マンション売却を代理人に委任する方法と注意事項!雛形付き

事情は様々ですが、マンション所有者本人が売却手続きを進められないケースがあります。
そのようなとき、代理人を立てて、マンションの売却を任せることが可能です。

しかし、実印を預け、マンションという高額な資産の売却を代理人に任せることになります。
所有者本人は最新の注意を払う必要があるのです。

そこでこの記事では、マンション売却で代理人を正しく利用し、安全にマンションを売る方法を解説します。

1. 原則はマンションを売却できるのは所有者本人

原則として、マンションなどの物を売却できるのは所有者本人だけと決まっています、
民法の前提として、所有者には「所有物を排他的に支配する権利」が認められているからです。
(排他的:他者を退ける、受け入れない、といった意味)

つまり、マンションの権利は所有者本人が独占しているということです。
所有者以外の他者が、勝手に本人の実印や印鑑証明書、住民票などを用意したとしても、所有者でない以上、権利がないのですから売却は出来ません。

しかし、以下のような事情により、所有者本人がどうしても売却を進めることができないこともあります。

・海外在住などで遠方
・高齢で体力がない
・忙しくて時間がない
・離婚したので関わりたくない

このよう場合、所有者本人はどうしたら良いのでしょうか?

2. 代理人を立てればマンションの売却が可能

所有者本人が売却を進めることができない場合、代理人を立てることで他者が手続きを進めてもらうことが可能です。

代理人が対応できる活動の範囲は幅広く、買主との売買契約手続きを始め、不動産仲介業者との媒介契約締結や所有権移転登記なども委任できます。

2-1. 代理人とは?

代理人とは、本人(所有者)に代わって何らかの法律的な権限を持ち、与えられた権限の範囲内で法律行為を行う人です。

代理人には「法定代理人」と「任意代理人」の2種類があります。

  • 法定代理人・・・本人が権限を与えるものではなく、法律上当然に代理権を持つ人です。たとえば未成年者の親や認知症の高齢者の成年後見人などが該当します。
  • 任意代理人・・・本人が自分の意思で権限を与える代理人です。本人が自由に代理人を選んで権限を与えることができます。

マンション売却などの不動産売買契約を代理人に委任する場合、
所有者本人は「任意代理人」を選び、委任契約を締結する必要があります。

委任とは?
なお「委任」とは、法律行為の権限を与えることです。
一般的には「任せる」「依頼する」のと同じようなニュアンスです。
つまり、マンション売却を委任する場合「マンション売却を代理人に任せる」ことを意味します。

2-2. 代理人の意思表示はすべて本人に帰属する

いったん代理権を与えたら、代理人が権限の範囲内で行ったことはすべて本人の責任になります。

民法でも以下のように書かれています。

民法第99条(代理行為の要件及び効果)
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

代理人が権限内において不動産売買契約を結んでいれば、売主本人が「売買契約はやっぱり辞める!」と言っても契約を取り消すことはできません。

ただし、代理人はあくまで与えられた権限の範囲内で法律行為を行う人です。
当然、代理人に与える代理権の範囲や内容は、所有者本人が委任契約によって指定できます。

全面的な売却権限を与えることもできますが、代理人に与える権限は細かく限定しておく方が安全です。

2-3. 無権代理と表見代理

では、代理人の権限の範囲を細かく設定したにも関わらず、代理人が委任していない勝手な行動をした場合はどうなるのでしょうか?

