売却手順

マンションを売却して戸建てを購入する場合はどちらを優先するべき?

いま住んでいるマンションを売却して戸建てを購入する、いわゆる住み替えを行う場合「売却と購入のどちらを先にしたほうがいいのか」で悩む方は少なくありません。

その答えをまずお伝えすると「住宅ローンが残っている場合は売却を先に始めたほうが良い」です。

この記事では先に売却を始めたほうが良い理由をデメリットも含めて解説しつつ、どうしても購入が先になってしまうケースの対策についてもお伝えします

そして住み替えでよく勘違いされがちなことを把握し、無用なトラブルに巻き込まれないようにしましょう。

1. マンションの売却を先に進めるメリット・デメリット

住み替えをするにあたり、ローンがまだ残っている場合は売却から進める「売り先行型」で始めるべきです。

しかし、実際に住み替えを行う人で、特に若い方は次の物件を決めてから売却を考える傾向があります。
賃貸のように次の部屋を見つけてから、今の部屋の解約をするのと似た感覚の方が多いようです。

それに対し、ある程度年齢が上になると先に売却を進める方が多くなります。
その理由は、不動産の取引を一度経験した人は、売り先行型の方が住み替えがスムーズにいくと理解しているからです

そこで、なぜ売り先行型がいいのかメリットとデメリットを比較して解説をしていきます。

1-1. 売り先行型のメリット

1-1-1. 資金計画をたてやすくなる

あらかじめ売れる値段が確定していることで、新居の頭金をどれくらい用意できるか、貯蓄にどれくらい回せるか、などが明確になります。

また貯蓄を切り崩すことなく、売却金で引っ越し費用や家具の新調費用にどれくらい充てられるかなどもわかるため、資金計画をたてることができます。

結局売るのだから手に入る金額は変わらないのでは、と思うかもしれません。
しかし、マンション売却では素人が考えるよりもはるかに安い価格でしか売れないケースがあります。

3000万円で売れると思い買い先行型で資金計画をたてたら、実際は2500万円でしか売れなかった……となれば、人生設計そのものが狂ってしまいかねません。

そのため、新居を探すよりも先に、少なくともマイホームの査定などは最低限行っておく必要があります。

1-1-2. 売却期間によゆうがあるため強気な価格設定で勝負ができる

マンションの売却を先に進めるということは、余裕のあるスケジュールで住み替えを行うことができます。

もし買い先行型で旧宅のローンが残っている場合は、新居のローンの関係からマンションを売らなくてはいけない期間が決まります。

3000万円で売りに出した場合、その期限が近づいてくると値下げせざるを得ません。
タイミングが悪く、相場程度の値段に下げても買い手が現れなければ、相場以下まで値下げをしなくてはいけなくなります。

それに対し売り先行型の場合、わざわざ相場以下にしてまで売る必要はありません。

強気な価格で売りに出し続けることも可能ですし、期限に焦って売りたたく必要性も出てきません。

1-2. 売り先行型のデメリット

1-2-1. 仮住まいに住む期間が発生する場合がある

いま住んでいるマンションを売却し、それにあわせて新居の購入が間に合えば仮住まいに住む必要はありません。

しかし、どうしても旧宅の売却から新居の購入までに時間が空き、その間に借り住まいを用意しなくてはいけなくなるケースもあります。

その場合、仮住まいの費用が発生します。
また、旧宅から新居へといった1回の引越しではなく、旧宅から仮住まいへの引越しと、仮住まいから新居への引越しの2回の引越しが必要となります。

1-2-2. 住みたい家を買い逃す可能性がある

売却期間中に住みたい家や土地が見つかったものの、マイホームの売却が終わるまでに売れてしまうというケースがあります。

不動産は一度売れると、次に売りに出されるのはいつになるのかわかりません。
数年後か数十年後か、あるいは生きている間に二度と売りに出されない可能性もあります。

そして売り先行型では、欲しい不動産を買い逃してしまう可能性があります。

ただ、これに関しては対策があります。
基本的には売り先行型で進めるべきだと思いますが「この物件は絶対に逃したくない」という出会いがあった場合に使える方法があります。

