売却理由 離婚

財産分与でマンションを売却する際の注意点。分与の基本から徹底解説

財産分与の基本

離婚にともなって財産分与を行う際、もっとも揉めやすいのが不動産と言われています。

その理由は高額な資産でありながら、現金のように簡単にかんたんに分与することができないからです。
また、ローンの残債やローンの名義、不動産の名義などが絡んでくるため、複雑となりやすいせいでもあります。

こちらでは、財産分与の基本的な考え方から、マンションの財産分与はどうしたらいいのか、最適な売却方法はどれかについて、潜んだリスクとあわせて解説していきます。

財産分与は離婚後の新たな生活をスタートするうえで、とても重要な取り決めのひとつです。

財産分与で損をしてしまわないように、そして離婚がさらに大きなトラブル(裁判沙汰)へと発展しないように、正しい財産分与を知っておきましょう。

1. 財産分与とは?

そもそも、財産分与とは何かというと「結婚生活において夫婦で共に築き上げてきた財産を平等にわける」ということです。

これは不動産や保険、預貯金、車などで名義が誰になっているかは関係ありません。

また、夫が会社で働いてお金を稼ぎ、妻は専業主婦をしているケースでも「夫は会社で頑張り、妻は家のことを頑張った」わけであり、逆も同様となります。

そのため、特別な事情がない限りは離婚時の財産分与は平等であり、基本的には50%ずつとなると理解しておきましょう。

1-1. 財産分与の種類

財産分与には基本的に3種類の財産分与があります。

清算的財産分与夫婦で協力して築いてきた財産は公平に分配するという分与
扶養的財産分与元配偶者が離婚により生活が困窮する場合は、その生計を補助するという意味での分与(病気や専業主婦(主夫)の場合など)
慰謝料的財産分与傷つけた事に対するによる慰謝料の性質を含ませた分与(DVや浮気など)

離婚時の財産分与の中でも主となるものが「清算的財産分与」となっています。

ただし、例外的な事情(DVや浮気、病気な専業主婦で収入がないなど)がある場合は「扶養」や「慰謝料」を含めた「清算的財産分与」として、分与の割合が50%からどちらかにかたよる場合もあります。

1-2. 財産分与の対象となるもの

前提として、財産分与の対象となるものは、婚姻期間中に二人で築いた財産であり、これを「共有財産」と言います。

具体的にどの財産が共有財産となるのかというと、以下のようなものが該当します。

  • 現金や預貯金
  • 株や国債、投資信託
  • マンションや土地、家などの不動産
  • 自動車
  • 家具や家電
  • 骨董品や絵画、宝石や着物などの価値の高い物
  • 退職金や年金
  • ゴルフなどの会員権
  • 自動車保険、生命保険、学資保険、損害保険などの保険各種
  • 住宅ローンや自動車ローンなどの借金各種

これらは共有財産として財産分与の対象となります。

婚姻期間中に夫婦で築いた財産であれば、誰の名義になっているかは関係ありません。
例え夫名義のマンションであっても、半分は妻に所有権があるというのが一般的な財産分与の考え方となります。

また、重要なことは住宅ローンや自動車ローンなどの「負の財産(借金)」も分与の対象となることです。

そのため、住宅ローンが残っているマンションの財産分与は「今のマンションの価値」と「ローンの残債」を合わせて考える必要が出てくるため、あらかじめ二つの金額を把握しておくことが必要となります。

1-3. 財産分与の対象とならないもの

財産分与するにあたって共有財産は分割する必要がありますが、反対にそれぞれ個人の財産であり分割する必要のない財産のことを「特有財産」と呼びます。

この特有財産には、以下のようなものが該当します。

  • 婚姻する前にそれぞれが取得した財産全般(借金も含む)
  • 家族や親族から相続や贈与で得た財産
  • 結婚後にギャンブルや趣味、浪費など個人的な都合で作った借金
  • 日用品
  • 別居後に手に入れた財産

