離婚をするにあたって、マンションをどうするかで悩む方は少なくありません。
もしかしたら「このまま誰かが住む」か「売却する」かで、互いに対立している場合もあるでしょう。
しかし、ある程度決まっている答えはあります。
それは「基本的には離婚を機にマンションは売却をしたほうがいい」ということです。
その理由を、財産分与の考え方や、所有し続けた場合のリスク、起こりうるトラブルなどを解説し、また売りたくても売れないケースなどについてもわかりやすく説明していきます。
マンションをどうするかによって、後々大きなトラブルとなることも少なくありません。
こちらを読んで、離婚後のマンションに潜むリスクを理解し、トラブルによる無駄な心労や出費をせず、新しい生活をスタートさせていきましょう。
目次
1. 離婚したら今住んでいるマンションはどうなる?
離婚をした場合、いま住んでいるマンションは誰のものになるのかご存じでしょうか。
これは、結婚後に購入したマンションであれば二人のものとなります。
このベースとなるものが「共有財産」という考え方です。
1-1. 共有財産とは
共有財産とは、夫婦が一緒に作り上げてきた財産のことを言います。
例えば、結婚してから購入したマンションや車、宝飾品、家具、有価証券などは共有財産となります。
また、結婚してからの預貯金や保険、将来受け取る予定の退職金や年金も対象となります。
このようにプラスとなる財産もあれば、借金や住宅ローンのようなマイナスの財産も共有財産となります。
反対に、共有財産とみなされないものは結婚前から所有していた預貯金やマンション、自動車であったり、親族からの相続や贈与で得た不動産やプレゼント、その他財産などは特有財産といい、個人の固有の財産となります。
また、共有財産と同様に、結婚前に負った借金などのマイナスの財産や、夫婦関係にあっても一方的な競馬やパチンコなどによる借金も特有財産となります。
1-2. 「共有財産」は「財産分与」する
基本的に、共有財産は財産分与をします。
財産分与とは、共有財産(結婚生活の中で夫婦が一緒に作り上げた財産)を夫婦それぞれ公平に分配することを言います。
例え、マンションや住宅ローン、保険、預貯金が誰の名義であったとしても、それは共有財産であり、財産分与の対象となります。
固有財産と特有財産をしっかり理解しておかないと、もらえるはずのものがもらえなかったり、必要以上に自分が借金を背負ってしまうことになりかねません。
また、マンションを売却する際のトラブルにも繋がってしまう危険があるので、しっかりと理解しておきましょう。
1-3. 財産分与の種類
財産分与には基本的に3つの種類があるので、ご紹介していきます。
清算的財産分与 | 夫婦で協力して築いてきた財産は公平に分配する |
扶養的財産分与 | もと配偶者が離婚により困窮する場合はその生計を補助するための分与(病気や専業主婦(主夫)など) |
慰謝料的財産分与 | 傷つけた事に対するによる慰謝料の性質を含ませた分与(DVや浮気など) |
この中でも「清算的財産分与」が代表的な財産分与であり、一般的には夫婦で2分の1にします。
この時、「夫(妻)が稼いだお金だから……」と専業主婦(主夫)の方は躊躇してしまう事がありますが、例え配偶者の収入に依存していたとしても「夫は会社で頑張り、妻は家で頑張った」といえます。
そのため、分与は原則的に2分の1となります。
ただし、例外的な事情によってこの分与の割合が変わることもあります。
1-4. マンションの価格を調べてみるなら査定を受ける
財産分与において、その大部分を占める資産は不動産となるでしょう。
その不動産を実際にお金に変えて分与する場合、どれくらいの金額になるのか調べるのであれば、不動産の査定を受けてみる必要があります。
その際に便利なのが不動産一括査定サービスというものです。
これは基本的に無料で使え、1分程度のネットからの申し込みで簡単に査定結果が届くので、忙しくて時間がないと言う人でも簡単に受けることができます。
売却することが決まった場合は、査定を受けた不動産業者に売却をお願いすることもできます。
これは、所有者だけではなく所有者の親族でも利用可能ですので、とりあえず価格を把握するためにも一度試してみることをおすすめします。
一応、マンション専用の不動産一括査定サービス「マンションナビ」の公式ページへのリンクを貼っておくのでご参考にしてください。
2. 離婚をする場合は売却をしたほうがいい理由
財産分与をす場合、財産は基本的に次の方法で解決をすることになります。
- 財産を保持する人が、相手に対して金銭の支払いをする
- 財産を売却して利益を分割する
- 財産そのものを分割する
しかし、マンションは③のように「マンションを物理的に分割する」ということはできません。
そのため、実際には①の「マンションを夫または妻が保持し、その配偶者に対して金銭の支払いをする」という方法をとるか、②の「マンションを売却して利益を分割する」という選択のどちらかを選ぶことになります。
この時、基本的には②の「マンションを売却して利益を分割する」という解決方法を選ぶことをおすすめします。