これは、今のマンションにローンが残っている場合でも使える方法ですので、順を追ってしっかりと解説します。

このように、売り先行にはメリットとデメリットがありますが、「資金計画を明瞭にする」「売却で焦ってしまわない」という点から、売り先行で進めるべきでしょう。

2. 新居の買いを先行するメリット・デメリット

ローンが残っている場合は売りを先行型で進めるべきですが、すでにローンを完済していたり、資金に余裕がある場合は買い先行という選択もありです。

ただし、買い先行型にもメリットとデメリットがあるため、正しく把握したうえで選択するようにしましょう。

なお、基本的には売り先行のメリット・デメリットの反対ですので簡単に解説していきます。

2-1. 買い先行型のメリット

2-1-1. 住みたい家に住むことができる

買い先行であれば売却のタイミングに関係なく、気に入った物件をすぐに購入することができます。

2-1-2. 仮住まいに関わる費用が発生しない

買い先行の場合、今のマンションに住んでいる状態で新居を購入することになります。
そのため、仮住まいなどを用意する必要がなくなります。

また、旧宅から新居への引越しの1回で済み、その分の費用や手間を削減することができるというメリットがあります。

2-2. 買い先行型のデメリット

2-2-1. 期限に焦って安く売却してしまう可能性があがる

ローンが残っている状態での買い先行は、売却までの期限が決められて売り急いでしまう危険があります。

また、マンションの売却には平均で3カ月の時間がかかると言われ、売りに出したから簡単に売れるというものではありません。

半年、1年とかかるケースもあるため、焦りで売りたたいてしまったり、不安で強いストレスを感じてしまう人は少なくありません。

2-2-2. 無駄な維持費が発生してしまう

新居を購入し引っ越した後、空いた旧宅マンションの維持費がかかります。

例えば管理費や修繕積立金、固定資産税、もしローンが残っている場合はローンの利子も無駄な出費となります。

空き家にしてからすぐに売れれば少額で済みますが、売却までの期間が長引けばその分のお金を無駄にしてしまいます。

基本的に買い先行型の主だったメリットは「住みたい家を買い逃さない」という点ですが、売り先行型で初めても買いたい家を買い逃さない方法はあります。

そのため、わざわざ買い先行で進めるメリットはほとんどないと言えるでしょう。

3. 住み替え時に一番注意が必要なのはオーバーローン

住み替えでマンションにまだローンが残っている際に注意すべきことは、オーバーローンになっていないかどうかということです。

3-1. オーバーローンとは

オーバーローンとは、マンションを売却したお金でローンを全額返済できない状況のことを言います。

例えば、ローンの残債が3000万円で、マンションの売却金が2500万円のような状況です。

オーバーローンになると何が問題かというと、マンションを売却することができない可能性が出てくることです。

ローンの残っているマンションには、基本的に抵当権が設定されています。
抵当権とは、ローンを借りている人(債務者)が返済を滞らせた場合、お金を貸している金融機関(抵当権者)の申し立て強制的に売ってお金を回収できるという権利です。

マンションを売る場合は抵当権の抹消することが大前提となります。
抵当権を抹消するためにはローンの完済が条件となっています。

そのため、オーバーローンになってしまうと、足りていない分の現金を用意しなくてはいけません。

もし不足分の現金を用意できないようであれば、買換えローンを使わないと住み替えは不可能となります。
そして、この買換えローンはとてもハードルが高いローンであることが実態です。

3-2. 買い替えローンとは

買換えローンとは、マンションの売却金で返済しきれなかったローンを、新居のローンに組み込んで借りるローンのことを言います。

例えば、旧宅のマンションの残債が3000万円で、売却金が2500万円だったとします。
この時足りていない500万円を、新居のローンとあわせて借ります。
新居の購入価格が4000万円の場合は、4500万円を融資してもらうのです。