基本的に結婚前から所有していた財産は「特有財産」とみなされ、財産分与によって相手に分割する必要はありません。

例えば、独身時代に投資用として購入した不動産などは特有財産となります。

また、結婚後に手にした財産であっても、相続や贈与で得た財産や、自分の都合で作った借金なども「特有財産」として分与はされません。

何が「共有財産」で、何が「特有財産」なのかが分からないと、もらえるはずの財産をもらえなかったり、負う必要のない借金を自分が負ってしまう、という状況になる可能性があります。

正しく認識しておき、財産分与で損をしないようにしましょう。

2. 財産分与でトラブルとなりやすいのが不動産

財産分与で特にトラブルとなりやすいのが不動産の分与と言われています。

不動産という資産は現金とは異なり、数字でちょうど半分にすることができません。
また、物理的に半分にする事も不可能です。
さらに、不動産は高額な資産でありながら価値が変動的で、公平に分与することが難しいという特徴があります。

そのため、基本的には離婚を機に売却して現金化し、お金を財産分与するという方法が最もかんたんでトラブルが少ない方法となります。

中には、マンションに愛着があったり、子どもの学校の関係から住み続けたいという方もいるでしょう。
しかし、所有し続ける場合、将来的に起こりうるたくさんのリスクがあり、その対処にはさまざまな手続きが必要となります。

それでは、具体的にどのようなリスクがあり、どのような対処が必要なのかを次に解説します。

3. マンションを所有したままにするリスク

売却を考えている方は関係ありませんので次の章へ進んでください。

>>住宅ローンが残っている場合の注意点

もし、マンションを離婚後も所有し続けることを考えている場合は、所有し続けるリスクを理解しておきましょう。

そして、可能な限り対策をしてリスクを排除することが、所有し続ける上でとても重要です。

それでは、リスクを4例紹介していきます。

3-1. リスク1、突然マンションから追い出されてしまう

これは、妻や子どもがマンションに残り、夫が養育費代わりとしてローンの返済をするような場合に起こりうるトラブルです。

この時、元夫がちゃんとローンの返済を続けてくれている限りは問題ありません。

しかし、必ずしも返済が続くとは限りません。

債務者が病気や事故、失職により返済ができなくなることもありますし、別のパートナーと新しい生活を始めるのをきっかけに不払いになるというケースもあります。

厚生労働省から発表された「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」では、離婚した父親から継続して養育費を受け取れている母子家庭は19.7%という結果が出ています。

つまり、必ずしも養育費を払い続けてくれるという保証はどこにもないのです。

離婚後、普通に生活をしていたらある日とつぜん督促状が届き、元パートナーに連絡しても繋がらず、やがてマンションが差し押さえられるという可能性もあります。
競売に出されてしまえば、強制的にマンションから追い出されてしまうことになります。

こういったトラブルは、実際に起こりうるのです。

対策としては、公正証書で「支払うという約束を公文書で残す」という方法があります。
これによって、意図的に不払いになった場合は、支払いを強制執行することが可能となります。

しかし、必ず支払わせることができるという保証ではありません。
相手に支払うお金がない場合は、公正証書で残していてもどうしようもないという事も理解しておきましょう。

3-2. リスク2、売りたい時に売却できない

これは、不動産が共有名義の際に起こりうるトラブルです。

財産分与がスムーズに進み、自分がマンションの所有権を得たとします。
ただ、その時に住宅ローンの問題や、変更し忘れで不動産の名義が共有名義のままにしてしまうと、将来そのマンションを売却する際に苦労をすることになります。

理由は、マンションを売却するには名義人全員の同意(捺印と署名)が必要となるからです。

そのため、共有名義のまま離婚をした場合は、将来売却するタイミングで元パートナーに連絡をし、売却の同意を得なくてはいけません。

もしこの時に元パートナーと連絡が取れなくなっていたり、円満離婚でないと元パートナーが売却に同意を示さないというケースもあります。
こうなってしまうと、売却することができなくなります。