例えは、売主本人が代理人に「買主Aさんに〇〇〇〇万円で売却してほしい」と依頼したにも関わらず、勝手に「買主Bさんに△△円で売却」されてしまったようなケースです。

このように、代理権の範囲を超えた代理行為を無権代理と呼びます。
無権代理の場合、当然ですが代理人の行為が本人に及ぶことはありません。

つまり、所有者本人はBさんにマンションを売らなくて良いということです。

しかし、買主が代理人の権限を信用して売買契約を締結したのであれば、買主の保護も必要です。

そこで、無権代理のケースでも、相手方が代理権の範囲内であると信じる正当な理由があった場合は、本人に責任が及びます。
これを表見代理と言います。

  • 表見代理の具体例
  • 代理人が、代理権の消滅後にも関わらずしているのに買主に代理人であるかのように振る舞いマンションを売却した。

表見代理が成立するケースでは、所有者本人が「無権代理」を主張したところで、相手方がそのことを知らなえればマンション売却は成立してしまうのです。

2-4. 代理人の選任は慎重に

すでに述べたとおり代理人が勝手な行動をとったとしても「表見代理」によってあなたに責任が発生してしまう可能性があります。
「代理人が勝手にやったので私には関係ない」と言っても通用しません。

またマンションは、通常数千万円もする高額な資産です。
代理人が勝手に常識外れの値引きをして売ってしまったら、損害額も莫大になります。

そこで、マンション売却の代理人を選任するときには、慎重に慎重を重ねて絶対確実に信頼できる人を選ぶべきです。
具体的には、以下のような人から選ぶのが良いでしょう。

  • 近しい親族
  • 子どもや親などの近い親族に依頼するのはもっとも安心です。
    親戚付き合いがあれば、兄弟や甥姪に依頼する方法もあるでしょう。

  • 弁護士や司法書士
  • 依頼できる親族がいなければ、弁護士や司法書士に依頼する方法もあります。
    ただし、これらの専門家に依頼すると費用がかかるので注意が必要です。
    費用相場は、依頼する専門家にもよりますが「売却できた売買代金」を基準に計算されるケースがほとんどです。金額の目安としては、売却価格の1~3%程度と考えると良いでしょう。
    具体的には、依頼予定の弁護士や司法書士に確認してください。

2-5. 司法書士や不動産仲介業者による本人確認について

マンションを売却するとき、所有者本人は必ず「本人確認(意思確認)」をされます。
本当に、所有者本人が売却の意思を持っているのかをチェックし、無権代理等のトラブルを防ぐためです。

本人確認を行うのは不動産仲介業者と司法書士です。

不動産仲介業者は、きちんと本人確認をしないと宅建業法上の注意義務違反となり、所有者に発生した損害を賠償しなければなりません。
近年では犯罪収益防止法が制定されたこともあり、さらに本人確認が厳格に行われるようになっています。
そこで売却に代理人を立てた場合でも、不動産業者が所有者の自宅までやってきて本人確認をとるケースが多くなっています。

また、不動産を売却すると所有権移転登記が必要となりますが、通常は司法書士に依頼します。
司法書士は登記を行う前に、必ず本人確認を行います。

代理人に登記手続を委任している場合でも、必ず司法書士が所有者本人の自宅にやってきて、対面で本人確認を行います。
その後にようやく抵当権抹消登記や所有権移転登記が行われます。
本人が遠方に居住している場合には、本人確認のために高額な交通費や日当がかかるケースもあるので、注意が必要です。

3. マンション売却を代理人に任せるには委任状が必要

マンションの売却を代理人に任せる場合、必ず「委任状(代理委任状)」が必要です。

委任状とは、所有者本人が代理人に代理権を与えたことを証明するための書類です。
「〇〇さんにマンション売却の手続きを委任します」などと書いて所有者が署名押印し、代理人に渡します。

委任状がないと、代理人は自分が代理権を持っていることを証明できないので、不動産仲介業者も司法書士も取り合ってくれません。

また委任状は、代理人の権限内容を明確化するためにも必要になります。
委任状があれば、代理人は委任状に書いてある以外のことはできないからです。

このように、委任状の作成と交付は民法上の義務ではありませんが、トラブルを防ぐためには必ず必要とまります。

3-1. 委任状の記載内容

委任状を所有者本人が用意する必要はありません。
通常、不動産仲介業者に代理人を立てマンションを売却したいと相談すれば、仲介者が委任状を作成してくれるからです。

しかし、マンション売却という大きな代理権を代理人に与えるのです。
売主も委任状に問題や誤りがないかチェックできる程度の知識は必要になります。
不動産業者にいい加減な委任状を作られてトラブルになったら、たまったものではありませんよね?

