インタビュー

空き家の現状&所有者の対応策をインタビュー「有限会社ひまわりネットワーク田辺代表」

「東京に住んでいますが、実家の空き家はどうしたら良いでしょう?」
最近、マンション売却カレッジにもこのようなお問い合わせが増えてきました。

そこで、今回は創業から21年、一貫して地元の不動産屋さんとして活動されている、
有限会社ひまわりネットワーク代表の「田辺勝史」さんに、空き家の現状と対策方法についてインタビューしてきました。

1. 有限会社ひまわりネットワークと田辺代表について

-はじめまして、今回はインタビューにご協力頂きありがとうございます。

田辺代表:よろしくお願いします。

-まずは、田辺様の自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

田辺代表:田辺勝史と申します。生まれも育ちも柏崎ですが、大学時代は東京でした。
卒業後、地元のホームセンターに就職しましたが、実家が貸家・貸ビル業をしていたのもあり地元の不動産会社に転職し、10年近く勉強しました。

-その後、独立されたということですよね?

田辺代表:はい、10年近く不動産業を経験したことで知識やスキルには自信が出来たので、「この業界でいこう」と独立に踏み切りました。

-会社としてはどのような部分に力を入れていらっしゃるんですか?

田辺代表:(1)スピーディー、(2)フレンドリー、という部分に力を入れています。

-まず、スピーディーについて詳しく教えてください。

田辺代表:まず弊社の物件はすべてデータ管理されているので、希望のお部屋を瞬時にご提案できます。
また、ネット上から内覧予約が出来るので、お客さまに電話の手間を取らせることがありません。

-フレンドリーについてもお願いします。

田辺代表:ネットの内覧予約というのも気軽にお店に来てほしいという思いがありますし、スタッフにもコミュニケーションの重要性、きめ細やかなフォロー、は徹底して貰っています。
実際、一度契約されたお客様がふらっと立ち寄って、お喋りだけして帰る、なんてこともしょっちゅうです(笑)

-代表として、それは全然OKなんですね(笑)

田辺代表:はい、フレンドリーを掲げていますから大歓迎ですね。

2. 空き家が増えてしまった理由

-全国で空き家が問題になっていますが・・・なぜ、取り壊されず放置された空き家が増えてしまったのでしょうか?

田辺代表:空き屋が増えてしまう最大の原因は人口減少です。
人口が減っているにも関わらず、新築はどんどん建てられますから空き家が増えるのは当然と言えます。日本人は新築好きですから。

-子供たちはそれぞれ家庭を持ち新築を購入していれば、両親が亡くなった段階で実家は空き家となってしまいますもんね。
でも、どうして空き家を相続した段階ですぐに売らないんでしょうか?

田辺代表:たくさん思い出のある実家ですから心情的な部分もあります。あとは、遠くに住んでいたり、忙しかったりで後回しになってしまうようです。
ただ、売りたくてもなかなか売れない・・・というのも大きな原因でしょうね。

-買手が付かないということですか?

田辺代表:その通りです。地方の古い家だと買手はなかなか見つかりません。

-でも、売却が難しい家だとしても、劣化が進んで来れば危険ですし、雑草や虫なんかは周辺住民に迷惑ですよね?
そこまで空き家の劣化が進んでいなくても、人が住んでいないことで不法侵入や不法投棄の問題があると聞いた事もあります。
解体して更地にしておくこともできるんじゃないでしょうか?

田辺代表:当然そのようなリスクがありますから、みなさん解体したいのは山々なんです・・・。ただ、解体するのにもお金が掛かります。一般的な戸建でも100万円前後は必要です。

-そんなに!?大金ですね。

田辺代表:さらに税金の問題もあります。
どんなにボロボロになろうとも、建物を残していれば土地の固定資産税が最大で1/6まで優遇されるからです。普通に考えて、税金が高くなるのに、わざわざ解体費用を払ってまで更地にする人はいません。
このような税制のかな、人口は減っていますから、空き家が増えるのも当然というわけです。

3. 危険な空き家を減らすために「空き家法」を制定

田辺代表:もちろん国もこのような状況を放っておくわけにはいきません。既存の危険な空き家を減らすために「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」も施行されました。
この「空き家法」によって危険または有害な空き家は「特定空き家」として指定され、自治体が「1.助言・指導」「2.勧告」「3.命令」「4.行政代執行」を行うことが可能となりました。

-具体的に罰則はあるんですか?

田辺代表:「1.行政代執行」になれば当然、強制的に解体です。

-言い方は悪いですが、、、自治体が勝手に解体してくれるならそれはそれで良いと考える人もいそうですけど。

田辺代表:いえ、自治体が所有者に費用請求するのでそれはないですね。
そもそも「1.助言・指導」に従わず、「2.勧告」を受けた段階で『土地に対する固定資産税の優遇措置』が外されてしまいます。

-1/6になっていた土地の固定資産税が通常になるということですよね。

田辺代表:はい、そうなったら固定資産税の基準日となる翌年1月1日を迎える前に指定される原因となった部分を改善するしかありません。

-指定原因というのは、例えば「荒れ放題の庭木」が指定原因なら綺麗に伐採して改善すれば、土地の固定資産税優遇は継続されるわけですね。

田辺代表:そうですね。

-それなら取り敢えず原因部分の改善には従いますね。

田辺代表:ただ、原因部分だけ改善したところで、そもそも空き家なのですから今後も老朽化は進みます。
他の部分が原因となり、再度「特定空き家」に指定されるかも知れません。

-つまり、根本的な解決になっていないということですね。

田辺代表:その通りです。

4. 空き家は売れるうちに売るのが定石

-では、空き家を根本解決するにはどうしたら良いでしょうか?