その理由は、マンションの価値は変動的で分かりづらく、それでいて巨額のためトラブルとなりやすいからです。
それに対し、現金にすることができれば、数字で明確に分割できるためトラブルを防ぐことができます。
中には売却したくないと考える方もいるでしょう。
離婚をして引っ越せば住む家が変われば生活は変わります。子どもが学校に通っている場合は、転校をしなくてはいけなくなってしまうこともあります。
そのマンションに住み続けることができれば、生活の変化をある程度おさえることができますし、子どもも転校せずに済みます。
しかし、所有し続けるにはかなりのリスクがあるのです。
2-1. マンションを所有したまま離婚するリスク
離婚をしても同じマンションを所有し続けるのは、場合によっては大きなリスクとなります。
このリスクは契約の状態によって変わってくるので、自分たちがどの状況にあるのかを知り、その場合にどのようなリスクがあるのかを正しく理解しておきましょう。
2-1-1. 1、将来、売却したくてもできない
これはマンションの名義が共有名義となっている夫婦が該当します。
共有名義のマンションを売却する際は、名義人双方の同意がなければ売却することができません。
そのため、いざ売却しようと考えたときに、その元パートナーと連絡がとれない状態になっていたり、売却に同意してくれなかった場合、売却することができなくなってしまいます。
また、元パートナーが死去した場合、新しい配偶者やその子どもにマンションが相続されます。
そのため、マンションの半分の権利は自分、そして残りの半分は元パートナーの新しい配偶者やこどもたちとなります。
つまり、元パートナーの再婚相手という、赤の他人から同意を得なくては売却できなくなるということです。
子どもが自立したり、新たな家庭を持ったり、転勤や転職、親の介護など、人生には住み替えが必要になるタイミングが多々あります。
そんな時に共有名義にしたままだと、元パートナーと連絡が取れずマンションを売却したくてもできないという状況に追い込まれる危険があるのです。
2-1-2. 2、相手が払うべきローンの支払いをしなくてはいけなくなる
これは、ペアローンを組んでいる夫婦か連帯債務型のローンを組んでいる夫婦、もしくは夫(または妻)が住宅ローンの名義人であり、その配偶者が連帯保証人となっている夫婦が該当します。
この時、例えばローンの返済義務がある元パートナーが病気にかかったり、事故に巻き込まれる、失職するなどしてローンの返済が滞った場合、元夫婦の双方に対して一括返済が要求されてしまいます。
離婚しているのだから他人だと思いたいかもしれませんが、ローンの契約でそう決められているため払わないというわけにはいきません。
例え自分がそのマンションに住んでいなくても、自分は滞りなく返済していたとしても、自分が相手の借金の返済をしなくてはいけなくなる危険があるのです。
2-1-3. 3、突然マンションが差し押さえられてしまう
例えば、元妻と子どもでそのままマンションに住み、そのマンションの返済は養育費として元夫が行うというパターンがあります。
この時、元夫がちゃんと返済を続けてくれている場合は問題ありません。
しかし、失職や病気、事故により返済ができなくなったり、別の人と新しい生活を始めるのをきっかけに不払いとなるという事も少なくありません。
実際に、厚生労働省から発表された「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」によると、養育費を離婚した父親から継続して受け取れている母子家庭19.7%という数字が出ています。
また、「離婚してから年数が短い方が養育費を受け取れている」という傾向があるとも発表しています。
つまり、養育費はいずれ支払われなくなってしまう可能性は少なくないという事です。
もし、返済者が滞納し続けてしまえば、ある日突然自宅に、執行官がやってきて現況調査(裁判所の権限によって家の鍵を勝手にあけられて、自宅の写真撮影などが行われること)が行われるという状況になりえます。
そして競売が実行されてしまえば、ついに退去命令が出てマンションから追い出されてしまいます。
つまり、元パートナーの不払いが原因で住む家が突然なくなってしまう危険があるということです。
2-1-4. マンションを所有し続ける限り関係は切れない
ここまでの解説で分かる通り、マンションを所有し続けると元パートナーと関係を完全に切ることは難しくなります。
せっかく離婚をしても経済的に繋がったままで、相手のしわ寄せによって自分の新しい生活が脅かされる危険があるのです。
それに対し、もしマンションを売却して現金化し、明確な数字で財産分与を行えばリスクはなく、また後腐れもなく離婚することができます。
そのため、
- 離婚を機に完全に関係を断ち切りたい
- 離婚をしてからも元配偶者に迷惑をかけたくない
- 離婚をしてからも元配偶者に迷惑をかけられたくない
- 余計なトラブルを増やしたくない
と考えている方の場合は、マンションの売却をおすすめします。
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3. 住宅ローンや不動産の名義変更はできる?