理想的な委任状のサンプルを用意したので、確認してみてください。

3-2. 委任状のサンプル

委任状

委任者○○○○は、受任者○○○○(住所 東京都〇〇区〇〇)に対し、甲所有の下記不動産を下記条件で売却することを委任する。

・物件の表示
所在 ○○○○○○○○○
地番 〇〇
地目 宅地
地積 〇〇平方メートル

・委任する権限
媒介契約の締結
売買契約の締結
固定資産関係証明書の取得
売買代金等の支払い・授受
所有権移転登記申請
これらに附帯する売却に必要な一切の権限

・売却の条件
1.売買価額  最低金○○○○万円以上
2.引渡日  平成○○年○○月○○日以降
3.その他の条件は、乙が売却活動を進める中で、適宜甲に相談しながら決定する

この委任状の有効期間は、本日より3か月とする。ただし、合意によってさらに3か月間延長することができる。

以上

  平成○○年○月○日
委任者
住所 ○○○○○○○○○○○○
氏名 ○○○○ 実印

3-3. 委任状で特に注意する点

以下は、委任状で特に注意深く確認して欲しいポイントになります。

  • 委任する相手
    誰にマンション売却の権限を依頼するか、ということです。ここが白紙やあいまいになっていると、勝手に異なる人の名前などを書き込まれて、全く知らない第三者にマンションを勝手に売られてしまうかもしれません。代理人の氏名と住所まで間違いなく書いておきましょう。
  • 物件の表示
    売却する物件(マンション)の表示も重要です。間違えると、有効な代理権が認められないので代理人による売却が出来ません。マンションの全部事項証明書(法務局で取得)の表題部を正確に引き写しましょう。
  • 与える権限内容
    売却に関連して代理人に与える権限の内容を明確化しておきましょう。不動産業者との媒介契約を任せるのか、売買契約締結を任せるのか、不動産登記申請や売買代金の受領を任せるのかなどを決めて書き入れます。媒介契約締結から売買代金の受領、登記までの一連の手続きを任せる場合、添付の委任状のような表現となります。
  • 売買の条件
    代理で契約してもらう売買契約の条件です。売買代金について、添付の委任状のように最低金額を設定しておくと、代理人によって必要以上に値下げされないので安心です。引き渡し期限の希望があれば書き入れておくと良いでしょう。その他については、適宜(てきぎ:状況に合わせて)所有者本人と相談して決めることにしておけば、代理人の勝手な行動を防止できます。
  • 日付と代理権を与える期間
    日付や代理権の与えられる期間が後から重要となってくることがあります。期間は代理人と話し合って慎重に決め、委任状を作成した日付を正確に書き入れましょう。

3-4. 委任状の他に必要なもの

代理人を立ててマンションを売却するとき、代理権委任状以外に以下のようなものが必要です。

  • 本人と代理人の印鑑登録証明書(印鑑証明書)
  • 本人と代理人の本人確認書類
  • 登記識別情報または不動産権利証
  • 印紙税
  • マンション管理規約
  • 耐震性能証明書(あれば)
  • 認定優良住宅証明書(あれば)
  • マンションを購入したときのパンフレットなど

詳細は不動産仲介業者に確認しましょう。

自分でマンション売却を進められない場合、委任状を作成して信頼できる人に代理してもらう方法は非常に有効です。
今後マンション売却する際の参考にしてみてください。

4. まとめ

代理人を立てたマンション売却は、トラブルも起こりやすく実際に裁判沙汰になってしまうこともあります。
サポート役となる不動産仲介業者の担当は、経験豊富なベテランを選ばなければスムーズな売却活動は望めないでしょう。

売却を依頼する不動産会社を選ぶために、何社かに査定を依頼すると思います。
その際、代理人が売却活動を進めることを営業マンに伝え、どんな返答をするのか比較してください。
(不動産会社選びも代理人が行うのであれば、自分が代理人であることを最初から打ち明けその返答を比較。)

いくら高い査定金額を提示してくれても、頼りないと感じるような営業マンなら候補から外しましょう。