マンション売却で「売出価格」を決めるのはとても重要です。
この売出価格によって、最終的に売れる価格や、売れるまでの時間が大きく変わってきます。
そこで、この記事では売出価格の決め方や、決める上での注意点について解説していきます。
売出価格の設定に失敗すれば、マンション売却の出だしでつまづくことと同じです。
最低限必要な知識をしっかりと理解しておき、実際に売却する際に失敗しないように役立ててください。
1. マンション売却における売り出し価格とは
売出価格というのは「マンションを売り出す際に一番最初に設定する価格」のことをいいます。
まずは、売出価格でマンションを市場に出し、様子を見ながら状況に応じて価格を変更していきます。
ここで注意しておきたいことは、不動産売買で混同されがちな「価格」がいくつかあるということです。
ここで一度違いを整理してみましょう。
査定額 | 不動産業者の仲介による売却で「市場に出せばこれくらいで売れるであろう」という予想価格 |
売出価格 | 査定額をベースに売主の希望と業者のアドバイスをすり合わせて決める売り出す価格 |
成約価格 | 売主と買主の合意のもと最終的に決まった取引価格。売却価格や売値ともいう |
どのようなタイミングで出てくる価格なのかをかんたんに説明すると
- 不動産業者から査定を受けて査定額を知る(無料査定はこちら)
- 業者を決めたら媒介契約(仲介の依頼をするための契約)をする
- 契約を結んだ業者と話し合い売出価格を決めて市場に出す
- 買主が現れたら価格やタイミングなどの交渉を経て成約価格が決まる
と言ったような流れとなります。
なお、これは仲介によるマンション売却の流れです。
仲介というのは「売主(一般人)と買主(一般人)の取引を不動産業者が仲介する」という取引方法です。
一般的にマンションを売却する場合、この仲介による売却が選ばれます。
それに対して買取という取引方法もあり、こちらは「売主(一般人)から不動産業者が直接マンションを買取る」という取引方法です。
この際に使われる価格のことを「買取価格」と言います。
買取価格 | 不動産業者が直接買取る場合の価格 |
買取業者に依頼した場合、業者は転売によって利益を出さなくてはいけないため、本来売れるはずの価格よりも安くなってしまいます。
一般的に買取の場合だと相場の6割~8割、人気地域だと9割ほどになると言われています。
そのため、特別な事情(早く現金化しなくてはいけない、田舎過ぎて買い手が現れないなど)がない限りは仲介による売却を選び、少しでも高く売れる方法を選びます。
1-1. 注意:売出価格で売れるわけではない
マンション売却では売出価格で売れるとは限りません。
逆に、売出価格よりも安くなる可能性の方が高くなっています。
理由は、しばらく市場に出してみて反応がなければ値下げを行う必要がありますし、購入希望者から値切り交渉を受けることもめずらしくありません。
そもそも、販売戦略として売り出す時点では相場より少し高い価格に設定するケースも少なくありません。
そのため、一般的に売出価格よりも成約価格は低くなってしまうものです。
実際に築年数別に売り出した価格の平均と、実際に成約した平均をグラフにしたものがこちらです。
参考:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」
このように、売出価格でそのまま売れるわけではないということを理解しておきましょう。
2. マンションを売却するための下準備
「マンション売却をする場合はまず不動産業者と契約をして……」と思われる方もいますが、不動産業者を選ぶ前にしておくべきことが2つあります。
- マンションの適正価格を知る
- 住宅ローンの残債を確認する
この2つは、不動産業者と契約をする前に、それも早い段階で必ず確認しておく必要があります。
その理由を解説していきます。
2-1. マンションの適正価格を知る
マンションを売却する場合、適正価格=相場を基準にして価格が決められます。
この相場というものはインターネットを使うことで、ある程度の情報を集めることが可能です。
例えば「レインズ」や「土地総合情報システム」を使って過去の取引情報を検索したり、「地価公示」を使って計算をしてみたり、「不動産ポータルサイト」を参考にする方法があります。
しかし、これらは表示されている価格がアバウトに表示されていたり、不動産市況や売主の状況(売り急いでいたのか、かなりの時間をかけたのか、リフォームしたのかなど)、どんな買主が買ったのかなどが不明というケースがほとんどです。
そのため、どうしても正確さに欠ける数字となってしまいます。
