マンション売却において内覧は絶対に避けて通ることができません。
中古マンションを図面と写真だけで申し込む人はまずいないですからね。
当然ですが、内覧で悪い印象を与えてしまえば、成約には至りません。
内覧はまさにマンション売却において最大の山場と言えます。
逆もまた然り。
購入検討者は、図面や写真を見たうえで、それなりに買う気があるから内覧に来てくれるわけです。
内覧で好印象を与えてあげれば、一気に購入へと傾きます。
内覧を成功させるためのポイントはいくつかありますが、一番大事なことはやはり部屋を綺麗に見せること。
汚い部屋を購入したい人なんてこの世に一人もいませんよね。
そして部屋を綺麗にすると言っても色々な方法がります。
その中でも今回は特にハウスクリーニングに焦点を当ててみたいと思います。
1. ハウスクリーニングとリフォームの違い
筆者がマンションの売却相談を受けるなかで、ハウスクリーニングとリフォームを混同している方がたまにいらっしゃいます。
ここで一度、確認しておきましょう。
1-1. ハウスクリーニング
あくまで掃除です。
技術を持ったプロが、特別な道具や洗剤を使って、素人では行き届かない細かい部分まで徹底的に掃除することです。
1-2. リフォーム
交換です。
壁紙や床などの表面的なものだけを交換するのを表装リフォームなどと呼び、水回り(バス、トイレ、キッチン)の交換は完全にリフォームになります。
ちなみに、ほぼすべての部品を交換するのがフルリフォームです。
2. マンション売却前にハウスクリーニングやリフォームは必要?
さて、本題に入っていきましょう。
マンションを売却するうえで、ハウスクリーニングやリフォームをする必要があるのか見ていきましょう。
2-1. リフォームをする必要はナシ
結論から言うと、リフォームに関してはする必要はありません。
3LDK(70平米前後)のマンションで室内全てを壁紙交換すると40~50万円。
フローリングはそれ以上で60~70万円が相場です。
つまり、表装リフォームだけで100~120万円くらいの出費になってしまいます。
もちろん、リフォームで見た目の印象は良くなります。
しかし、これだけの金額を掛けて、それ以上にメリットがあるかと言えば答えは「NO!」です。
なぜなのかは、中古マンションを購入したい人の気持ちを考えれば分ります。
それは価格を安く抑えたいからですよね。
仮に、リフォームしてあるか、していないか以外の条件は全く同じ中古マンションがあったとします。
リフォームしてあるマンションの室内は、新品同様のピカピカですが3000万円。
リフォームしていないマンションは、築年数相応の室内ですが2800万円。
どちらを選ぶでしょうか?
中古マンションが欲しいと考えている人は、間違いなくリフォームしていない2800万円のマンションです。
中古マンションの購入を検討している方は、初めから新品同様の部屋を求めているわけではありませんから、築年数相応の室内状況であれば安い方を選びます。
仮に、再世からリフォームを考えている購入者だとしても、リフォームしてないマンションを選ぶでしょう。
なぜなら、2800万円で買って、200万円掛けて完全に自分好みの部屋にできるからです。
初めから「中古マンションを安く買ってリフォームをしたい!」と考えている購入者からすれば、オーナの勝手なリフォームは余計なお世話にすらなってしまいます。
このような理由からマンション売却前にリフォームをする必要はありません。
ただ、ピッカピッカの新品同様にする必要はなくても、汚い家に住みたいわけではありません。
そこで有効に使ってほしいのがハウスクリーニングです。
2-2. ハウスクリーニングは有効に使いましょう
リフォームのように数百万もの大きな金額を払って新品同様にする必要はありませんが、綺麗に見えるに越したことはありません。
そこで活用したいのがハウスクリーニングです。
数万円程度のハウスクリーニングでも見違えるように綺麗になります。
もちろん、マンション売却前に必ずハウスクリーニングをしなければいけない義務がある訳ではありません。
購入したばかりのマンションであるとか、あなたが普段から徹底的に掃除しているようであれば無理にハウスクリーニングを入れなくても良いでしょう。
しかし、素人ではなかなか落とせない汚れもあります。
普段より少し丁寧に掃除してみて、それでも汚れが気になるようならハウスクリーニングというプロに頼ってしまいましょう。
それではハウスクリーニングについてもっと詳しく説明していきます。
3. ハウスクリーニングするなら絶対に外せない掃除箇所とそれぞれの相場
ハウスクリーニングをすると言っても、築年数相応の室内状態であれば全面的にハウスクリーニングをする必要はありません。
自分で丁寧に掃除して落ちる汚れであれば、わざわざプロに頼む必要はないからです。
