ある日、とつぜん転勤が決まったとき、持ち家のマンションをどうしますか?
家族構成やマンションの状況、人生設計などによって選ぶべき選択は変わってきますが、多くのかたは次の3つのうちのどれかを選択することになります。
- 空き家のまま保有する
- 売却する
- 賃貸に出す
どの選択にもメリットとデメリットがあります。
そこでこちら記事では、あなたの状況に応じたおすすめの選択肢を紹介し、それぞれのメリットとデメリットについてわかりやすく解説していきます。
転勤の内示が出てからだと想像以上に時間がない状況ですので、こちらを読んですぐに行動を起こせるようにしましょう。
1. 転勤が決まったら自宅マンションはどうする?
マンションをどうするかを決めるうえで大切なことは、「今どうしたいと思っているか」ではなく「将来どうなるか」を考える必要があります。
具体的には、以下の3つを考えましょう。
- 転勤は長いのか短いのか、それとも期間は未定なのか
- 確実に戻ってくるのか、戻ってこない可能性があるのか
- 将来、家族構成に変化が起きる可能性があるか、ないか
そして、具体的に自分たちのマンションはどうするべき物件なのかを把握しましょう。
1-1. 空き家のまま保有しててもいいマンション
空き家のまま放置していてもいい物件の条件は、転勤が短期間と決まっている場合です。
具体的には、1年以内に返ってくることが決まっている転勤です。
なおかつ、今住んでいるマンションに必ず返ってくることが決まっている場合は、空き家のままでも問題はないでしょう。
1-2. 売却したほうがいいマンション
売却したほうがいいマンションは、まず転勤の期間が未確定の場合です。
どれくらいの間家を開けるかわからず、さらに、このマンションに確実に戻ってくるかわからないのであれば、売却をしてしまった方がいいでしょう。
また、これから結婚や出産、子どもの成長期、両親との同居などで、転勤前と転勤後で生活スタイルが変化する可能性がある場合も売却した方がいいでしょう。
1-3. 賃貸に出した方がいいマンション
賃貸に出した方がいいマンションは、転勤の期間が長期と決まっている場合です。
ただし条件が2つあり、1つは好立地であるということです。
都心部にあるマンションで、なおかつ最寄り駅から徒歩5分(遠くても7分圏内)にあるマンションは賃貸に出せば収益化できる可能性が高くなります。
もう1つの条件は、住宅ローンが残っていないという事です。
ローンが残っている状態で賃貸に出し、転勤先で住居を借りている場合、もし空室となると二重の居住費が発生し、思いがけず生活が圧迫される可能性があります。
この2つの条件を満たせていないマンションは、リスクが高すぎるのでおすすめしません。
続いては、それぞれの選択肢の具体的なメリットとデメリットを解説していきます。
どの選択をするとしても、必ず良い面と悪い面を理解したうえで選択するようにしましょう。
2. 転勤に伴い空き家するメリットとデメリット
最初に、空き家で保有し続けるのメリットとデメリットを解説します。
2-1. 空き家のメリット
まずは、空室のまま所有し続けるメリットをまとめます。
2-1-1. 好きなタイミングでマンションに戻ることができる
空き家のままにしておくことで、いつでも好きなタイミングでマンションに戻り、住み始めることができます。
売却では手放すことになりますし、賃貸に出していれば居住者が出ていかない限りは戻ってくることができません。
2-1-2. 人に汚される心配がない
賃貸に出す場合は、居住者によって家が汚されたり、破損させられてしまう危険があります。
それに対し、空き家のままにしておけば他人によって傷つけられる可能性はほとんどありません。
2-2. 空き家のデメリット
続いては空き家のデメリットをまとめます。
2-2-1. 維持費がかかり続ける
マンションを空き家のまま所有し続けている間、管理費や修繕積立金、固定資産税などの様々な維持費がかかります。
所有し続けるためとはいえ、これは完全に無駄な出費となってしまいます。
2-2-2. 部屋が痛むのが早くなる
建物は誰も住んでいないと劣化が早くなってしまいます。
そのため、定期的(1カ月に1回程度)にマンションに戻って、換気や清掃、設備の試運転などを行い、メンテナンスを行う必要があります。
