買主の承諾があれば可能です。

内容をまとめると、事前に説明し、告知書や付帯設備表に明記しておけば、多くのトラブルは回避が可能となります。
また、「契約不適合責任の免責」によって、長期間の責任を負う心配をせずに済みます。

なお、悪意を持って欠陥を隠していた場合は、「契約不適合責任の免責」の特約は無効となります。少しでも高く売らなくてはいけない事情があったとしても、絶対に欠陥は隠さないようにしましょう。

2-2. 眺望や騒音、におい、隣人など外的要因によるトラブル

次に外的要因によるクレームも存在します。

外的要因とは、「隣人に問題がありトラブルとなった」場合や、「ペット可だと聞いていたのに不可だった」、「近所にある工場の音(におい)が家まで届く」、「隣の国有地に建物が立つことがわかった」など、家の設備関係ではなく、外部による問題の事です。

外的要因は、長年住んでいる売主からすると日常となっており、自分からすると当たり前すぎて、つい説明を忘れてしまったり、「このくらいのことであればわざわざ言わなくても内覧時に気付いただろう」などと思って説明を省いてしまい、それが後で問題となってしまうことがあります。

2-2-1. 対策

対策としては、まずは過去に起きた隣人トラブルや、住んでいたて騒音や異臭、ペット関係、ゴミ出しの問題などで何かなかったかを思い出してみましょう。
そして何か思い当たることがあった場合は不動産業者に伝え、それを買主に告知するべきかを判断してもらいましょう。

買主が住み始めたあと、確実に不利益となるような事であれば、告知する義務があります。

また、買主に質問をされた時に、わからない場合はなんとなくで答えてしまわないようにしましょう。

例えば「ペットってOKですか?」と聞かれて「(わからないけど)大丈夫だと思います」と答えてしまったり、「この空き地って何か立つんですか?」と聞かれて「(何も聞いてないし)建たないと思います」と答えて、「ペットNG」であったり「建設予定地」となれば大きな問題となります。

買主に誤解を与えないように、伝えるべきことは確実に伝えましょう。

そして、伝えるべき事柄かどうかを、不動産業者と話し合い決めていきましょう。

2-3. 何かと理由をつけるクレーマー

買主の中には、少しでもお金をかけたくないからと、何かとクレームをつけてきて売主に負担させようとする買主もいます。

例えば「想像以上にリフォーム費用がかかったから、売主も負担するべきだ」という内容であったり、契約不適合責任の特約ですでに責任を負う義務がなくなっているのに「給湯器が壊れたから修理するか、修理費用を払え」といったクレームをつけられることがあります。

クレーマーの場合は誰に責任があろうと、できるだけの費用を売主に負担させようとするものです。
まともに話し合っても分かり合う事はできないような場合が多いので、真摯に対応しようとすればするほど心労と負担が増えていくことになります。

2-3-1. 対策

クレームを受けた場合は、まずは不動産業者に相談してみましょう。
そしてそのクレームの内容と売買契約書の内容と照らし合わせ、売主が責任を負うべきことなのかを確認してください。

注意するべきことは、絶対に自力で解決しようとはしないようにしましょう。
また、せっかく買ってくれたのだから、それくらいはサービスしようと安易に考えないことも大切です。

そして売主に責任がないと判断された時は、毅然とした態度で断りましょう。
クレーマーの場合は言いがかりでしかないので、まともに取り合わないという事が大切です。

間に第三者である不動産業者を挟み、話し合いを行った場合は内容を書面に残しておきましょう。そして、クレームがしつこいようであれば法的に対処するという旨を伝えると、クレーマーは大抵がおとなしくなります。

買主から直接クレームを受けないようにするために、必要性がない限りは直接の連絡先を教えないようにしましょう。
クレーマーは業者を通すと話が通りにくくなるからと、売主と直接連絡を取ってくる場合があります。

また、引っ越し先の住所などもわからないようにした方がいいでしょう。

実際にクレーマーがやって来ないとしても、もしかしたら来るのではないかと考え、不安になってしまう可能性があります。

決済時にすでに住民票移動をしている場合、登記簿に新住所が載ってしまいます。新居の住所がバレたくない場合は、住民票を移動するタイミングをあわせる必要があるので注意が必要です。

また、上記しましたが「告知書」や「付帯設備表」を正確に作成しておくことができれば、買主のクレームに対して売主が責任を負う範囲が明確となり、自身を持って断る事ができます。
事前に告知するべきことは、もれなく伝えておくことが何よりの対策となります。

3. 不動産業者とのトラブル

トラブルには買主と売主の間で起きるトラブルの他にも、不動産業者とトラブルになる事があります。
売主の確認忘れや勘違いが理由の場合もありますが、不動産業者に問題があるという場合もあります。こちらを読んでどんなトラブルがあるかを事前に把握し、問題のある不動産業者にひっかからないようにしましょう。