プロが掃除しても、自分で掃除しても差がない箇所は自分で掃除する。
素人ではなかなか掃除が難しく差が出やすい箇所はプロに頼む。
これなら出費を抑えつつも、室内全体の印象を格段にアップさせることができます。
(※部屋全体をハウスクリーニングすると10万円以上掛かるのも珍しくありません。)
ということで肝心なハウスクリーニングの必須箇所をと、それぞれの価格相場を確認していきましょう。
3-1. プロにハウスクリーニングをお願いするなら外せないのは水回り
結論から言うと、水回り部分はハウスクリーニングを依頼した方が良いでしょう。
というのも、水回りの汚れは素人ではなかなか落としきれないからです。
・風呂のカビや水垢
・トイレの黄ばみや黒ずみ
・シンクのサビ
・レンジの油汚れ
・換気扇のベトベト
これら水回りを中心とした汚れはクタクタになるまで徹底的に掃除しても落としきれなかったりしますよね。
にも関わらず、普段から水回りをよく使う主婦からは厳しい目線でチェックされます。
マンション購入の主導権を握っていることが多い奥さんに、悪い印象を持たれてしまったら成約は遠のいてしまいます。
「お風呂」「洗面所」「トイレ」「キッチン」「換気扇(レンジフード)」などの水回りはプロのハウスクリーニングに任せて徹底的に綺麗にして貰いましょう。
3-2. 水回り以外は自分で徹底的に掃除すれば十分
逆に、水周り以外の下記に挙げる箇所は、よほど汚れていない限りハウスクリーニングを利用する必要はありません。
自分一人で十分対応可能です。
掃除箇所ごとに、注意するポイントを解説していきます。
内覧希望者が来る前にいつもより丁寧に掃除しておきましょう。
3-2-1. 玄関周辺
玄関前が外廊下の場合は、溝にゴミや落ち葉が溜まっていないかチェックしてください。
また、内覧客が下駄箱を開ける可能性も高いので、ニオイがこもっているようなら開けっぱなして感想させましょう。
3-2-2. リビング・ベッドルーム
居室部分は普段から掃除している方がほとんどだと思うので、特別な掃除をする必要はありません。
ワックスまでかければ上出来です。
また、使わないものは思い切って処分し、スッキリと広い印象を与えましょう。
3-2-3. 窓ガラス・サッシ(レール部分)・網戸
窓は普段さぼりがちですが、綺麗にすれば景色や明るさは驚くほど変わります。
明るい部屋は視覚効果で広く見えるので妥協せずに掃除してください。
3-2-4. バルコニー・ベランダの掃除
ベランダ掃除の前には上下左右の部屋で洗濯物を干していないか確認しましょう。
また、大量の水で一気に掃除したいところですが、防水ではないベランダもあります。
普段掃除しない方は管理規約を一度確認してから掃除してください。
3-2-5. エアコン
エアコンはとにかくニオイです。
住んでいる本人は気にならなくても、他人からすれば気になることもあります。
・家族にタバコを吸う人がいる
・ペットを飼っている
という方はフィルターを丁寧に掃除してください。
※内覧時の掃除ついてはコチラにも書いているので参考にしてみてください。
具体的な掃除方法や道具にも触れてみました。
3-3. ハウスクリーニングの料金はいくら掛かるのか相場をチェック
それでは次に気になるハウスクリーニングの料金相場をチェックしていきます。
それぞれの相場を「平均金額」と「最安金額・最高金額」で表してみました。
(※複数の「不動産サイト」「ハウスクリーニングサイト」「お引越しサイト」を参考にしています。特に参考になったのは不動産情報サイトSUUMOの「ハウスサービス」です。
3-3-1. 水回りをハウスクリーニングした場合の料金相場
・お風呂のハウスクリーニング
平均金額 15,000円
最安金額 8,000円 ~ 最高金額 40,000円
・洗面所のハウスクリーニング
平均金額 10,000円
最安金額 5,000円 ~ 最高金額 45,000円
・トイレのハウスクリーニング
平均金額 9,000円
最安金額 5,000円 ~ 最高金額 25,000円
・キッチンのハウスクリーニング
平均金額 19,000円
最安金額 9,000円 ~ 最高金額 35,000円
・レンジフードのハウスクリーニング
平均価格 12,000円
最安金額 8,000円 ~ 最高金額 22,000
仮に水回り全部をやったとしたら合計65,000円です。
水回りを全てセットにしたプランなどもあります。
セットプランだと40,000円台からあるので最初からこちらを選んだ方が良いでしょう。
これを高いと思うか、安と思うかは人ぞれぞれです。
しかし、ハウスクリーニング数万円で、数千万円のマンション売買をスムーズに進められるなら”コストパフォーマンスの高い先行投資”と思えてきますよね。
では、実際にハウスクリーニングをすることで、どのような点が有利になるのでしょうか?