理由は、空気が停滞して湿気がこもったり、クロスや壁紙などにはカビ類が繁殖しやすくなってしまうからです。
2-2-3. 二重の居住費用の問題
住宅ローンが残っている状態で転勤が決まり、転勤先で住居を借りることになったとします。
この場合、空き家のローン返済と、新居の賃貸費用で二重の居住費用がかかることになります。
そのため、経済的な負担を考慮すると、短期の転勤以外はおすすめしない選択肢です。
3. 転勤に伴い賃貸に出すメリットとデメリット
続いてはマンションを賃貸に出した場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。
3-1. 賃貸のメリット
まずは、賃貸に出した場合のメリットをまとめます。
3-1-1. 家賃収入が発生する
マンションを賃貸に出すことで家賃収入が発生します。そして、その家賃収入から住宅ローンの返済をしていくことが可能となります。
賃貸用マンションではなく、分譲マンションの場合は設備のグレードが高く、同じ間取りでも相場よりも高い家賃で貸し出すこともできるでしょう。
そのため、少なくとも2年以上は転勤する場合は、十分に考慮に値する選択肢となります。
3-1-2. マンションを手放さずに済む
家賃収入で返済を続け、最終的にローンを完済することができればマンションが資産として残ります。
売却した場合にはない大きなメリットと言えます。
3-1-3. 経費計上で節税できる
賃貸経営の中で生じる支出を経費として計上し、節税することができます。
この経費を上手く使い、給与所得と合算して確定申告を行うと、納めすぎていた税金が還付される場合があります。
具体的には以下のものが経費として計上が可能です。
- 税金(固定資産税、都市計画税、不動産取得税、収入印紙代など)
- 保険料(火災保険、地震保険)
- 管理費や修繕積立金
- 修繕費用(ハウスクリーニング費用、背給湯器やエアコンの交換費用)
- 管理会社への管理委託費用(一般的には家賃の5%程度)
- 税理士、司法書士への依頼費用
- 建物の減価償却費
- 住宅ローンの金利(元本は計上できません)
賃貸経営をするからこその節税手段となります。
3-2. 賃貸のデメリット
続いては賃貸経営を行うデメリットについて解説していきます。
賃貸はデメリットの項目が多くなっていますが、賃貸に出す可能性があれば他人事ではないので必ず目を通しておきましょう。
3-2-1. 維持費がかかる
マンションは所有してるだけでお金がかかります。
- 住宅ローンの元本と利子の返済
- 管理費
- 修繕積立金(場合によっては大規模修繕の一時金)
- 税金(固定資産税、都市計画税)
- 保険料(火災保険、地震保険など)
これらの維持費は、空き家で所有し続ける場合と同様です。
3-2-2. 賃貸に出すと出費が増える
賃貸に出すことによって、維持費以外のお金も必要となってくるので注意が必要です。
- 入居者募集の広告費
- 管理会社への管理委託費や事務手数料
- 設備(給湯器やエアコンなど)の修繕費
- 退去後のクリーニングやリフォームの代金
- 所得が発生した場合は所得税
これらの費用が発生するようになり、自分が住んでいる時にはなかった様々な費用が発生するようになります。
3-2-3. 空室というリスク
賃貸経営をするうえで最も考えなくてはいけないことは、空室リスクがあるということです。
基本的に空室となった場合は収入が0円になるうえに、上記した費用がかかります。
つまり、これらがまるまる赤字になってしまうという事です。
空室は決して稀な状態ではありません。
総務省統計局から発表された「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国に約431万戸の賃貸用住宅の空き家があるとされています。
賃貸住宅だけで計算すると、約20%の賃貸用物件が空き家と言われています。
十分な貯蓄があり、例え空き家が続いてしまっても生活を圧迫しないかを十分に考慮する必要があります。
3-2-4. 家賃滞納というリスク
空室だけが問題ではなく、入居者はいるけど家賃を払ってもらえないというケースもあります。
もちろん、管理会社は支払うように催促をしてくれますが、必ずしも払ってもらえるわけではありません。