このように自分で調べた数字を鵜呑みにしてしまうと、間違った相場観を持ってしまい判断ミスを起こす可能性があります。
そこで間違った先入観を持たず、なおかつ正しい数字を知る方法はひとつしかありません。
それは不動産業者から査定を受けるという方法です。
複数の不動産業者(最低5社)から査定を受けて、その平均価格を相場として見るという方法がもっとも正確です。
不動産業者から査定を受けると聞くと面倒なイメージがあると思います。
しかし、不動産一括査定サービスなどを活用すれば無料で簡単に査定を受けることができます。
例えば、マンションナビなどでは、机上査定という家に来ることなく専門的な知見からマンションの査定をしてくれる会社も多く、結果はメールや郵送で教えてくれます。
まだ、査定を受けていないという人は、とりあえず試しに査定を受けてみましょう。
査定を受けたからと言って必ずその業者と契約をしなくてはいけないわけではありませんし、必ず売却しなくてはいけないものでもありません。
まずは気軽に査定を受けて、自分のマンションの正しい価値を把握しましょう。
2-2. 住宅ローンの残債を確認する
マンション売却に切っても切り離せないものが住宅ローンの残債です。
すでに完済しているマンションの売却であれば何も問題ありません。
それに対し、現在ローンを返済中という物件であれば、早めにローンの残債を確認しておく必要があります。
なぜなら、オーバーローンになってしまうとマンションを売却することができない可能性が出てくるからです。
オーバーローンとは、マンションを売却したお金でローンを完済しきれない状態の事をいいます。
例えばローンの残債が3000万円なのに対し、マンションの売却価格が2500万円のような状態のことです。
オーバーローンになると、手持ちの現金や預貯金、有価証券や貴金属を現金化するなどして、足りない分を補填できないと基本的に売却できません。
売却できない理由は、債権者(ローンを組んだ金融機関)から許可が下りないからです。
通常、ローンを組んでマンションを購入する場合、マンションに抵当権を設定します。
抵当権とは、あなたがローンの返済を滞らせた時に、強制的にあなたの家を売却して貸したお金を回収できるという権利です。
そして、抵当権を外すにはローンの完済が条件です。
ローン完済の目途が経たない限り債権者は売却の許可を出しません。
つまり、オーバーローンになるとマンションを売りたくても売れないという危険があるのです。
そのため、早めに住宅ローンの残債とマンションの査定額を比較し、オーバーローンとなってしまうのかどうかのチェックが必要です。
ローンの残債を調べる方法は、金融機関から定期的に郵送される「返済予定表」などを確認しましょう。
ネットバンクの場合は、インターネットから確認できる場合が多いです。
3. 売り出し価格を決めるうえでの注意点
マンションの売出価格を決める場合、基本的には業者の査定額をベースに専門家である不動産業者のアドバイスを受けながら決めていきます。
ただし、あなたの置かれている状況や希望が最優先とされるため、業者は間違った価格設定でも望まれたら受け入れざるを得ないという一面もあります。
そこで、自分で価格を設定するうえでどのような点に注意しながら設定するべきかを解説していきます。
3-1. 高すぎる価格で売り出すのは危険
マンションを売却する際、誰でもできるだけ高く売れたら嬉しいですよね。
だからと言って、明らかに相場からかけ離れて高い価格設定にすると、逆にデメリットとなってしまう可能性があります。
デメリットの一つは、売却までに時間がかかってしまうということです。
売却期限が決まっているケースだと、期限が近づいて焦って必要以上の値下げをせざるを得なくなる危険があります。
また、空き家にして売却する場合は、売れるまでの間も管理費や税金、ローンの利子など無駄な出費が発生してしまいます。
もう一つは長く売れ残っていると、買い手から「何か訳ありだからで売れ残っているのでは?」と思われたり「ずっと売れ残ってるし人気がない物件なんだろう。安くなるのを纏う」と思われ、様子見されてしまうのです。
その結果、徐々に値下げをしても様子見をされてしまい、最終的には相場よりも安くなってしまうというケースもあります。
人は愛着があると本来の価値よりも高く感じてしまうものです。
売却に出すときは思っていた価格よりも査定額が低くても、その結果を真摯にうけとめて売出価格に反映させることが大切です。
3-2. 値引き交渉を前提に設定する
不動産売買では、購入希望者が現れると交渉が入るケースは少なくありません。
購入希望者からの交渉は基本的に「値切り」か「引渡し時期」に関するもので、多くは「値切り」の方です。