金融機関は4000万円の物件を担保に4500万円を融資する(=担保割れ)わけですから、当然ながら審査のハードルは高くなりますし、金利も高くなってしまいます。

また、買換えローンで購入した場合、いざまとまったお金が必要になった時に家を売却しても、借金しか残らないという状況になる可能性が高くなります。

そのため、いま住んでいるマンションがオーバーローンになってしまった場合は、住み替え自体を中止するという選択も必要となってきます。

3-3. オーバーローンかどうかの確認方法

住み替えを行う場合は、まずはマイホームがオーバーローンかどうかのチェックを最優先で行いましょう。

方法は簡単で、「住宅ローンの残債を確認する」ことと、「マンションの資産価値をチェックする」ことで確認できます。

3-3-1. 住宅ローンの残債を確認する

残債を確認する一番かんたんな方法は、金融機関から定期的に送られてくる「返済予定表」または「残高証明書」を見ることで確認可能です。

書類を紛失してしまっている場合は、ネットバンキングに対応している金融機関ならネットから、対応していない場合は電話窓口から確認できます。

3-3-2. マンションの資産価値をチェックする

マンションの資産価値をチェックする場合は、不動産業者から無料査定を受ける方法が最もかんたんで性格です

不動産鑑定士から鑑定を受けることもできますが、数十万円という費用が発生するのでおすすめはしません。

また、購入価格から自分で計算しようという初心者の方もいますが、市場価格は単純な計算だけで出てきません。
間違った価格で計算をしてしまえばトラブルの種です。

かならず、専門家である不動産業者から査定を受けるようにしましょう。

査定を受ける場合はどこの業者でもかまいませんが、必ず複数(最低5社)から査定を受けるようにしましょう。

複数から査定を受けることで最高査定額はもちろん、業者から見た平均価格や、業者の対応の良し悪しを比較することができます。

そこまで多くの不動産業者を知らないと言う場合は、とりあえず無料の不動産一括査定サービスを試してみてはいかがでしょうか。

4. 売却前に住みたい戸建てが先に見つかるケース

住み替えをする場合は売却を先行するべきですが、売却活動中に「どうしてもこの家に住みたい」「この土地に住みたい」という不動産が出てくるケースもあります。

そんな時、売却が決まるまで申し込みを見送り続けると、先に他の購入者が現れてしまう可能性があります。

誰かが購入してしまえば手に入れることはできませんし、同じ不動産が次に売りに出されるのは何年、何十年先になるかわかりません。
本当に惚れた物件を買い逃してしまえば、この先何十年にわたり後悔し続けるという可能性もあります。

そこで、利用を考えたいのは「つなぎ融資」というローンです。

4-1. つなぎ融資とは

本来、住宅ローンは一人1本しか組むことができません。
そのため、いま住んでいるマンションのローンを完済しない限りは、新居の住宅ローンが組めません。

そこでつなぎ融資という形で新居のお金を融資し、旧宅の売却前でも新居を購入できるようにするのです。

旧宅が売れたらそのお金で前の住宅ローンを完済し、新たに住宅ローンの融資をしてもらい、そのお金でつなぎ融資を一括返済します。

このようにつなぎ融資を利用することで、住みたい家を買い逃さずにスムーズに住み替えが進められるようになります。

ただし、以下のようなデメリットもあることを理解しておきましょう。

4-1-1. つなぎ融資の利用には手数料や手数料などの費用が発生する

利用時に手数料がかかりますし、比較的割高な金利が設定されているケースが多いです。

4-1-2. オーバーローンになると資金計画が狂ってしまう

売却金で完済できると思っていたら、オーバーローンになってしまったような場合、足りない分を用意しなくてはいけなくなります。

マンション以外の資産(株券や債権、貴金属、車など)を売却したり、親類に借りたり別途借金をしてお金を作る必要が出てくる可能性があります。

4-1-3. 期限以内に売れなければ遅延損害金が発生する

基本的につなぎ融資は近いうちに旧宅の売却をすることが前提となっています。

そのため、数カ月から1年以内に旧宅を売却することが条件となっていることが多く、期限を過ぎると遅延損害金と言って年利10%を超えるような損害金が発生します。

このように、つなぎ融資は住み替えをする人にとってとても使う価値のあるものですが、デメリットを理解せずに使うには少し危険があります。

いずれにせよ、住み替えを検討している場合は、まずはオーバーローンかどうかの確認を最優先で行いましょう。

5. まとめ

この記事をまとめます。

  • ローンが残っている場合は売り先行で進めたほうがいい
  • 先に買いたい物件が見つかった場合はつなぎ融資の利用を考える
  • 物件探しや業者探しよりも先にオーバーローンかどうかの確認が重要

初めての住み替えの場合だと、先に物件を探してしまったり、突然契約を結ぶ業者を見つけようとしてしまうものです。

しかし、まずはローンの残債とマイホームの価値を確かめましょう。

そのうえで資金計画をたててから不動産業者を探し始めることが、後悔しない住み替えの第一歩です。

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