もし、家賃を払ってもらえないのであれば退去してもらうしかないでしょう。
しかし、立ち退きに関しても賃借人保護の観点から難しく手間がかかってしまいます。
電話や手紙で家賃の支払い通知をします。
督促状の送付したうえで応じてくれなければ、ようや契約解除が行えます。
そこから明け渡し請求訴訟を行います。
そして、裁判所から訴えが認められてようやく明け渡しの強制執行が行われます。
なお、契約解除は3カ月ほど滞納されてようやくできますが、居住者が生活に困っているような場合だと、6か月の滞納でも契約解除ができないというケースもあります。
もちろん、滞納されている間は家賃収入は0円ですし、提訴する際にかかる費用も大家の負担となります。
3-2-5. 家賃の下落
築年数が経過することによって、家賃は下落していくものです。
しかし、賃貸経営を考えた場合、そのことを考慮せずに収支の試算をしてしまうケースが少なくありません。
すると、将来計算が合わなくなり、想像以上に生活が苦しくなってしまう危険があります。
もし業者に試算をしてもらう場合は、必ずこの家賃の下落を考慮して計算がされているかのチェックが必要です。
3-2-6. 退去は入居者の都合次第になる
賃貸に出していると、異動や転職をきっかけにそのマンションに戻ろうと思っても戻れなくなります。
というのも、通常の賃貸契約をした場合、上記した賃借人保護の観点により、相当な理由がない限り入居者に出て行ってもらうことはできません。
「数カ月のあいだ滞納している」だったり「マンションが倒壊する危険がある」などの理由が必要となります。
基本的に2年ごとに更新を行いますが、この時も入居者が更新を申し出た場合は拒否できません。
相手が「退去する」と言わない限りは、出て行ってもらうことができないのです。
もし、決められたタイミングで出て行ってもらいたい場合は、定期借家契約という方法があります。
これはあらかじめ、出ていくタイミングを契約書に盛り込んで結ぶ賃貸契約です。
ただし、出ていかなくてはいけない期限が決まっている物件は借り手がつきづらく、賃料も低くなりがちなので注意が必要です。
3-2-7. ローンの借換リスク
賃貸に出す場合は、住宅ローンからアパートローンに変更しなくてはいけなくなる可能性があります。
アパートローンに変更した場合は金利が高くなり、基本的に1~2%程度の金利が上乗せされると言われています。
あまり変わらないように感じるかもしれませんが、例えば3000万円を35年のフルローンで借り入れた場合、最終的な返済額は0.5%と2.0%では1000万円近く変わります。
月々の返済に関しても、2万円ほど負担が上昇します。
もし、金融機関に黙って賃貸に出すと、ばれた場合にはローンの一括返済をされる危険性があるので必ず話を通しておく必要があります。
金融機関の裁量次第となりますが、転勤をやむを得ない理由と認め、ローンの変更をせずに済む場合もあります。
3-2-8. 特別控除が使えなくなる
自分が住まなくなってから3年以上経過すると、「3000万円の特別控除」という特例を受けることができなくなります。
これは、自宅用に買った不動産を売却する場合、発生した利益に対して3000万円までは税金を課さないという特例です。
多くの物件はこれを使う事で売却時の税金を全額免除することができますが、賃貸に出してから3年以上経過した場合この特例は使えなくなるので注意が必要です。
3-2-9. 賃貸中の売却は安くなる
賃貸中の物件を売却する場合は、通常のマンション売却とは異なります。
基本的に収益還元法という、投資物件の利回りで計算して売却価格を算出します。
また、賃借人が入居中ということで購入者は内覧できないため、多めの修繕費用を計算にいれて価格が出されます。
結果として、通常の一般売却と比較して10~30%ほど安く売却することになるので注意しましょう。
3-2-10. 資産価値が下がるリスク
基本的にマンションは築年数が経過するほど安くなります。
そのためいま売った場合と、将来売った場合を比較すると、売却価格はどうしても低くなってしまうものです。
それだけではなく、賃貸に出し続けるということは、なにかしらの事件や事故、自殺、孤独死などがマンションで発生し、事故物件と化してしまう可能性があります。