対策としては、公正証書で「売却時は必ず同意をする」という取り決めをし、常に元パートナーと連絡が付く状態でいるという方法が一つあります。

または、不動産を共有名義から単独名義に変更するという方法もあります。

この場合は、住宅ローンを組んでいる金融機関から「不動産の名義変更」の許可を得る必要があります。
もし、住宅ローンを夫婦連帯で借りている(夫婦の収入を合算してローンを組んでいる)場合は特に、収入とローンの残債の関係から名義変更の許可がおりない可能性が高くなります。

不動産の名義変更の許可を得るのは大変難しいですが、所有し続けることを選んだ場合は金融機関に名義変更の相談をしてみましょう。

3-3. リスク3、相手が支払うべきお金を負担しなくてはいけない

マンションをペアローンで購入していたり、連帯債務や連帯保証人となっている場合に起こりうるトラブルです。

もし、元パートナー(債務者)の返済が滞ってしまうと、代わりに自分が支払わなくてはいけなくなります。

これは契約で決まっていることなので、住宅ローンの名義人が誰なのか、実際に住んでいる人が誰なのかは関係ありません。

また、離婚時の夫婦間での取り決めや、すでに離婚して赤の他人になっていたとしても、お金を貸している側には一切関係なく、契約書に名前が残っている限りは必ず責任を取らなくてはいけません。

支払いに応じる事が出来なければ、差し押さえや競売はもちろん、最悪の場合は自己破産にまで追い込まれてしまう危険があります

つまり、ローンの契約にお互いの名前が残っている限りは、表面上の関係は完全に切れたとしても、経済的に深く繋がったままとなってしまうという事です。

対策は、住宅ローンを単独名義にする事ですが、ペアローンや連帯債務型の場合は夫婦の収入の合算でローンを組んでいます。

それを単独名義にすることは、金融機関からするとリスクでしかありません。
なぜなら、これまで二人で返済していた金額を、一人で返済するようになるということだからです。

そのため、相当の経済力がなければ名義変更は認められません。
認められない場合は、ローンの残債分を単独名義で貸してくれる金融機関を探し、ローンの借り換えをするしかなくなります。

いずれにせよ、どの方法も難易度は高い方法であることには変わりません。

3-4. リスク4、元パートナーが死亡することで相続争いになる

これは共有名義のまま、元パートナーが再婚をし、その後亡くなった場合に発生するリスクとなります。

元パートナーが再婚してから死亡すると、新たなパートナーに相続権が与えられます。

つまり、マンションの所有権の半分は自分で、残りの半分は見ず知らずの元パートナーの再婚相手となるのです。

そのため、離婚時にマンションの持ち分の清算が終わっていたとしても、元パートナーの再婚側の人間から、持ち分のお金を払ってくれと言われる場合があります。

もし現金で支払えなければマンションの売却し、そのお売却金から持ち分の代金を支払うしかなくなるでしょう。

対策は、離婚時に持分割合の清算を済ませておき、その内容を公正証書を作成して残しておくことでリスクを排除する必要があります。

3-5. リスク5、マンションを手放さない限り関係が切れない

以上のように、住宅ローンや不動産の名義に双方の名前が絡んでいる場合、離婚後もマンションを所有し続ける事には大きなリスクがついて回ります。

離婚後も元パートナーが病気や事故、転職、失職などにより家計が悪化した場合、そのあおりを自身も受けてしまう可能性があるのです。

逆に、自分が債務者の場合は、自身に何かあった時に元パートナーに迷惑をかけてしまう可能性があるという事でもあります。

いくら離婚をして赤の他人となっても、契約している限りは責任があり続けます。

そのため、基本的に夫婦の名義が絡んでいるマンションは、離婚を機に売却したほうがいいのです。
その方が分与がかんたんで、トラブルも少なく、最もすっきりと別れることができます。