値切り交渉をされた時にかたくなに拒めば、購入者の購入意欲にポジティブな影響は与えられません。
逆に、値下げに応じることで、購入者の「買う理由」が増えて、より成約の可能性を上げることができます。
こういった購買心理も理解しておき、値下げ交渉に応じる心づもりをしておきましょう。
また、値下げに応じることのできる余裕をもった価格設定にしておくことも大切です。
例えば、4580万円といった価格設定のように80万円という端数を作り、値切りやすくするという方法があります。
また、80万円値切るのではなく、代わりに50万円までならリフォーム費用を負担するという話にしてお得感を出し、実質50万円の値切りに抑えるという方法などもあります。
3-3. 〇〇万円までなら即決するラインを決めておく
マンション売却では「本当にこの購入希望者に売ってもいいのか」と悩むケースがあります。
それは、例えば5000万円で売りに出したマンションに「4900万円なら買いたいというお客さんがが現れた場合などです。
この時「もう少し待てば5000万円で買いたいというお客さんが現れるのでは?」と考えると、なかなか即決できなくなります。
待っていれば、5000万円で購入したいというお客さんが現れる可能性もあります。
ただし、5000万円のお客を待つために断ったり、返事を先延ばしにした結果、そのお客さんは別の物件を購入。そして以降購入希望者が現れなくなる。という可能性もあります。
結果として4700万円でようやく買い手がつき、「あの時4900万円で即決していればよかった……」と後悔してしまうというケースもあります。
マンション売却はタイミングが命の取引です。
今のお客さんを逃してしまうと、それ以降同じくらい好条件のお客さんは現れない可能性も十分あります。
そのため、「〇〇万円までであれば売出価格を下回っていても即決する」という一つのラインを決めておき、条件を満たす購入希望者が現れた時に迷わずに手放せるようにしておくことが大切です。
3-4. 売却できる最低価格を決めておく
マンションの売出価格を「売却希望価格」とするならば、この価格以下では売れないという「売却可能価格」を明確にしておくことが大切です。
基準となるのはローンの残債です。
例えばローンの残債3000万円に対して、マンションを2800万円で売るとなると200万円足りなくなってしまいます。
この時、手持ちの資金で残額の200万円を補填し、なおかつ仲介手数料などを支払うことができれば売却可能です。
つまり、売却可能価格は2800万円となります。
しかし、手持ちの資金がない場合は残債と同じ金額以上で、なおかつ仲介手数料などを考慮すると3100万円じゃないと売却できないことになります。
つまり、この場合の売却可能額は3100万円ということになります。
この時、マンションの相場が2900万円だった場合、前者(売却可能価格が2800万円)の売主は、難しくない売却になるでしょう。
それに対して、後者(売却可能価格が3100万円)の売主は、かなり売却に苦戦することになるでしょう。
そのため、マンションの売却を決める前にローンの残債を確認し、マンションの査定を受け、いくら以下ではマンションを売却できないかを確認しておきましょう。
もし、残債以下でしか売れる見込みがなく、手持ちの資金で補填できない場合は「売却することをやめる」という選択も必要です。
4. 早く売るか・高く売るかで売出価格は変わる
マンションを売却する場合、誰でもできるだけ高く売りたいと考えますよね。
しかし、売主ができるだけ高く売りたいと考える反面、買主はできるだけ安く買いたいと考えます。
そのため、高く売り出せば売り出すほど買い手は付きづらく、安く売り出すほど買い手が付きやすくなります。
そのため、あなたが「早く売りたい」のか「高く売りたい」のかによって、売出価格を変える必要が出てきます。
4-1. できるだけ高く売りたい場合
マンションをできるだけ高く売りたいという場合は、相場よりも高めの価格を設定して売出し、段階的に価格を下げていくという方法がとられます。
高い金額からスタートすることで、少しでも高い時点で買い手を見つけるための販売戦略です。
ただし、この方法では売却までに時間がかかる傾向が強いため、時間的余裕を持つ必要があるでしょう。
また、やみくもに高い価格に設定すると、そもそも見向きもされない可能性があります。
そのため、不動産業者としっかりと相談をしたうえで、買い手がつく可能性が0ではないギリギリの価格から始めるようにしましょう。
もし空き家にして売却するような場合は、その間の固定資産税や管理費、ローンの利子など維持にお金がかかっていることを念頭におく必要があります。
少し安くして早く売るべきか、維持費をかけてでも高く買うお客を待つのかについては、十分に検討するようにしましょう。