もし事故物件になってしまえば、資産価値の急激な下落は避けられません。
4. 転勤に伴い売却するメリットとデメリット
続いては、転勤に伴ってマンションを売却するメリットとデメリットを解説していきます。
4-1. 売却のメリット
まずは、売却のメリットを見ていきましょう。
4-1-1. 維持費がかからない
当然のことながらマンションを手放すので、維持費は一切かからなくなります。
マンションを所有するうえでかかる固定費(管理費や修繕積立金、固定資産税、都市計画税)などが一切かからず、賃貸に出す場合の管理委託費用や手数料、広告料などの出費はなくなります。
それだけではなく、売却金で住宅ローンを完済すれば、背負った借金から解放されます。
これは、売却という選択肢にしかないメリットです。
4-1-2. 現金が入る
一括で現金が入り資金的に余裕が生まれると、新たな生活設計が組みやすくなります。
住みたい地域がある場合は、次に購入するマンションや一戸建ての購入資金に当てることも可能となります。
また、ローンの残っているマンションを所有し続けた場合は、限度額の問題から新たにローンを組むことも難しくなるため、新居を考える場合は売却は必要なこととなるでしょう。
また、賃貸に入って、そのお金は子どもの学費に使うこともできますし、いざという時の蓄えとして貯蓄しておいたり、資産運用をして増やすこともできます。
4-1-3. 資産価値が下がる前に手放せる
今すぐに売却するか5年後に売却するかによって、売却価格が数百万円という額で変わることも十分にあり得ます。
特に築20年以内のマンションの場合は、1年ごとに下落する価値幅は大きいため、より高く売れる可能性があります。
基本的にマンションは長く所有した分だけ資産価値は下がってしまいます。
そのため、必要性もなく長く所有し続けてしまうより、少しでも早く売却したほうが高く売れるというメリットがあります。
4-2. 売却のデメリット
続いては、売却した場合のデメリットを見ていきましょう。
4-2-1. マンション(資産)を手放すことになる
マンションを売却するため、資産として手元には残りません。
当然、将来的に帰って来ることもできず、一度手放せば再取得は運次第となります。
そのため、絶対に手放したくない、一生住むと決めている、というような物件は、経済的理由などがない限りは無理に売却しない方がいいでしょう。
4-2-2. 購入から5年以内だと税金が高くなる
もし、マンションを取得してから5年以内の場合、税金が高くなってしまいます。
取得から5年以内か5年以降かによって、税率が40%か20%と倍近く変わります。
ただし、この税率の違いは投資目的の短期所有対策とされており、マイホームとして購入している物件であれば3000万円の特別控除を使い非課税にする事ができます。
これは所有者が住まなくなってから3年以内と決まっているため、例えば賃貸に出して3年が経過すると利用できなくなるので注意が必要です。
5. 空き家、賃貸、売却のメリット、デメリットのまとめ
空き家でそのままにしてもいいマンションは、短期間の転勤でなおかつ必ず戻ると決まっている場合に限ります。
もし賃貸に出すのであれば、ローンを完済済みであり、なおかつ都心部の駅近物件以外は基本的におすすめしません。
ただし、「絶対にこのマンションは手放したくない!」という場合は、所有マンションが賃貸に向いているかを不動産業者に相談をしてみてもいいでしょう。
売却するべき物件は、上記に当てはまらない物件です。
転勤の期間が未定、再度同じ地域に転属するとは限らない、という場合は売却をおすすめします。
また、転勤中に子どもが生まれる予定、子どもがいる家庭など、生活スタイルに変化が起きる予定がある人も手放してしまった方がいいでしょう。
我が家はその時の生活スタイルに合ったところに、その都度住み替えていくのが最も充実した人生を送る秘訣の一つでもあります。
6. 賃貸に出したら収益化可能かを簡単に計算する方法
もし、マンションで賃貸経営をしてみたい、賃貸に出したら収益が発生するのか知りたい、という場合は収支の計算をしましょう。
まずは、どのように計算したらいいのかをざっくりと解説していきます。
6-1. 収入の計算