3-1. 売買の契約解除時に広告費を請求をされた

通常、マンションの売買が成立した場合、仲介の契約を結んでした不動産業者に仲介手数料を支払います。
この時支払う仲介手数料には広告費も含まれているため、不動産業者は売主に対して別途広告費を請求することはできません。

それに対し、仲介業者を変えたり、事情があって売却を中止にするなどで、契約を解除する際に、広告費用を請求されてトラブルになるケースがあります。

3-1-1. 対策

原則として、仲介の契約を解除する際は、売主は広告費を支払う必要がありません。

しかし、2つのケースの場合、支払いが必要になる事があります。

ひとつは、売主が「特別に依頼した広告」の場合、実費で支払う必要があります。
つまり「広告費を払うからこの広告を出してほしい」と売主から依頼した場合は、業者は広告費の請求ができます。

もう一つは、業者に売却依頼をする際は契約を結び、契約期間(一般的に3か月)を定めるのが一般的ですが、その期間内に契約を解除する場合、不動産業者は売主に対して広告費を請求することができます。

契約解除時に広告費を請求する業者は多くありませんが、契約を解除されると不動産業者は完全に赤字となってしまいます。そのため、解除する理由をしっかりと伝えて、円満に契約を解除するように心がけることが大切です。

また、契約する際に広告費に関する取り決めを不動産業者に確認しておくことで、どの場合に別途費用を請求されるのかを事前に把握しておき「まさかお金がかかるとは思わなかった」と、ならないようにしておくようにしましょう。

3-2. いつまでたっても売れない

いざ売却を初めてみたものの、一向に売れる気配がないということもあり得ます。
その場合いくつかの原因が考えられますが、それぞれ詳しく解説していきます。

3-2-1. 売主が理想とする値段設定が高すぎる

ひとつは「値段設定が高すぎる」という事です。

不動産には相場というものがあります。「相場よりも高い=割高な物件」は売れ残ってしまいます。

もし、似た条件の物件を2つ並べた場合、普通は安い方の物件を選びますよね。

今まで住んでいて愛着がある場合、自分の物件を他の人よりも価値の高いものだと感じてしまいがちです。
また、ローンの残債や新居のローンの関係からできるだけ高く売らないといけない、という理由がある方もいると思います。

しかし、相場から解離した値段で売り出し続ければいつまでたっても売れないでしょう。
そして、常に物件情報を確認している不動産業者からは、売れ残っている”何かワケのある物件”だと思われてしまう危険もあります。
また、時間が経てばたつほど、物件自体の資産価値も下がっていきます。

3-2-2. 不動産業者の能力が足りていない

次に、不動産屋の広告が全く機能していない可能性があります。

単純に不動産業者の能力が低く、魅力的な広告を作成する能力が足りていなかったり、そもそも広告を展開するスペースが少なかったりする可能性があります。

そもそも、物件の値段設定が間違っていて高すぎて売れない、という可能性もあります。

この場合は高すぎて売れないだけではなく、安く売り出してしまい売主が大損してしまう危険もあります。
こういった能力のない不動産業者の回避方法は下でご説明します。

3-2-3. 不動産業者に意図的にお客を排除されている

最悪の場合、不動産業者が意図的に購入希望者を排除している可能性もあります。

これを専門用語で「囲い込み」と言います。

なぜ意図的に購入希望者を排除して、不動産業者になんのメリットがあるのかを簡単に説明します。

不動産業者は基本的に売買の仲介手数料をもらって利益としています。
売主の仲介業者は売買が成約した場合、売主から仲介手数料をもらいます。
また、買主側の仲介業者も売買が成約した場合、買主から仲介手数料をもらいます。

これを「片手仲介」と言い、売主側の業者はできるだけ高く売るために頑張り、
買主側の業者は買主のためにできるだけ安く購入できるように頑張ります。

これが本来の推奨されるべき取引方法となります。

それに対して「囲い込み」をする不動産業者は「両手仲介」という取引方法を狙っています。

「両手仲介」とは1つの不動産業者が売主と買主の仲介を行うことを言います。
両手仲介をした場合、不動産業者は買主と売主の両者から手数料を得る事が出来ます。

つまり1件の取引で2倍の仲介手数料を手にすることができるのです。

問題は「両手仲介」は利益相反行為と言えます。

通常、売主はできるだけ高く売りたいと思います。
反対に、買主はできるだけ安く買いたいと思います。

両者の希望をこの不動産業者は同時に叶えることはできません。
高く売ったら買主は損をしてしまいますし、安く売れば売主が損をしてしまいます。
結局、「両手仲介」をする業者は、両者の落としどころを探すことになります。

例えば、売主は3000万円で売りたいと思っており、買主は2700万円で買いたいと考えていた場合。
この時、不動産業者は2850万円でお互いに納得するように頑張って説得します。