3-6. リスク6、マンションと住宅ローンの名義人、保証人がわからない場合

もし、自分たちのマンションの名義と、住宅ローンの名義がわからないという場合はすぐに確認しましょう。

マンションの名義は「不動産登記簿謄本」から確認ができます。

不動産登記簿謄本の取得方法は「管轄の法務局の登記所窓口」で交付請求をするか、「登記・供託オンライン申請システム」からオンラインで申請をし、窓口か郵送で受け取るという方法が使えます。

窓口請求で窓口受取は600円、オンライン請求で郵送受取は500円、オンライン請求で窓口受取は480円の手数料がかかります。

住宅ローンの名義を確認する場合は、住宅ローンを組んだ時の契約書「金銭消費貸借契約書」を確認しましょう。

債務者であれば「返済予定表」や「残高証明書」から確認することもできます。

もし見つからないという場合は、債務者であろう人が住宅ローンを組んでいる金融機関に直接問い合わせて、契約状態を確認してみましょう。

とても重要な事ですので、契約の名義を忘れてしまっている場合は早めに確認をしておきましょう。

4. 離婚時にマンションを売却するメリット

次は、もし離婚を機にマンションを売却した場合、どのようなメリットがあるのかについて解説していきます。

4-1. メリット1、現金化することで公平に分与しやすくなる

マンションは物理的に半分に分割することは、現実的に考えて不可能です。

しかし、現金化してしまえば、数字で綺麗に半分にする事ができます。
そのため公平な分与が可能となり、不公平感による裁判沙汰を防ぐことができます。

また、貢献度に応じて分与割合を変更した結果、例えば6:4となった場合も現金であればかんたんに分与ができるというメリットがあります。

4-2. メリット2、責任がなくなる

マンションを売却し住宅ローンを完済することができれば、ローンを支払う責任や、債務者が返済を滞らせたときに発生する連帯責任を負う必要がなくなります。

つまり、住んでいるマンションを差し押さえられるリスクや、巨額の一括返済を突然もとめられるというリスクから解放されるということになります。

4-3. メリット3、関係を切ることができる

契約上のつながりを全て断つことができれば、元パートナーとの関係を切ることが可能となります。

名義が絡んでいる場合は常に連絡が取れるようにしておく必要がありますが、契約上のつながりがなくなれば連絡が取れなくなっても問題ありません。

経済的なつながりも断たれるため、例え元パートナーが自己破産をしたとしても、自分の生活も破綻してしまうことがなくなります。

4-4. メリット4、新たにローンを組みやすい

離婚後も住宅ローンの債務者であったり、ローンの保証人となっている場合、新たなローンを組みたくなっても、返済負担率の関係からローンを組めないという可能性があります。

ですがマンションを売却し、ローンの残債を清算することができれば、新しいローンを組む事が可能となります。

また、財産分与である程度の財産が手に入れば、次のマンションや戸建ての頭金としても使えるので、ローンを組みやすくなるというメリットもあります。

4-5. メリット5、売却が一番すっきりと別れられる方法

マンションを所有し続けることは、マンションという資産が残るという半面、多くのリスクが潜んでいます。
それは、離婚後の自分たちの生活を破産させる可能性のある重大なリスクです。

それに対し、マンションを手放してしまえば分与が楽になり、お互いに関係を清算することができ、すっきりとした状態で新たな生活を始めることができます。

マンションに愛着があり、手放したくないと感じる方もいるかと思います。
しかし、住まいは生活スタイルと共に変わるものです。
家族が増えたり減ったり、歳をとっていく中で、住み替えていくことが理想的な住まい像と言えます。