賃貸経営をした場合の収入がどれくらいになるのかを計算する場合、以下のように計算をおこないましょう。
【計算式】家賃×12カ月×入居率(85%)=年間の家賃収入
賃貸経営では常に入居者がいるという物件はなかなかないので、年に1~2カ月の空室が発生した場合を想定(85%)して計算をします。
6-2. 支出の計算
年間の家賃収入がわかったら、次に支出を計算していきます。
以下の項目を全て加算した額が支出となります。
- 【固定資産税】年間の支払額
- 【管理費】年間の支払い額
- 【修繕積立金】年間の支払額
- 【保険料】火災保険や地震保険など
- 【管理会社への管理手数料】家賃の5%
- 【ローンの支払い】年間の返済額
- 【入退去に伴うリフォーム、広告費、設備修繕費】4年に一度40万円とし、年間では10万円と仮設定
これらを全て加算して、支出と比較してみましょう。
結果が賃貸経営をした場合の毎月の収支となります。
上記の家賃に関しては、不動産業者などからマンションを賃貸に出した場合はいくらで貸せるのかを確認してみましょう。
マンションナビという不動産一括査定サービスであれば、売却したときの値段と同時に、賃貸に出した場合にはいくらで貸せるのをチェックすることができます。
無料で試せるので、売却か賃貸のどちらかを選ぼうと思っている人や、どちらかで悩んでいる人は試してみてもいいでしょう。
重要なことは、毎年発生する損失が発生し続けるような場合は、預貯金を切り崩すこととなり、そのような生活が耐えられるのか、といったところを考える必要があります。
預貯金を切り崩しキャッシュがなくなり、突然の大病を患った時にお金がない。
生活を切り詰めるなかで子どもに我慢を強いてしまう。
といった危険も危険もあります。
長期的な視点で生活を考えることも重要ですが、いまの生活をどこまで圧迫していいものなのかを冷静に考えるようにしましょう。
7. 転勤に伴ってマンションを売却する場合の流れ
続いては、もし売却を決めた場合どのような流れで売却をおこなうのかを見ていきます。
大まかな流れは以下のようになります。
- 引っ越しまでの期間を把握する
- 住宅ローンの残債とマンションの売却価格を調べる
- 信頼できる不動産業者を見つけて契約を結ぶ
- 売却活動を開始して買い手が現れるのを待つ
- 買い手が見つかったら売買の契約を結ぶ
- マンションを引き渡し代金を受取って取引が完了
この時、よくご質問であるのが「どのタイミングで売却を始めるべき?」ということについてです。
結論から言うと、売却するならできるだけ早く活動を開始した方がいいでしょう。
というのも、マンションの売却は完了するまでには平均3カ月の時間がかかると言われています。
一般的に転勤の内示は1カ月前~2週間前であり、需要の高いマンションや相場よりも安く売り出さない限りは、住んでいるあいだに売却できるケースは少なくなります。
転勤先へ引っ越したあと、買い手が見つかるまでの期間のローン返済や管理費、修繕積立金、税金などの費用が発生しますが、これらは無駄な費用となってしまいます。
そのため、できるだけ早く売却を初めて、ベストは引っ越すタイミングに合わせて引き渡しを行うことです。
それができなくても、できるだけ早く売却することで、無駄な出費を抑えることができます。
8. 転勤時のマンション売却のコツ
続いては、転勤時にマンションを売却する際に損しないためのコツを紹介します。
8-1. 正しい業者選びをする
マンションの売却で最も重要なことは、信頼できる不動産業者を選ぶということです。
というのも、不動産業者と言っても能力はピンキリで、下手な業者を頼れば安く売れ、優秀な業者に頼れば高く売れるというような、流動的な市場なのです。
ただ、「優秀な不動産業者を見つけるべき」と言われても、どうやって見つけたらいいのか分からないという人も多いかと思います。
そこでおすすめする方法が、複数社を頼るという方法です。
1社から話を聞いても、その業者が優秀なのか、対応は丁寧なのかなどが判別しにくいものです。
しかし、複数の業者から話を聞けば、能力や対応の善し悪しの判別がつくようになります。
特に転勤による売却の場合、引っ越した後は不動産業者の仕事ぶりが見えづらくなります。