「片手仲介」であれば売主の仲介業者は3000万円で売れるように頑張ります。
買主が3000万円では買えないと言った場合は、他にお客を探すという選択をします。

しかし、両手仲介だと売主が2850万円でも売ってもいいと言ってくれるように頑張るのです。

つまり、売主にも買主にもメリットがないのが「両手仲介」なのです。

それだけではなく両手仲介のために「囲い込み」が行われるというのは、大きな機会損失となってしまいます。

他の不動産業者が「あなたと契約した売主さんの物件を見たいというお客さんがいます」と連絡してきても、「もうすでに契約がまとまりそうです」などと嘘をついて、意図的に他の業者からの紹介を受け付けないのです。

つまり、売りたい物件を「囲い込み」されるということは、「早く売れるチャンス」と「高く売れるチャンス」を同時に逃してしまうということになります。

※囲い込みについてはこちらでも詳しく解説しています。
マンション売却では両手仲介目的の囲い込みに注意!悪質な手口の見破り方から対処法まで網羅

3-3. 対策

対策としては、能力が高く信頼できる不動産業者を見つけることが1番大切です。

売主は専門的な知識を持っていない場合がほとんどですので、信頼できる不動産業者を頼ることが売却成功に最も近づく方法です。

ただ、マンション売却が得意な知り合いの不動産業者がいないという方や、どの業者が能力が高くて信頼できるのかなんてわからないという方もいるかと思います。

そういった方の場合は、どうにかして「信頼できる不動産業者」を見つけるしかありません。

その方法は、決して難しくありません。

「信頼できる不動産業者」を見つけるには、複数の不動産業者に査定をしてもらい、不動産業者の査定額と査定根拠を比較し、そして実際に営業マンと話して見極めればいいのです。

絶対にやってはいけない事は、調べて見つけた不動産業者に相談し、他の不動産業者に話を聞かないままその不動産業者に売却のお願いをしてしまう事です。

1社しか見ていないと、その業者が「信頼できる不動産業者」なのか、それとも「悪徳不動産業者」なのか、それとも「真面目だけど能力の低い不動産業者」なのか、判断する事はとても難しいです。

でも、同時に複数社の査定額や、査定根拠、営業マンの対応を見る事で、「あの業者はよかった」「あの業者は怪しい」「あの業者は頼りなさそう」など判断できるようになります。

はじめてのマンション売却の場合は、マンション専用の不動産一括査定サイト(マンションナビなど)で査定依頼をし、査定を受けることをおすすめします。

マンションに特化した不動産業者が集まっており、あなたが入力した内容(地域や間取り)に沿って、有力な不動産業者が複数ピックアップされ、無料でかんたんに査定を受ける事ができます。

そこで集めた査定結果を比較検討をするだけで、初めてのマンション売却でも、プロから見たリアルな相場や最高査定額など理解することができます。

また、査定根拠と営業マンの対応方法を見比べることで、どの業者が丁寧で、どの営業マンが信頼できそうかを比較して選ぶことができます。

また、こういった不動産一括査定サービスの場合、第三者機関が運営しているサービスなので、クレームのあるような不動産業者はすぐに契約解除されています。

そのため、集まっている不動産業者の質は高めであることが期待できます。

特に初めてという方の場合は、こういったサービスを活用して「信頼できる不動産業者」を見つけ出せるようにしましょう。

4. トラブルに巻き込まれた時の連絡先

万が一買主とトラブルに発展してしまいそうな場合、トラブルに発展してしまった場合は、公的機関への相談をしてみることをおすすめします。

以下に不動産にかかわるトラブルを相談できる機関のリンクをまとめました。

・消費者ホットライン(消費生活センター、国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/map/index.html

・法テラス(日本司法支援センター)
https://www.houterasu.or.jp/

・住まいダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)
http://www.chord.or.jp/consult_window/index.html

・司法書士総合相談センター(日本司法書士会連合会)
https://www.shiho-shoshi.or.jp/

話がややこしくなってしまいそうな時は自分個人だけ、または売買契約の仲介を依頼した不動産業者だけで解決しようとせずに、トラブル解決のプロに頼るようにしましょう。

5. まとめ

マンションの売却には様々なトラブルが潜んでいます。

しかし、売却後に発生するトラブルの多くは、作成する書類がしっかりと作られており、ちゃんと買主に伝えておくことで、大きなトラブルへと発展しないようなことばかりです。

この書類を作成するうえで大切なことは、マンションの取り引きが得意で、慣れている「信頼できる不動産業者」を見つけることが最も重要です。

そういった経験が豊富な不動産業者であれば、クレームとなりやすい箇所も把握している場合が多いです。
また、万が一クレームが発生してしまったとしても、売主に責任を負わさずに済ませることができたり、大事にならずに穏便に処理する能力が高いことが期待できます。

クレームになるかならないかは、不動産業者の能力にも依存するところがあります。
優秀な不動産業者を探す手間を惜しまず、無用なトラブルに巻き込まれないマンション売却をしていきましょう。

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