そのため、特別な事情がない限りは売却したほうがいいのです。
それが、離婚後の生活を守るために有効な手段でもあるのです。

5. 住宅ローンが残っている場合の注意点

たまに、住宅ローンが残っている住宅は売却できないと思っている方がいます。

しかし結論をお伝えすると、住宅ローンが残っているマンションでも売却は可能です。

ただし、ローンが残っている場合は、どの住宅でも売却が可能というわけではありません。
場合によっては売却ができないという状況のマンションもあります。

5-1. 売却金よりも残債が多いと売却できなくなる

もし、マンションを売ったときの売却代金でローンの残債を返済できないと、マンションを手放せない可能性があります。

このローンの残債の方が売却代金よりも多い状態のことをオーバーローンと言います。

オーバーローンになるとなぜ売却できないのかというと、住宅ローンを組む際は一般的にはマンションに抵当権を付けています。

抵当権とは金融機関が、債務者がローンを支払えなくなった時にマンションを差し押さえて売却し、資金を回収するためのものです。

そして、抵当権を外すためには、ローンの完済が条件となっているのが一般的です。

つまり、ローンを完済できない限りは、金融機関から売却の許可がおりないのです。

例えば、現金や預貯金、その他財産を現金化して、足りない分を補える場合は売却することが可能となります。

しかし、マンション以外の資産で足りない分を補填できなければ、そもそも売却すらさせてもらえない可能性があるのです。

5-2. まずは、今の価値とローンの残債を確認する

売却を考えている場合は、何よりも先にマンションが売却できるのかを確認する必要があります。

自分でもすぐにできる確認方法は、「ローンの残債」と「マンションの価値」を調べるという方法です。

「ローンの残債」は金融機関から送付されてくる、「残高証明書」や「返済予定表」を確認するか、直接窓口に電話をして確認してみましょう。

「マンションの価値」は不動産鑑定士に鑑定依頼をするか、不動産業者に査定依頼をしましょう。

ただし不動産鑑定士を使うと鑑定料が必要となり、一般的な住宅で数十万円の費用がかかってしまいます。
そのため、無駄に費用を使いたくない場合は、不動産業者から無料査定を受けて査定額を確認しましょう。

例えば無料の不動産一括査定サービスなどを使うと、簡単に複数の不動産業者から査定書が届くため、その平均査定額を使いより精度の高い計算が可能となります。

また、複数社から同時に受けることで、高額査定の業者も簡単に見つかるので、より高額売却=財産分与の取り分が多くなる可能性が高くなるので、活用してみてもいいでしょう。

6. マンションの売却方法

実際にマンションの売却が決まった場合、どのような売却方法があるのかを解説します。

また、もしオーバーローンとなってしまった場合、どうなるのかも合わせて解説していきます。

6-1. 速さを重視するなら業者買取で売却

不動産業者が直接買い手となるため、早ければ1週間で現金化も可能な方法です。
そのため、早めに離婚して関係を清算したいと考えている人に向いています。

また、仲介では契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)という、「契約にない不具合が見つかったら売った人が責任を負う」という決まりがないため、売却後に出費が必要になるリスクがなくなるメリットもあります。

ただし、業者買取の場合は一般的に相場の7割前後の価格で買い取られることが多いため、オーバーローンになってしまう可能性が高くなります。

そのため、ローンを完済している場合か、ほとんど返済し終わっているという人でないと、選べない可能性の高い方法です。

6-2. できるだけ高く売るなら仲介で売却

一般的にマンションの売却といえば、仲介による取引のことをいいます。

仲介では相場の価格前後での取引となることが多いため、少しでも高く売って分与の取り分を多くしたい人や、オーバーローンの危険がある人に向いている取引方法です。

ただし、買い手となる人が見つかるまでは売れないため時間がかかります。一般的には、仲介の売却は平均で3カ月ほどの時間がかかると言われています。

また、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)を負う必要があるため、もし出費が発生した場合の費用負担を折半にする、などの取り決めをしておくことが重要です。