ここまで読まれて、名義変更ができれば問題がないのでは?と思う方もいるのではないでしょうか。
実際のところ、住宅ローンや不動産の名義変更は不可能ではありません。
しかし、結論から言うと、名義変更はとても難しいです。
ここからは「住宅ローン」と「不動産」の名義変更について解説していきます。
3-1. 住宅ローンの名義変更
住宅ローンの名義変更を行う場合
「二人の名義から一人の名義のローンに変えるケース(ペアローン、連帯債務型)」
「契約者からその配偶者の名義のローンに変えるケース(単独ローン)」
この二つが主になるかと思います。
例えば、ペアローンから単独ローンへと切り替えたい場合に用いられる方法としては、住宅ローンの借り換えという方法があります。
これは共有名義で借りているローンを、単独名義で別のローンを借りて完済するという方法です。
この住宅ローンの借り換えを行うことによって、実質的に単独名義にすることができます。
ただし、新たにローンを組むには再度審査に通らなくてはいけません。
それまで夫婦の収入の合算で借り入れていたものを、夫または妻の単独での返済になるのです。
つまり金融機関が「返済できるだろう」と判断するような、相応の返済能力(経済力)があると認められない限りは住宅ローンの借り換えは難しくなります。
この返済能力の考え方は「契約者からその配偶者の名義のローンに変えるケース」でも同様で、例えば夫から妻に名義を変更する場合、夫と同様の返済能力を求められます。
金融機関が納得するような経済力がないと、住宅ローンの名義変更は難しいということになります。
3-2. マンションの名義変更
動産の名義は基本的にローンと直接関係していないため、すぐに名義変更することは可能です。
ただし、一般的な住宅ローンは「名義変更をする場合は金融機関から承諾を得る必要がある」という契約内容になっています。
そのため、無許可で勝手に名義変更を行うと、契約違反としてローンの一括返済を求められてしまう可能性があります。
では、連絡をすれば必ず名義変更できるかというと、そういうわけにはいきません。
例えば、夫が返済者でマンションの名義を妻に変える場合、承諾してもらうのは難しくなります。
基本的に住宅ローンは返済者がそのマンションに済むことを前提といて融資されているため、返済者が出ていくケースでは名義変更の許可が下りない可能性が高いのです。
ただし、妻にも夫と同様の返済能力があり、住宅ローンの借り換えを行うことができれば話は変わってきます。
また、例外的に許可をくれる金融機関もいるようですので、マンションの名義変更が必要となった場合は問い合わせてみましょう。
くれぐれも、連絡をせずに勝手に名義変更をすることだけはやめましょう。
一括返済の要求から始まり、競売、自己破産へと発展してしまう危険があります。
3-3. 名義変更のハードルは高い
このように、離婚後もマンションを所有し続けるために名義変更をするのは難しく、多くの手続きを必要とするうえに、最終的に許可がおりるまでの時間も長くなります。
もし、名義変更をせずに所有し続ければ、元パートナーと経済的に深くつながったまま、この先も生活を続けることになります。
そのため、離婚を機にすっきりと関係を清算したいのであれば、売却が最も現実的でトラブルに巻き込まれるリスクが少ない方法となります。
4. 住宅ローンが残っているマンションでも売却できる?