そこで、安心して売却を任せられる業者を見つけつことができれば、売却活動で神経をすり減らさずに済みますし、高く売却することにも繋がります。
「時間に余裕がなく業者を比較するのは大変」という方の場合は、不動産一括査定サービスを利用することで、かんたんに不動産業者を比較できます。
マンション売却に関しては、まずマンションナビを使ってみるといいでしょう。
8-2. 契約の種類を間違えない
実際に査定を受けてみて、業者の比較検討を行い信頼できる不動産業者が見つかったとします。
次は、実際に売却活動を始めるために、不動産業者と「媒介契約」というものをむずびます。
「媒介契約」というのは、「御社に売却の仲介をお願いをします」という契約です。
この時、契約の種類に注意が必要です。
契約には3種類あり「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」という3種類があります。
一般媒介契約 | 複数の不動産業者と契約できる。 売主に対する報告義務はない。 |
専任媒介契約 | 1社の不動産業者としか契約できない。 知人などに買い手が見つり直接契約をおこなった場合は、手数料を支払わずに取引ができる。 売主に対する2週間に1回の報告義務あり。 |
専属専任媒介契約 | 1社の不動産業者としか契約できない。 知人などに買い手が見つかった場合も手数料を支払う。 売主に対する週1回の報告義務あり。 |
このような違いがあります。
この中で選ぶべき契約は「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」です。
たまに、「一般媒介契約は競争原理が働いて有利」という旨の情報がありますが、残念ながらそれは期待できません。
一般媒介契約はインターネットがなかった時代(直接不動産屋を訪れないと物件情報が入手できなかった時代)に有利な契約方法です。
今どき、一般媒介契約の物件は「いくら広告にお金をかけても他の業者が契約を取れば1円も入らないから」と、熱心な売却活動をしてくれない業者の方が多いのです。
また、報告義務もないため、契約を結んだ業者がちゃんと売却活動してくれているのか把握することもできません。
そのため、マンション売却専任媒介契約や専属専任媒介契約のように、報告義務があり、なおかつ業者のやる気が出やすい契約方法を選んだ方がいいでしょう。
9. 時間がない、すぐに売らなくてはいけない場合
例えば転勤先で新居を購入予定などといった理由で、転勤までに売却しなくてはいけないという方もいるでしょう。
その場合、平均3カ月の時間がかかる仲介での売却ではなく、業者による買取を選んだ方が早く売却ができます。
買取のメリットは、早ければ2週間、長くても1カ月以内に現金化が可能だということです。
また、仲介による売却では「契約不適合責任(契約時に知らされてなかった不具合が購入後に見つかったら修繕費を払ったり、内容によっては契約解除の対応をする)」というものがありますが、買取の場合はこの責任がありません。
その代わりデメリットもあります。
業者買取にした場合は、仲介で売れるであろう値段の7割~8割程度の価格で売却することになります。
業者は買取後にリフォームをしてから再販売して利益を得るため、一般的にはそれくらいの値段での買取になります。
そのため、まだローンが残っているという方や、できるだけ高く売りたいという方は買取での売却はおすすめしません。
もし買い取りを依頼するという場合は、仲介時の査定と同様に、必ず複数社から買取査定を受けるようにしましょう。
10. まとめ
転勤によるマンション売却は、時間に追われた売却になってしまいがちです。
そのため、業者を精査せずに媒介契約を結んでしまい、もっと高く売れたはずの物件を安く手放してしまいがちです。
そのため、必ず心がけるべきことをお伝えします。
焦って売却する必要はない
(マンション売却は焦って良いことはありません)
スタートは先延ばしにしない
(スタートが遅れれば売却も遅くなり、その分無駄な出費が増えるので、できることは今すぐスタートしましょう)
必ず複数社を利用し比較検討はじっくりと行う
(信頼できる業者と契約を結べるかで、結果がかんたんに数百万円レベルで変わります)
以上を心がけて、マンション売却で失敗しないようにしていきましょう。