6-3. オーバーローンなら任意売却

もしオーバーローンになってしまった場合は、絶対に売却ができないのかというとその限りではありません。

場合によっては「任意売却」という方法で売却することも可能です。

任意売却とは、ローンを一括返済できないマンションを、特別に許可をもらって売却する方法です。

この場合、借金のみが残ってしまうことになりますが、基本的には無理のない返済プランに組みなして返済していくことになります。

ここで、たまに競売と勘違いをしている方がいますが、任意売却と競売は異なります
任意売却の場合は、通常の仲介での売却とほぼ同じですので、相場前後の価格で売却が可能ですし、第三者からはどういった事情で売却したのかはわかりません。

それに対して競売とは、ローンの返済が滞った場合に債権者の申請によって裁判所権限で差し押さえ、強制的に競売にかけられることを言います。
この場合、執行官が家にやってきますし、競売情報は官報にも掲載されるため第三者に差し押さえられたということがばれてしまいます。

また、競売になると相場の7割前後で落札されることが多く、より多くの借金が残ってしまうことになります。

中には、それなら住み続けたほうがいいと考える方もいるかもしれません。
しかし、オーバーローンの物件に住み続けるということは、離婚後もマンションを所有し続ける様々なリスクから解放されません。

それどころか、病気や事故、リストラや転職などで収入が途絶えたり、収入が減って滞納してしまえば任意売却すら認められなくなるケースもあります。

そうなってしまえば、より多くの借金が残り、返済のあてがなければ自己破産せざるを得ない状態に陥ってしまう可能性があります。

そのため、任意売却できるうちに手放したたほうが、今後の人生設計をたてやすくなります

7. 離婚時のマンション売却に関わる税金

離婚時の財産分与にともなうマンション売却では、税金が発生するケースがあります。

どのような場合に税金が発生するのかを確認していきましょう。

7-1. 贈与税はかからない

基本的に財産を贈与する場合には贈与税がかかります。

しかし、離婚による財産分与では「相手から贈与されたものではなく結婚生活の清算や、離婚後の生活保証のため」のお金のやり取りであるため、贈与税はかかりません

ただし、「分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合」や「離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合」は贈与税がかかるので注意が必要です。

この基準は曖昧なため、不安がある場合は税理士や税務署に相談をしてみましょう。

7-2. 譲渡所得税がかかる

マンションの売却によって利益が生じた場合には「譲渡所得税」がかかります。

詳しい計算方法はこちらをご参照ください
不動産税理士執筆!マンション売却時の取得費と減価償却費の計算方法

ただし、こちらは利益が出ても3000万円の特別控除を使う事で、税金を控除することが可能です。
この特別控除を活用すると、ほとんどの居住用のマンションは控除が可能となるでしょう。

購入時よりも極端に値上がりが起きていない限りは、あまり心配する必要はないでしょう。

ただし「3000万円の特別控除」を使う場合、2年は「住宅ローン控除」が使えなくなるため、離婚してすぐ住宅ローンを組んでマンションや戸建てを買う予定がある場合は、どちらの控除を使った方が得になるか計算して決めましょう。

7-3. 譲渡所得税の請求は名義人にくる

万が一、3000万円の特別控除を上回る利益が出た場合や、3000万円の特別控除を使わず課税された場合、基本的にマンションの名義人となっていた人に課税がきます。

そのため、財産分与を行う際は課税分も考慮して、取り決めをするようにしましょう。

8. まとめ

ここまでで説明したように基本的には、離婚を機にマンションを売却したほうがいいでしょう。

その方が財産分与も簡単になりますし、現金化することで公平に分与ができるようになるため、無用なトラブルに発展するリスクを回避できます。

そのためにはまず、売却が可能かを確かめるために、ローンの残債と、マンションの価値を早めに調べておきましょう。

そして、その結果を元にパートナーと十分な話し合いを行いをして、すっきりと新しい生活を始められるようにしていきましょう。

-売却理由, 離婚