4-2. できるだけ早く売りたい場合
例えば相続による相続税の納付期限や、住み替えによる売却、転勤による売却のような、手放したい期限が決まっている売却もあるでしょう。
売らなくてはいけない期限が近い場合は、あまり強気な価格設定はおすすめしません。
というのも、そもそも査定額というのは「3カ月以内には売れるだろう」ということを前提につけられた価格です。
そのため、査定額以上の価格で売ろうと思えば、それ以上の時間がかかってしまう可能性があります。
そのため、売却までの期間が3カ月もない場合は、査定額以上での売却にはあまり期待せず、同程度の価格で売り出した方がいいでしょう。
4-2-1. 場合によっては買取も検討する
もし、1日でも早く売却したいという状況にいる人は、業者買取を使うという方法も検討しましょう。
上記しましたが、買取で売却する場合は相場の6割~8割ほどの値段になってしまうと言われています。
しかし、早ければ現金化までに2週間ほどでできるというメリットがあります。
平均で3カ月かかる仲介による売却よりも、かなりスピーディに現金化が可能です。
また、仲介による売却では契約不適合責任という、売った後に不具合が出たら売主が責任をとるという契約を結びますが、買取では契約不適合責任がないというメリットもあります。
そのため、今すぐお金を作らなくてはいけない人や、買い手がなかなか見つからない地域(人口減少が加速している、間取りが地域に合っていない)などの場合は買取の方がいいというケースもあります。
5. マンション売却では不動産業者選びが重要
ここまで、マンションの売出価格に関する注意点などを解説してきました。
マンション売却を進めていくうえで、売却知識を得ておくことは売却に失敗しないためには大切です。
しかし、何よりも重要なことは信頼できる不動産業者に売却を依頼するということです。
ただ、マンションの売却に慣れていない場合は、どのようにして信頼できる不動産業者を見つけたらいいかわからない人も多いでしょう。
そこで、素人でもできる「信頼できる不動産業者選び」の方法をお伝えします。
5-1. 不動産業者の比較検討をする
もっとも簡単で、最も正確な方法は複数の不動産業者を比較するという方法です。
- どの会社の査定額が高く、どこが安いのか
- 査定額に至った根拠が明確か、不明確か
- 営業マンの対応は丁寧だったか、雑だったか
これらを比較します
もし1社の不動産業者からしか話を聞かなければ「その業者の査定額は正しいのか」「対応は丁寧なのか」の判断はとても難しいです。
なんとなく「不動産業者ってこんな感じなのかな?」と受け入れてしまうのです。
それに対し、例えば5社を比較したらどうでしょうか?
まずは、5社から机上査定(家にはこない簡単な査定方法)を受けたとします。
するとA社5000万円、B社4900万円、C社4800万円、D社4700万円、E社4500万円といったようにばらついた結果が届くことになります。
明確にA社が高く、E社が安いと見分けがつくようになります。
この時点ではA社が魅力的ですよね。
ただ、これだけでA社に絞らず、3社程度から訪問査定を受けてみます。
今回は査定額の高かった、A社、B社、C社から訪問査定を受けてみます。
すると、査定額が一番高かったA社の担当者の対応はあまりにも酷く、B社がとても丁寧で好感が持て、C社はあまりパッとしなかった、といった違いが見えてきたりします。
その結果、「A社は対応が酷く契約を結んでもいい仕事をしてくれるか不安がある。だから、査定額が2番目に高く営業マンにも好感が持てたB社に依頼しよう。」と決めることができます。
自分の主観だけではなく、業者同士の様子を比較検討することで、業者の審美眼を磨くことができ、変な業者にひっかかることを避けることができるようになります。
5-2. 最初の机上査定は不動産一括査定サービスを活用する
ただ、そこまで多くの不動産業者を知らないという方も少なくないでしょう。
その場合はマンションナビのような不動産一括査定サービスを活用してみましょう。
マンション売却が得意な業者が集まっており、ネットから簡単に査定依頼をすることができます。
また、マンションナビによってクレームとなるような悪質な業者は排除されているため、街の不動産屋に突然飛び込むよりも安心して査定を受けてみることもできます。
「気になる業者は2社いるんだけど……」という場合は、一括査定を使いつつ、その気になる業者からも査定を受けてみるという方法も使えます。
ぜひ、マンションの適正価格を知るという意味でも、業者を比較するという意味でも、一度不動産一括査定サービスを活用してみるといいでしょう。