次はハウスクリーニングをすることのメリットを説明していきます。
4. マンション売却前にハウスクリーニングをするメリット
ハウスクリーニングを行うことで、どのようなメリットが得られるのか見ていきましょう。
4-1. 内覧希望者が集まりやすくなる
中古マンションの購入を考えている人は、まずインターネットを使って探すでしょう。
不動産情報サイトで実際に検索してみると分りますが、多くのマンションがたくさんの写真を掲載してアピールしています。
しかし、意識して写真を見ると、水回りが引きで撮影されている写真が多いことに気づきます。
もちろん全体の雰囲気を分って貰うために引きの写真も必要ですが、ハウスクリーニングをしておけば、さらに接近した写真をありのまま掲載することができます。
ハウスクリーニングをしておけば、引きで撮影していたり、明らかに光の加減を修正している類似のライバル物件が多い中で、あなたのマンションは際立って見えるはずです。
不動産情報サイト上で目立てば問い合わせが多くなり、結果的に内覧希望者も増えます。
4-2. 早期の売却が可能になる
水回りのハウスクリーニングだけでも、何もしていない他のマンションと比べればだいぶ綺麗に見えます。
何度も書いていますが、中古マンションを購入する人は新品同様のピカピカを求めているわけではありません。
しかし、だからと言って汚い部屋に住みたいわけではありません。
当然のことですが、条件面が同じ中古マンションであれば綺麗な部屋から売れていきます。
マンションの売却期間は平均3ヶ月で、遅くとも6か月以内には売り切りたいところです。
(※半年を超えてしまうと売れ残り物件と判断されてしまいます。詳しくは次章で)
仮にあなたのマンションは6か月後に売れたとします。
その間に掛かったマンションの維持費はいくらになるでしょうか?
管理費+修繕積立金で2万円、固定資産税が1万円と考えても6か月で18万円です。
もちろん住宅ローンが残っていればそれもマイナスになります。
こう見ると、数万円のハウスクリーニングを払い、早期に売却した方が圧倒的に得だということがお分かり頂けるのではないでしょうか?
4-3. 売れ残りを防ぐことができる
数万円のハウスクリーニング代をケチってしまったばかりに、それ以上のマンション維持費を払うことになってしまう・・・
それでも半年くらいで売れれば、まだ良い方です。
半年以上も購入者が見つからないと、不動産市場から「売れ残り物件」として認識され始めます。
では、売れ残り認定されてたマンションはどんなことになってしまうのでしょうか?
・売れないのには大きな欠陥があるのではないかと勘繰られて内覧者が減る
・いつ見ても売りに出てるから焦って申し込む必要はないと内覧者に思われるので、不動産会社の営業マンも成約を取りにくい
・成約が取りにくければ営業マンも積極的に紹介しなくなる
・マンションオーナーは売れずに焦っているだろうと、購入希望者に足元を見られ、大幅な値引き交渉をされる
・いつまでも売れず最終手段の業者買取になれば、そこでも足元を見られ買い叩かれる
たかが数万円のハウスクリーニングをケチったがために、こんな状況に陥ってしまったら悔やんでも悔やみきれません。
売れなかった時間、値引きされたお金はもう帰ってこないのです。
自分のマンションが売れ残ってしまうのを防ぐためにも、水回りなど最低限のクリーニングはしておくべきでしょう。
4-4. 値引き交渉をされない
中古マンション購入を検討している人達の最大の目的は、何と言っても「安く購入したい」ということです。
言い方は悪いですが、内覧時は価格交渉できそうなネタがないか、目を光らせていると考えた方が良いでしょう。
そして、室内の汚れは、一番狙われやすい値引き交渉のネタです。
「お風呂場のカビが目立つから」
「シンクのサビが気になるから」
実際に、汚れ誰の目にも明らかであれば売主としても「確かに、、そうですよね・・・。」と認めざるを得ません。
しかも、中古マンション売買では数万円単位での値引き交渉はまずありません。
基本的に十万円単位での値引き交渉になります。
例えば、
「2430万円」を「2400万円」に値引き。
「4250万円」を「4200万円」に値引き、といった感じですね。
ハウスクリーニングの数万円を切り詰めたところで、結果的に数十万円の値引き交渉をされてしまっては元も子もありません。
しかし、その一番の弱みである室内の汚れは、ハウスクリーニングを利用するだけで簡単に解決できる問題でもあります。
ハウスクリーニングで文句の無し状態にすれば、マンション売却は格段に有利に進めることができるでしょう。
4-5. 購入後のクレームを防ぐことができる
内覧時の購入検討者はどんな気分でしょうか?