「住宅ローンが残っているマンションって売ることができるの?」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。
結論からいうと、住宅ローンが残っているマンションでも売却することは可能です。
ただし、ここで問題となるのがマンションの売却金額と、ローンの残債の問題です。
4-1. アンダーローンとオーバーローン
住宅ローンの残っているマンションを売却する場合、重要となるのがアンダーローンかオバーローンなのかということです。
アンダーローンとは、マンションの売却金で住宅ローンの残債を整理できる状態の事をいいます。
逆に、オーバーローンとは、マンションの売却金がローンの残債を下回ってしまっている状態のことをいいます。
基本的にローンの残っているマンションを売却する際は、ローンの一括返済が求められることになります。
多くのケースでは、マンションの売却金でローンの残債を整理することになります。
しかし、頭金を0で購入している場合や、新築を購入したけど日が浅いという物件の場合、オーバーローンになってしまうケースが多くなります。
オーバーローンになると、住宅ローンの一括返済を行うことができないので、金融機関からマンションの売却許可がおりない可能性が高くなります。
つまり、離婚を機にマンションを売却してすっきりしたいと考えていたとしても、そもそも売却することが許されないという状況に追い込まれる可能性があるのです。
4-2. アンダーローンかオーバーローンか簡単に調べる方法
自分たちのマンションがオーバーローンではないか確かめるには、実際に「ローンの残債」と「マンションの価値」を調べる必要があります。
ローンの残債を調べる場合は、金融機関から郵送されてきている「残高証明書」や「返済予定表」を確認しましょう。
もし郵送物を紛失している場合は、金融機関の担当者に連絡をして詳細な数字を確認してください。
マンションの価値を調べる場合は、「不動産鑑定士」に依頼するか「不動産業者」から査定を受けるか、どちらかの方法で詳細な価値を確かめましょう。
ただし、「不動産鑑定士」に依頼する場合、一般的に20~30万円ほどの費用が必要となります。
そのため、無駄な出費を抑えたい場合は、無料で査定をしてくれる不動産業者から査定をうけることをおすすめします。
その際、1社だけでは本当にその価格が正しい保証はないため、不動産一括査定サービス(マンションナビなど)などを使って査定を複数集め、その平均査定額で計算を行うとより正確に計算ができます。
4-3. オーバーローンになってしまった場合
例えオーバーローンとなってしまい、売却金額だけではローンを完済できなくても、預貯金やその他の資産で足りない分を補填できれば売却することができます。
ただし、補填することができなければ、売却したくても売却できないという状況になる可能性があります。
もしも、オーバーローンになってしまった場合は、金融機関に相談して「任意売却」を行う方向で交渉してみましょう。
通常、売却代金やその他の資産で住宅ローンを一括返済できない場合は、抵当権を抹消できず、金融機関からも売却の許可もおりません。
しかし、任意売却であれば、例え一括返済できなくても、抵当権を抹消してもらい売却ができるようになる売却方法です。
任意売却をした場合、借金だけが残ってしまいますが、無理のない返済プランでの返済を続けることとなります。
オーバーローンになってしまった場合は、基本的に「売却をせずに誰かが住み続ける」か「任意売却が可能であれば手放す」という方法がとられます。
まずは、自分のマンションがオーバーローンになるのか、アンダーローンなのかによってそもそも売却という選択肢があるのかないのかもわかりません。
離婚後はすっきりと関係が清算できるのか、それともできないのかという事にも繋がります。
早めにローンの残債と、現在のマンションの価値は早めに調べておきましょう。
たまに任意売却と競売を混同されている方がいますが、二つは全く別のものです。
簡単に説明すると
任意売却は「ローンを一括返済できないけど債権者に許可をもらって売却する」
競売は「債権者の要求により裁判所権限で差し押さえて強制的に売却する」
というように全く違います。
競売はローンを滞納してしまった場合に執行され、一般的には相場の60~70%程度の価格で落札されてしまい、官報で競売情報が後悔されるため第三者に知られてしまうなどのデメリットがあります。
5. マンションを早く売るか、高く売るか
それでは実際にマンションを売却する場合、「早く売りたい場合」と、「高く売りたい場合」に分けて、どのような売却方法を使えばいいのかについて解説していきます。
5-1. 少しでも高く売却するなら仲介で売却
もしアンダーローンになってしまいそうな場合や、少しでも財産分与での取り分を多くしたい場合は仲介で売却をしましょう。
仲介とは、不動産業者に買い手を見つけてもらう方法で、中古マンションの売買と言えば、一般的にはこの仲介による売買となります。
仲介の場合買い手は一般人であることが多く、価格もおおむね相場通りの価格で売却が可能となります。
ただし、買い手が見つからない限りは売却できないため、売却まで平均で3カ月の時間がかかると言われています。
5-2. すこしでも早く現金化するなら買取
すでに住宅ローンを完済している、またはほとんど返し終えている場合で、できるだけ早くマンションを売却して関係をすっきりさせたいという方は買取という方法があります。
こちらは、不動産業者に直接買い手となってもらう方法です。
そのため、仲介の売却と比較して短時間での売却が可能であり、早ければ1週間ほどで現金化が可能です。
ただし、不動産業者による買取は、一般的に相場の70~80%程度になってしまいます。
そのため、買取を利用するのはいくらで売れてもローンの心配はないという状況の方のみにしたほうがいいでしょう。
6. まとめ
離婚後もマンションを所有し続ける場合、様々なリスクがあり、のちのち巻き込まれる可能性のあるトラブルを紹介してきました。
特に双方の名義が絡んでいる場合はデメリットの方がはるかに多いため、多くのマンションでは離婚を機に手放した方がいいと言えます。
しかし、離婚には様々な事情があり、マンションを手放したくない、手放せないという方もいるでしょう。
その場合は、この先起こりうるリスクと、所有し続けるメリットを比較し、夫婦でお互いにしっかりと話し合って考えていくようにしましょう。