田辺代表:まず、売却できるような空き家であれば、なるべく早くに売却することです。基本的には持っているだけで固定資産税は支払い続けなければいけませんから。
特に、相続日から3年目の12月31日を迎えていない相続空き家であれば売却に向けてすぐに動き出しましょう。税制改革で「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除の特例」が設けられたからです。

-詳しく教えてください。

田辺代表:まず、不動産を売却して利益が出たら、利益部分には税金が掛かります。
かなり簡略化した説明になりますが、3000万円で購入して4000万円で売却したら1000万円部分には課税されるということです。

-それが空き家と何の関係があるのでしょうか?

田辺代表:空き家は購入時期がかなり古いことも多いため、いくらで買ったか分らないことも少なくありません。

-いくらで購入したか分らない場合は、先ほどの例で言うと、0円で購入して4000万円で売ったという事になるんですか!?

田辺代表:さすがに0円とはなりませんが、売却金額の5%相当額として計算されるので、200万円程度です。
仮に金額が分っても、今とは貨幣価値が違うため、かなり安く計算されてしまいます。

-そうなれば大きな利益が出ることになってしまい、結果的に税金をたくさん払う必要が出てくると。

田辺代表:そこで設けられたのが、「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除の特例」です。相続日から3年経過する年の12月31日まで売却した空き家は、利益が出ても3000万円までなら控除できるという制度になります。
この特例によって、相続空き家を早めに売却するように促しているわけですね。

-相続空き家を減らすために、国は「相続した家は早めに売ってね!そうすれば税金が安くなるよ!」と言ってるわけですね。
この期間を過ぎている、もしくは売れそうにもない空き家はどうすれば良いですか?

田辺代表:それでも、どうにか売却する方法を模索した方が良いでしょうね。
先にもお伝えした通り、基本的には持ってるだけで固定資産税は取られますから。

-ただ、地方だとなかなか買手が見つからないんですよね?

田辺代表:それはあくまで前提です。
例えば、古い建物を解体して更地にするだけでも売却しやすくなります。

-でも、解体でお金を掛けたのに売れないというリスクもありますよね?

田辺代表:空き家解体の補助金が使える自治体もあるので、利用できればリスクはかなり減ります。
補助金がなくても、買主に解体費用を負担して貰う代わりに、販売価格を値引きする、といったように売却方法を工夫すれば良いだけです。

-なるほど!それは不動産会社の戦略次第ということですね。

田辺代表:最初から仲介で買手を探すのではなく、買取業者に売却するという方法もあります。

-古い空き家でも買い取ってくれるんでしょうか?

田辺代表:「こんな家は売れない・・・」と売主さんが諦めていたようなものでも、買い取ってくれた事例もたくさんあります。彼らは、買い取った空き家をリフォームやリノベーションして、付加価値を付けて再販する独自ノウハウを持っているからです。
『今時の若い人が好きそうだなー』って感じにキレイに蘇ってるのを見ると感動すらしますね。

-他にも賃貸として貸し出すという方法もアリですよね?

田辺代表:もちろんです。空き家を賃貸として貸し出す場合、リフォーム代金を補助してくれる自治体もあります。
このような制度を上手く活用すれば費用面のリスクはだいぶ抑えることが出来ますし、固定資産税や管理維持費も家賃収入でカバーすることも可能です。

-自治体も空き家問題の解決には積極的なんですね。
では、特定空き家に指定されてしまった、もしくはされてしまいそうなレベルの空き家ならどうすれば良いでしょうか?

田辺代表:ますは上記した色々な方法を検討してみてください。よほどの限界集落でなければどうにかなるものです。
限界集落だとしても自治体やNPO法人と組んでコミュニティスペース、宿泊施設、移住体験施設などとして貸し出しているケースもあります。

-そんな手もあるんですね。ここまでご説明頂いた内容は、売却や活用といった部分ですよね。
とりあえず、特定空き家に指定されないように維持だけしたいという方はどうすれば良いでしょうか?

田辺代表:空き家管理代行というサービスもあります。値段は数百円から、掃除や草刈りまでやってもらうものだと1万円前後です。

-交通費や宿泊費を比較して判断ということになりますね。

田辺代表:そうですね。ただ、問題を先送りしているだけなので、あまりオススメしません。
やはり、何かしらの対策を打つのがベストですね。

5. 空き家所有者は具体的に何からはじめれば良いのか?

-では、具体的に空き家の所有者はどこに相談すれば良いでしょうか?

田辺代表:まずは、不動産会社ですね。
ただ、利益があまり見込めない空き家の売買には積極的でない不動産業者も多いので、何社かに声をかけることが重要です。

-どの不動産会社も取り扱ってくれない、買取業者にも断られたらどうでしょうか?

田辺代表:自治体やNPO、一般社団法人などに相談になりますね。
空き家のある自治体に相談すれば、補助金があるかどうかも分りますし、NPOなどを紹介して貰えることもあります。

-それでもダメなら空き家管理代行サービスも検討といった流れでしょうか?

田辺代表:そうなりますね。
繰り返しになりますが、不動産は持ってるだけで管理費や税金が掛かりますし、さらに空き家法ができたことにより具体的な罰則も出来ました。
問題が表面化する前に、売るなり、活用するなり、早めに様々な角度からアプローチしてみてください。

-とても勉強になりました。本日はありがとうございました。

田辺代表:こちらこそありがとうございました。

http://www.himawari-network.co.jp/

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