あなたがマンションを購入した時、賃貸を借りた時なんかを思い出して欲しいのですが、いつもより少し気持ちが盛り上がっていたのではないでしょうか?
あなたの中古マンションを内覧する人の多くも、気持ちが盛り上がっているはずです。
そんな状態で内覧しているので、細かい欠点を見過ごす人も少なくありません。
購入後に冷静になってから「この汚れはなんだ!聞いてないぞ!」と文句をいってくる人も稀にいます・・・。
基本的には不動産売買契約書で瑕疵担保責任の期間や範囲には制限を付けるので、汚れ程度で費用を請求されることはありませんが、汚れを見つけるたびに文句を付けられては精神的にやられてしまいます。
このような面倒事を売却後に引き起こさないという意味でもハウスクリーニングは効果的です。
プロの掃除で文句が付けようのない綺麗な室内しておけば何の心配もないのですから。
5. 部屋を丸ごとハウスクリーニングに依頼したらいくらになるの?
水回り以外は自分でも掃除可能と書きましたが、
「あちこち掃除する時間なんてない・・・。」
「さすがに面倒・・・。」
と感じる方もいるかもしれませんね。
特に、夫婦共働きで休みも少ない・・・などの家庭であれば厳しいと思います。
上記した箇所は、あくまで素人でも掃除可能ということであって、必ず自分で掃除しなければいけないわけではありません。
当然、水回り以外も丸ごとプロのハウスクリーニングに任せてしまっても問題ありません。
部屋丸ごとハウスクリーニングすると、
3LDK~4LDKで80,000~120,000円
が相場といったところです。
時間がないから、多少お金が掛かっても問題ないという方は検討してみましょう。
10万円前後は見た方が良いですが、それでも先に書いたようなハウスクリーニングのメリットを考えれば全然損ではありませんね。
6. ハウスクリーニングはどこに依頼したらいいの?
では、実際にハウスクリーニングはどこの業者に依頼したら良いのでしょうか?
きっとネットで調べても、
「ハウスクリーニング業者っていってもたくさんあってわからない・・・。」
「料金やサービスも業者ごとに違う・・・。」
と、さらに迷ってしまうでしょう。
そんな時は、ハウスクリーニングの比較サイトを使うのが一番手っ取り早いです。
ハウスクリーニングの比較サイトはいくつかありますがメジャーなものを紹介しておきます。
ズバット ハウスクリーニング比較
https://www.zba.jp/house-cleaning/
ちなみに、ハウスクリーニング業者のチラシはポストに入っていることも多いですが、オススメしません。
チラシの業者に頼んでとんでもない高額料金を請求されることはよくあることです。
上記のような比較サイトを利用して、しっかりと料金やサービスを比較してから依頼しましょう。
7. まとめ
ここまで読んでくれた方の中には、
「水回りだけハウスクリーニングにお願いしようかな」
「共働きだから丸ごとハウスクリーニングかな」
など、何となくの感想を持たれた方もいるかも知れません。
しかし、多くの方は、
「日頃からそれなりに掃除してるけど・・・でも、やっぱりやっと方がいいのかな?」
と迷っていると思います。
そんな時は、プロに聞きましょう。
プロと言いてもハウスクリーニング屋さんに聞いても意味がありません。
せいぜい「はい、全面的にクリーニングしましょう」と言われるのがオチです(笑)
では、何のプロに聞けば良いのでしょうか?
はい、お察しの通り。不動産会社の担当者に聞きましょう。
彼らは今までいくつものマンションの室内を見てきていますから、
「この程度の汚れならハウスクリーニングはいりませんね」
「水回りだけクリーニングした方が良いですね」
といった客観的な意見をくれるはずです。
もちろん信頼できる、仕事のできる担当者であることが大前提です。
ハウスクリーニングしなくても問題ないと言われたのに、いざ売り出してみたら全く成約しない・・・オーナーの判断でクリーニングを入れたらすぐ決まったなんてことも珍しくありません。
掃除やハウスクリーニングも大事ですが、もっと大事なのは信頼できる不動産会社と担当者を見つけることです。
・まだ不動産業者が見つかっていない・・・。
・今の担当者に不信感がある・・・。
今、あなたがこのような状態なのであれば、悩むところはハウスクリーニングをするか、しないかではなく、信頼できる不動産会社と担当者を見つけることです。
そこさえ決まれば、ハウスクリーンングをどうするかなど担当者に聞けば一発で解決するのですから。
早期売却にしろ、高額売却にしろ、すべてはあなたが選ぶ不動産屋次第です。
そこだけは絶対に手を抜かないようにしましょう。